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【インタビュー】サイズで世の中を便利に!実物大表示アプリ「scale post」を開発したヒナタデザインの挑戦

【インタビュー】サイズで世の中を便利に!実物大表示アプリ「scale post」を開発したヒナタデザインの挑戦

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日々、着用する洋服や装飾品。家具や家電。住宅やオフィス空間。私たちが生活する上で、サイズは重要なファクターだ。サイズのミスマッチは、企業にとっても消費者にとっても避けたいこと。しかし、ECサイトで正確なサイズ表示や着用感などの記載を工夫しても、結局は実物を当てはめてみなければ納まりは分からない。

ヒナタデザインは、そうしたサイズにまつわる課題を解決し、企業と消費者をスムーズに繋ぐサービス「scale post」を提供している。このビジネスモデルは大手企業から注目され、家電小売大手のビックカメラ、IT企業のJBグループ(JBCCホールディングス株式会社及び事業会社の総称)などとの協業が進んでいる。

ヒナタデザインの創業者である大谷氏に、「scale post」事業について、そしてサイズを軸とした未来の構想について、話を伺った。

▲株式会社ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏

立教大学卒業後、共産圏貿易を主体とした専門商社の管理部財務課に所属。財務、経理、外国為替の業務に携わる。その後、複数のITベンチャー企業で事業企画を担当し、創業から参加したソフトウェア開発ベンチャー企業では東証マザーズでの上場を経験。2009年に株式会社ヒナタデザインを設立。ウェブやアプリのデザイン制作、及びブランディング事業を行う。

建築家との会話から生まれた、実物大表示アプリ「scale post」

――大谷さんのプロフィールを拝見すると様々なご経験をされていますが、どのような経緯でヒナタデザインを立ち上げたのでしょうか。

ヒナタデザイン・大谷氏 : 以前、IT企業の営業として全国出張に行き、そこで地方には様々な強みがあることに気付きました。また、ニュージーランドやイギリスといった海外生活の経験からも、日本という国の良さも感じていました。そこで、日本の良い素材を、日本や世界のデザイナーをつないでリデザインしていきたい。そして、デザインの力を通じて、日本と世界、地域と地域を繋げていきたい。そんな想いでヒナタデザインを立ち上げました。

現在は主に、実物大表示アプリ「scale post」など、ユーザーと商品・サービスを繋ぐ事業を展開しています。

――「scale post」とは、どのようなサービスなのでしょうか?

ヒナタデザイン・大谷氏 : 実物大表示を含む、縮尺情報付き画像のプラットフォームです。「scale post viewer AR」は、ECサイトの商品画像をスマホで実物大で表示することができるアプリです。部屋に家具や家電を配置するシミュレーションをしたり、洋服や眼鏡、時計などを装着したりと、商品購入前に実際の大きさやデザインを確かめることが可能です。これにより、消費者は購入の失敗を、企業にとっては返品を減らすことが期待できます。

――「scale post」誕生の経緯を教えてください。

 ヒナタデザイン・大谷氏 : 友人を繋いで立ち上げたアーキノートという会社で、デジタル画像で縮尺を合わせられる建築設計のアプリを開発したことがきっかけです。そこで建築士を交えて打ち合わせをしている時に、「実物大で意匠が見られたら面白いね」という話になりました。インターネット上の画像に縮尺を当てて実物大表示ができたら、イメージもしやすくなります。ECサイトでよくある「商品写真と、実際に部屋に置いたイメージが違う」という理由での返品も防ぐことができるはず。調べてみると、実物大表示アプリは国内にも海外にもなかったため、特許出願をして開発を行いました。

大企業が注目する、ユニークなビジネスモデル

――既に、ビックカメラとの協業がスタートしていますね。

 ヒナタデザイン・大谷氏 : amadanaが監修したビックカメラのプライベートブランド『TAG label』の商品を、「scale post viewer AR」に対応させました。店舗で配布している商品カタログのQRコードから特集ページに飛び、そこからアプリを立ち上げます。カタログの背表紙を、商品を画面に映し出すための“マーカー”として使用。スマホ画面を通して実際のサイズで商品を確認できます。家電だけではなく、腕時計や眼鏡などを装着してみることも可能ですよ。

――すごい!!イメージしやすいですね!ビックカメラとの他にも、協業が決まっている企業はあるのでしょうか?

 ヒナタデザイン・大谷氏 : IT・システム事業を展開しているJBグループとは、中長期的な協業に向けたサービス開発を進めています。データベースやストレージなどバックエンドが得意なJBグループと、UIやアプリといったフロンドエンドが得意な我々は、非常に相性が良く、念願の組み合わせだと思っています。

――中長期的にというと、どんな構想を描いているのですか?

ヒナタデザイン・大谷氏 : サイズを軸としたデータの利活用をしていきたいと思っています。身体のサイズ、モノのサイズ、空間のサイズ――私たちの世界は、サイズに支配されているといってもいいでしょう。ヒナタデザインでは、地上のサイズデータをすべて収集・分析し、サイズを軸に消費者の好みや生活に合う商品・サービスをリコメンドするプラットフォーム『(仮)サイズコム』構想を描いています。

――「(仮)サイズコム」!具体的にはどのようなことができるのでしょうか。

ヒナタデザイン・大谷氏 : 都内のワンルームマンション13㎡(やや狭め)に住む、身長158cm(低め)、26歳の独身男性が属性情報を『(仮)サイズコム』に登録したとします。すると、第1リコメンドでは、サイズに合った洋服や家具など、その人の身長や生活環境にジャストフィットした商品を紹介します。そして第2リコメンドとしては、その人のサイズ情報から割り出される「とても必要な情報」をデータベースから検出して提供します。

――なるほど。

ヒナタデザイン・大谷氏 : この男性の場合は、身長が高く見えるコーディネート、身長を伸ばすエクササイズ、身長を気にしない女性を紹介するマッチングサービスなど、様々なサービスを提案することができます。サイズを軸とした属性データは重要なマーケティングデータであり、それを元に様々な商品・サービスの情報を提供することで、生活者を幸せにすることができるんです。これは日本だけではなく、世界で展開していきたいと考えています。

――サイズに絡めたリコメンドとは、初めて聞きました。新しいですね。

ヒナタデザイン・大谷氏 : 例えば電子レンジを新しく購入するとして、配置する棚のサイズを入力すれば、空間に納まる家電をリコメンドできるようになります。それだけではなく、デザインや色の好みでも検索し、ARで実際の空間に当てはめて確認できます。洋服も、パーソナルカラーに合った色や、天気予報に合わせたコーディネートの提案など、他のデータと合わせた様々なサービスが考えられます。

こうした中長期的なビジョンについて早い段階からすり合わせていくことが、オープンイノベーションを進める上でとても重要だと思います。

「地方創生」も、今後の大きなキーワード

――「scale post」「(仮)サイズコム」のほかに、取り組んでいくこととしては?

ヒナタデザイン・大谷氏 : 色々あります。大きなキーワードとしては「地方創生」ですね。ひとつは、3D-ARアプリ「城AR」。これはクリアファイルに松本城を印刷しているのですが、アプリを立ち上げて見ると、お城が3Dで見えます。このクリアファイルを販売することで地方自治体や地方企業が収益を得られるような仕組みを考案しています。これはお城だけではなく、他の建築物や図鑑、キャラクターなどにも展開できますね。

――たしかに!さまざまな展開が考えられそうです。

ヒナタデザイン・大谷氏 : また、大分大学と一緒に取り組んでいるのが、「岡城AR」。大分県竹田市に、岡城という「荒城の月」が生まれた名城があります。現在は石垣しか残っていないのですが、そこに当時のお城を実物大表示する観光アプリ、遺跡標を多言語表示する翻訳アプリを開発しています。

他にも、昔の街並みをVRで再現する「街並みアーカイブ」。飲食店のメニューを外国人観光客にも容易にイメージしてもらえるよう、メニューの多言語翻訳や料理か実物大表示をするアプリもあります。

――本当に色々ありますね!

ヒナタデザイン・大谷氏 : これらはすべて地方創生というキーワードで繋がっているんです。お城に行けば観光アプリで楽しむことができ、城下町では「街並みアーカイブ」で昔の姿を再現してタイムスリップした気分に。商店街では、飲食店のメニューが日本語単一表記であってもアプリで翻訳でき、実物表示もできる。クーポン/ポイント発行といった地域トークンは、急速に浸透するはずです。ヒナタデザインでは、サービスの絵を描いて、プラットフォームを作り、利活用できるコンテンツを提案していこうとしています。

――なるほど。多くのビジネスチャンスが眠っているということですね。

ヒナタデザイン・大谷氏 : そうですね。地方創生は、日本の大きな武器です。それに、日本の歴史は子供たちも知っておいた方がいいし、私も知りたい。それぞれの地域には、地元を盛り上げたいという情熱のある方々がいらっしゃいます。そんな方々をサポートしていくために、色んな人を繋いで、巻きこんでいきたいですね。

取材後記

デザインを通して日本と世界、地域と地域を「繋ぐ」ことを目指してスタートしたヒナタデザイン。大谷氏は当初、プロダクトデザインを手掛けたいと考えていたそうだが、様々なサービスを手掛ける中で、サイズを軸とした事業構想を描くようになる。それはまさしく、消費者と様々な商品・サービスをより良いカタチで「繋ぐ」ものだ。

さらに大谷氏は、地方創生という大きなテーマにおいても様々なものを繋ごうとしている。昔と今、地方と外国人観光客、地域振興に熱意を持つ人と人――サイズを軸に、地方創生をキーワードに、生まれた無数の繋がりにより、世界はどう変わっていくのだろうか。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)

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