【eiicon漫画劇場】オープンイノベーション街道~大企業がイノベーションを起こす道のり~ #4終わりなきリソースの整理
<前回までのあらすじ>
大企業に勤務する入社5年目の"えい君"。新規事業部署の立ち上げメンバーにアサインされ、上司から「オープンイノベーションに取り組んでほしい」と言われるものの右往左往…。えい君は「アクセラレータプログラム」というものを実施することになり、目的を定めた…。次なる壁は…?
えい君 - ……eiiconさん、ちょっとまた助けてください…!
今、弊社の提供リソース整理しているんですが、かなり多角的に事業をやっているのでどこを打ち出したらいいのかわからなくなってきてまして……。もちろん昔からの顧客の販路やグローバルの販路もありますし、工場も自前で持ってますし、医療・介護分野の研究もやってますし、ビックデータってやつもあります!!それに、コールセンターの子会社も持ってまして、HP制作の子会社もあります。いつの間にか把握していない子会社も増えていまして……。でも全部有効なリソースですよね!?
eiicon - ご相談ありがとうございます!今回のアクセラレータプログラムのテーマは決められたんですか?
えい君 - はい。ヘルスケア領域の新規事業文脈でオープンイノベーションを実施しようと決めました。今回は、うちでは思いつかない「ヘルスケア」の新事業をアイデア段階から公募したいなと考えているんです。
eiicon - なるほど。ではアクセラレータプログラムで企業を公募し、応募企業のアイデアと貴社のリソースと結び付けて新規事業を実践していくという理解でよいでしょうか?
えい君 - はい、その通りです!事業を一緒に作っていくイメージなので、使えるリソースはたくさんあったほうがいいと思うんですよね。だからなるべくたくさん、しっかり整理しようと思って。
eiicon - 確かに一定の整理は必要ですよね。自社の強みと弱みをオープンイノベーション担当者が把握していることも大切です。
えい君 - ですよね!?だからもうこの3週間くらいずっとエクセルと向き合ってて、いろんなIR資料引っ張ってきながらやってますよー。今回はどのリソースが引きありますかね?
やっぱり1万社のグローバルな法人顧客データベースとか、年間300種類5億個の販売数を誇る自動車部品・カー用品あたりはインパクト大きいんじゃないかなと思ってるんですが。
eiicon - そのあたりは今回の、「ヘルスケア領域の新規事業」のためのアクセラレータプログラムで実際に利用活用できそうなのでしょうか?
えい君 - いやいや、それこそまだ確認これからなんですよ~。自動車部品・カー用品あたりになると子会社や部門レベルまで合わせると100部門程度絡んでますので。
eiicon - 今回の、「ヘルスケア領域の新規事業」のためのアクセラレータプログラムをやろう、というお話になった背景は先ほどおっしゃっていた『医療分野の研究』のところからですか?
えい君 - あ。それはそうです。そこで今、自動車部品の技術を用いて、介護用のベッドを開発していたり、「見守り」のセンシング技術を開発しているんですが、どうも用途が思いつかない、というのがあって。医療・介護領域への進出は、社運をかけた新規事業領域でもあるので、もちろん社内発でも動いていくのですが、外からもっとtoCに近い部分の意見がほしいなぁというのがあって……。うち今までずっとtoBだったので。
eiicon - ということは、ヘルスケア、の中でも「介護」の領域ということですね?
えい君 - そうです!介護領域の新規事業のアイデア募集です!
eiicon - リソースの考え方としては、その「介護の新規事業を広げる上での鍵となるようなリソースか」で考えるといいですよ。
えい君 - 介護の新規事業を広げる上でのキー……?
eiicon - はい。「介護事業において利用できると魅力的なリソースは何か」が今回の肝です。
えい君 - その視点……すっかりなくなってました。。初めて外に打ち出すので、「うちの魅力とは、うちの強みとは」で考えていて。インパクトがあるので商品ラインナップは随一の弊社の強みだと思っていて……。
でも確かにこの事業部の役員とこの前ちらっと話した時、アクセラレータの取り組みに乗り気ではなかったんですよね……。
eiicon - 「貴社」という枠組みで見たときに多様な商品をお持ちで様々な課題に対応できるカー用品というのは強みなのだと思います。ただ、提供リソースは実際に提供ができないと意味がありません。
そのため、その乗り気ではなかった、というのも気になりますね。あくまでオープンイノベーションは「共創」です。現場のコミットが絶対に必要となります。
えい君 - そうか……。実際に提供できるかどうか、言われてみるとあたりまえなんですけど…どうしてかその視点が…。
ありがとうございます!商品は、ぶっちゃけ活用できなさそうなので提供リソースとして出すのは難しいかもしれません。介護の新規事業にカー用品が魅力的なのかも結びつかないし……。
うーん。そうすると提供リソースが……あ!そうそう!
顧客データベースはぜひ入れた方が引きになると思うんですよ!グローバルなビックデータだし……。
eiicon - 確かに実際に活用できれば魅力的かもしれません。
えい君 - そうですよね、実際に活用できるかどうか。大切ですよね、確認します!
eiicon - あとは、今回の背景になった「介護用のベッド」や、「見守り」のセンシング技術はリソースとして活用できないんでしょうか?もしくはその開発施設などは?
えい君 - それはもちろんできますよ!その部署はとても乗り気で、既に実証実験で提携している病院さんも、今回のアクセラレータで選出された企業さんには一緒に実証実験の場として使ってほしいって言ってくれていて。。
eiicon - それであればその「病院での実証実験」、それから、「研究開発施設機材の活用」、また「研究データの活用」、などはとても有効だと思いますよ。
えい君 - いやいやいや!!だってうち、まだ医療・介護領域では無名ですよ!まだ製品だってリリースできていなくて。そんな不確かなものあまり魅力的ではないんじゃないかと……。
eiicon - はい。確かに貴社の既存製品と比較すると心もとなくなるのは分かります。
ただ、それを基盤を持たないベンチャー企業が個社で持てるリソースか、というとそうではない規模ではないですか?大切なことは、今回のテーマで集まってほしい企業さんにとって魅力的かどうかであり、本当に使えるかどうかです。
個人の感覚に落とすとわかりやすいのですが、たとえば、家族がいて家族のために生命保険に入りたい人に、損害保険の実績や商品ラインナップをいくら言っても響きませんよね?
えい君 - なるほど。。。少しわかってきました。。「提供できるリソース」が、対象企業にとって魅力的であること、かつ本当に活用できること、そこですね!
<#5に続く>
●eiiconは、2017年10月12日に”オープンイノベーションの手引き”というコンテンツを公開しました。経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)」を元に、事業提携を成功させるための各種ノウハウをわかりやすくWEBコンテンツ化したものです。自身の課題感や、状態に合わせて検索、読み進めることが可能となっています。こちらもぜひご確認ください。
●"オープンイノベーションの手引き"をeiicon founder中村が解説しているガイドのシリーズもお勧めです。