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BIPROGYによる事業共創プロジェクト『DiCE』――1年を通して生まれた5つの新規事業案とは?成果報告会を徹底レポート!

BIPROGYによる事業共創プロジェクト『DiCE』――1年を通して生まれた5つの新規事業案とは?成果報告会を徹底レポート!

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企業間のデータ連携・流通による、新たな事業創出を目指すプロジェクト『DiCE(ダイス:Digital Chain Ecosystem)』。これは2022年9月、国内有数のSIerであるBIPROGY株式会社(旧・日本ユニシス株式会社)が立ち上げたコンソーシアム型のプロジェクトだ。

本プロジェクトの一環で、昨年よりアクセラレータプログラム『DiCE Consortium accelerator program』が開催されている。『DiCE』の中核企業3社(あいおいニッセイ同和損害保険/朝日生命保険/日本航空)が共創テーマを公開し、コンソーシアム参画企業とともに、事業創出を目指すものだ。

去る9月15日、東京・銀座でプログラムの成果を発表する最終成果報告会が開催された。この場では、合計6つのチームがプログラムの成果を発表。「移動」、「事故防止」、「メンタルケア」、「ヘルスケア」など、多様なテーマでの新規事業案が披露された。――本記事では、最終成果報告会で発表されたピッチの中身をお届けする。

【オープニング】 「とりあえずやってみること」が重要、そのきっかけとなる場に

まず、本プログラムの主催者であるBIPROGY株式会社より、向井 剛志 氏が登壇。向井氏は冒頭の挨拶のなかで、実際に行動しながら具体的な解決策を見つけていくことの重要性に触れ、「我々は皆さんと『とりあえずやってみたい』という気持ちを強く持っている」とし、「『まず何かやってみよう』という形で、この場を終えられるといい」と期待を込めた。

▲BIPROGY株式会社 戦略事業推進第二本部 事業推進二部 部長 向井 剛志 氏

ピッチの紹介へと入る前に、『DiCE』について簡単に触れておきたい。『DiCE』は、各企業が保有するアセット(データ、顧客接点、既存サービスなど)を企業間で連携することで、顧客に新たな価値を提供する「共創社会」の実現と、事業化を目指したプロジェクトだ。2022年9月に正式に立ちあがり、コンソーシアム型で運営されている。

『DiCE』が目指す世界観は、生活者と生活者を取り巻くステークホルダー(各種サービスの提供者)がより多面的に接点を持つような社会である。生活者とサービス提供者が双方向の関係性を築き、それらをデジタルチェーンでつなぎあわせて、人々の生活に則した形で新たな価値創出を行っていく構想だ。データを触媒に、お金の流れや人の流れを生み出し、社会的価値と経済的価値の創造を目指すという。

▲2022年11月に開催された『DiCE Consortium accelerator program』の説明会動画より抜粋。

この世界観を実現するために、個別連携型(1対1)ではなくオープンイノベーション型(n対n)で取り組む共創型スキームを構築したいという。BIPROGYではすでに、この構想の実現に向けて『Dot to Dot』という企業間パーソナルデータ流通プラットフォームや『Resonatex®』というオープンAPI公開基盤も準備している。

――こうした思想のもとでスタートした『DiCE』では、実際にどのようなビジネスアイデアが検討されているのか。ここからは、最終成果報告会で披露された6つの事業案の中身を紹介する。

【最終成果報告会】移動、メンタルケア、事故防止など、5チームが成果を発表

①NearMe × BIPROGY 「タクシーの稼働率を高め、地域移動のキャパシティを増やす」

移動課題にテクノロジーで挑む NearMe(ニアミー)とBIPROGYの共創チームが登壇。南紀白浜空港周辺(和歌山県)を舞台とした、移動課題の解決策を提示した。

NearMeはすでに日本航空(JAL)および南紀白浜エアポートと協業し、南紀白浜空港周辺で空港送迎サービスを提供している。当地域における主要な移動課題は、空港から目的地までの移動手段(二次交通)にあるという。ドライバー不足によりタクシーの台数が限られていることに加え、バスは定時運行であることから柔軟性に欠ける。こうした移動課題の対応策を練るにあたり、和歌山県庁の交通政策課に出向きヒアリングを実施。県庁においても、相乗りやオンデマンド型などを含めた対応策を検討していることがわかった。

この状況を踏まえて、本共創チームは3つの解決策を提示する。まず、タクシーのシェア(相乗り)だ。1組で1台を使用するのではなく複数組で1台を使用し、車両キャパに対する稼働量を最大化する。これは、NearMeの提供するアプリを使えば容易に実現できるものだ。また、様々なチャネルの依頼を1台に集約することも検討する。さらに、タクシー会社に受け入れる余裕がなければ、地域に眠っている不稼働車両を自家用有償という形で活用することも視野に入れているという。

一方でBIPROGYは、移動と地域のなかにある他サービス(滞在宿泊など)のデータ連携を進めていきたいと話す。ユーザーが移動先で使いたいサービスを連携させることで、移動先でシームレスに使いたいものを選べるような仕組みづくりに挑戦していきたいと語った。

②日本航空 × BIPROGY 「JALMaaS 新たな価値創造の検討~広域移動起点×地域住民起点のクロスオーバー領域の検討~」

次に登壇したのは、日本航空(JAL)とBIPROGYの共創チーム。同チームは「JALMaaS 新たな価値創造」と題した取り組みを発表した。

JALMaaSとは、空港を中心としたその前後の移動の検索や、地上交通の予約・手配をワンストップで提供するサービスである。

航空領域にとどまらず出発地から目的地までをつなぐサービスへと発展させる過程にあり、それに向けての注力領域は、(1)シームレスな移動・サービス(お客さまへの価値創造)、(2)海外含む地域の交通課題の解決と活性化(地域への価値創造)、(3)交通・旅行関連サービスの拡充(新たな価値創造)の3つだという。

今回、BIPROGYとの共創では(3)に取り組みたいと話す。

(3)に該当する活動としてすでに、CBcloudとともに、空港からホテルまでの手荷物配送サービスを開始しており、月間数千個もの利用数にまで伸びているという。

こうした共創事例を今後、BIPROGYとともに生み出していきたいという。

これを受けてBIPROGYは、「地域住民」を起点としたMaaSの構築実績があることに触れながら、両者のクロスオーバーする領域で事業開発に取り組みたいと意気込む。たとえば、出張中の疲れたビジネスパーソンの課題を事前に察知し、必要なサービスを届けられるような仕組みの検討を進めたいとした。

③あいおいニッセイ同和損保 × Olive 「健康経営・働き方改革時代に向けた新たな保険サービスへの取組」

続いて、損害保険大手のあいおいニッセイ同和損保と、感情の可視化に強みを持つOliveの共創チームが発表。『察する職場の構築』× 新たな保険サービスというコンセプトで進めている共創プロジェクトの中身を紹介した。

本チームが着目した課題は、従業員のメンタル不調による能力発揮低下や退職だ。メンタル不調は発症した「後」になって問題に気づくことが多く、企業としても有効な対策を打てずにいるのが現状だ。この現状を打開するため、不調発症「前」に異変を察知できるソリューションを開発したいと話す。

そのために活用するのが、 Oliveの持つ生体データから感情を推定する技術である。同社の技術を使えば、たとえば従業員の使用するパソコンのカメラから生体データを取得し、感情を含めた状態の可視化が可能なのだという。

あいおいニッセイ同和損保はすでに、大企業の人事部向けにGLTD(団体長期障害所得補償保険)を販売しており、保険付帯サービスのなかに感情分析を盛り込むことで、本サービスの展開を図る。

企業の人事部が導入するメリットとしては、メンタル不調者や復職者の感情を「見える化」することによる記録業務からの解放や、メンタル不調者の早期復職、不調の再発防止などを想定。将来的には、企業の健康経営や働き方改革にも貢献していきたいと展望を述べた。

④あいおいニッセイ同和損保 × ドリームエリア 「ゼロアクシデンツサービス~児童の交通事故をゼロに~」

あいおいニッセイ同和損保は、学校向け業務支援システム『マチコミ』などを開発・提供するドリームエリアとも共創プロジェクトに取り組む。同チームは、”魔の7歳”問題に着目し、デジタル技術を用いて解決を図るアイデアを披露した。

”魔の7歳”とは、小学1年生と2年生が突出して交通事故の被害数が多いことを表現する言葉だ。歩行中の死傷者数は7歳が最多で、事故形態別では「飛び出し」が約4割を占める。本プロジェクトは、このような事故をゼロにしたいとの想いからスタートした。解決策として、交通事故が多発する危険エリアに児童と車が進入すると、双方にアラートが鳴るというサービスを構想。実際に具体化し、三重県鈴鹿市で2023年3月1日から約5カ月間にわたり、実証実験も行った。

具体的には、鈴鹿市の小学校に通う児童180名、および市内を走る車両保有者(100台)にGPS搭載のデバイスを配布。現地調査のもと、交通事故リスクの高い危険エリア30箇所を洗い出し、危険エリアに双方が入るとアラートで注意喚起を行った。同時に、アラートが鳴った際のドライバー運転スコアもテレマティクスサービスを使って取得した。

実証実験の結果だが、アラートが鳴った際にドライバーの運転スコア向上が確認できた。また、継続利用希望者がドライバー側で約8割、児童側で約9割を占める結果となった。今後の展開方法として、ドライバー側をあいおいニッセイ同和損保で開拓、児童側をドリームエリアで開拓し、本サービスを普及させていく考えだという。

⑤朝日生命保険 × CogSmart × FOVE 「お客様の“生きる”を支え続ける~人生100年時代、認知症との共存~」

最後に、朝日生命保険、CogSmart、FOVEの3社からなる共創チームが登壇。「誰もがなる可能性を持つ認知症の対策」をテーマに発表を行った。「認知症」にフォーカスした理由は、朝日生命保険が介護保険分野に注力しており、介護と認知症は切っても切り離せない関係性にあるからだという。

早期発見や早期治療が重要と言われている認知症を早い段階で見つけることができれば、本人はもちろん家族の負担も軽減できると話す。そこで今回、本プログラムを通じて出会った2社とともに、早期発見・早期治療に導くサービスを考案した。

パートナーの1社であるFOVEは、認知機能の状態をVRゴーグルと視線追跡技術を用いて簡単にチェックできるサービスを保有している。従来のような口頭や筆記テストは行わないため、利用者の負担を軽減できる点が特長だ。一方 CogSmartは、頭部MRI画像より海馬の状態を分析する技術を持つ企業だ。分析結果をもとに、アプリやウェアラブルデバイスなどを使いながら生活習慣の変更を促し、脳の改善につなげるプログラムを開発中だという。

今後の展開としては、9月末にFOVEのVRゴーグルを用いた認知機能のセルフチェック体験会を実施する。10月以降、CogSmartとの実証実験も進めていく予定だ。将来的には、認知症の予兆検知から予防、治療、介護支援までトータルでサポートができる認知症に特化したビジネスエコシステムを構築したいと語った。

【クロージング】 パーソナルデータを基軸に、事業をさらに前進させたい

すべてのピッチ終了後、3名のコメンテーターが総評を行った。Spiral Innovation Partners ・岡氏は、こうしたビジネスコラボレーションの素晴らしさを再確認できたと話す一方、『DiCE』のプログラムの特徴を活かし、更なるデータ活用に向けて進めて欲しいと伝えた。

▲岡 洋 氏(Spiral Innovation Partners 代表パートナー)

BIPROGY・松岡氏は、パーソナルデータに注目をして事業開発を進める『DiCE』のもと、様々な事業開発のアイデアを出してもらえたことに感謝したうえで、今後も各プロジェクトが前進するよう同社も引き続き努力していくと語った。

▲松岡 亮介 氏(BIPROGY株式会社 グループマーケティング部 オープンイノベーション推進室 室長/キャナルベンチャーズ株式会社 取締役)

eiicon・中村氏は、外部と意図的に手を携えて事業を創出するオープンイノベーションが、インパクトの大きな事業を効率的に生み出せる手法だという点に触れながら、「世の中に必要なサービスを、コラボレーションを通じて素早く生み出していただければと思う」と話し、総評を終えた。

▲中村 亜由子 氏(株式会社eiicon 代表取締役社長/Founder)

成果報告会終了後は、本プログラム参加者同士が交流する時間も設けられた。会場には食べ物やドリンクも用意され、参加者らが談笑するなど和やかな雰囲気で場が締めくくられた。

取材後記

多企業間データ連携を促進し、生活者の利便性や豊かさの向上につなげようとする本取り組み。今後、どのように各企業の保有するパーソナルデータがつながり、生活者にとっての価値として還元されていくのか。これからの展開が非常に楽しみなプロジェクトだと感じた。『DiCE』の掲げる思想に少しでも興味があれば、コンソーシアムに参加してみることをお勧めする。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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  • 前川 誠次

    前川 誠次

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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