【イベントレポート】「食のバリアフリー」を目指すスタートアップ・フレンバシーがカンファレンスを開催!
「食のバリアフリー」を実現するプラットフォームを運営するスタートアップ、フレンバシー。1月15日(月)、同社が 「食のバリアフリーカンファレンス〜食品メーカーが取り組むべき植物性商品とグルテンフリー商品〜」と題したイベントを、0→1Boosterの会場で開催した。
消費者の需要は高まり、注目を浴びる『植物性食品とグルテンフリー食品』。海外では市場も急成長している一方で、日本の市場はまだまだ黎明期だ。本イベントでは、そういった日本での市場を切り開くきっかけとなればと、先駆者として業界をリードする食品メーカーが登壇し、今後のマーケットの可能性や取り組み事例が語られた。
この主旨に賛同した、大手食品メーカーや外食業界で新たなイノベーションを起こそうとする方々、約60名が集まり、会場は満席。まずは、イベントを主催するフレンバシー代表・播太樹氏のからの挨拶からスタート。「同分野で成功している企業の実例を知ってもらうことで、日本の企業が踏み込んでいくきっかけを創っていきたい」とイベント開催に込めた想いを熱く語った。
以下で、今回のプレゼンテーションの内容を紹介する。
キリン食生活文化研究所『食卓調査』から見た生活者の食トレンド
登壇者/キリン株式会社 ブランド戦略部 キリン食生活文化研究所 シニア・フェロー 太田恵理子氏
太田氏は生活者と社会の変化に関する研究を行っており、食のトレンドのプレゼンテーションを行った。日本で消費が飽和・成熟化していく中で、食と健康において多様化する価値観を「食ライフスタイル」と題し、10個にカテゴライズ。
同社がリサーチした結果によると、ライフスタイルにより食への関心度も異なることが分かった。『糖質制限』においては、ダイエット意識が高く年配の男性に多い「健康第一主義」や、若い男女が中心の「シンプル食」で、昨年対比で関心度があがった。『グルテンフリー』に関心が高まったのは、昔ながらの食生活など調理リテラシーの高い「伝統良識派」。また2つともに関心が高いのは、新しい食の動き・地球環境への意識も高いイノベーター層の「食セレブ」であった。
また今後の食のトレンドについては、「いいものを安く提供するのではなく、より多様化する生活シーンに寄り添うことが必要となってくる」と分析。加えて、「ICTの発展により、メーカー側からの一方的な情報提供ではなく、生活者側からの情報発信ができる時代になってきた。そのため、メーカー側が全てを作り、提供するのではなく、生活者側が参加する余地・関与する余地を残すことが必要となるのではないか」と解説した。そして太田氏は、「メーカー側と生活者側が『共創』をしていくことが、より重要になる」と熱く語った。
Plant Based Food(植物性食品)が拓く未来~人と地球を健康に~
登壇者/不二製油グループ本社株式会社 海外事業開発担当部長 稲塚洋一朗氏
続いて、油脂・大豆を原料とする食品素材の製造などを手掛ける不二製油グループで、海外事業開発を担当する稲塚氏が登壇。「人口増加に伴う食糧危機や、加速する地球温暖化、生活習慣病などの社会課題を受け、持続可能な食システムのためにも、既存の肉食中心の食生活からの植物性食品への転換が必要とされている時代に突入している」と、現状を分析。
さらに、「植物性食品が進んでいる北米では、タンパク質市場の35%を占めており、市場の売り上げとしては31億ドル。ミレニアル世代が中心となり、菜食主義であるが肉も食べるフレキシタリアンが30~40%もいる」と語った。また海外では大手食品メーカーによる市場参入が加速化しており、米国のスタートアップにも日本企業が投資し始めている状況という。
このように注目されている植物性食品である「大豆」は植物の中でもタンパク質が豊富であり、アミノ酸コレステロール・中性脂肪などの低減効果も証明されている。同社では、大豆を「低脂肪豆乳」と「豆乳クリーム」に分画する世界初のUSS製法を開発。その技術を用いた製品を国内および海外で100以上も展開をしている。また米国では乳製品市場(特にチーズ)が参入市場として魅力的であり、低脂肪豆乳を発酵させたチーズなどを展開しているとのことだ。
大豆の研究において50年以上の歴史がある同社は、「食品メーカーと共に製品開発を行うことで、更なる市場を拡大していきたい」と稲塚氏は強くアピールした。
米粉の魅力~グルテンフリーで拡がる将来性~
登壇者/株式会社波里 営業本部 営業推進担当部長 岡田正剛氏
和菓子の原材料である「上新粉」「もち粉」「胡麻」「きな粉」などを製造販売する波里の岡田氏が登壇し、米粉の魅力についてプレゼンテーションを行った。米の年間消費量はピーク時である昭和37年の118kgと、平成27年度には半分の55kgにまで減少。また今後も、人口減少・高齢化により更なる減少が予測される。
そのような中で、米生産者の市場の変化に合わせた主体的な経営判断が期待されており、実際に、水田における土地利用の割合は主食用米用が減少し、新規用途開発の割合が増加している。そこで昨今、米粉の様々な用途における研究開発が行われているという。
また岡田氏は、「テニス世界ランキング1位のジョコビッチの食生活が『グルテンフリー』であるように、2020年の東京オリンピックには、世界から『グルテンフリー』を取り入れているアスリート等が集まる。そこで、米粉は更なる注目を集めるであろう」と語った。実際に世界の市場としても、2017年から4年間で年平均成長率は11.62%となると予測されている。
さらに米粉は、吸油率も低いため、小麦粉の代わりに代用することで揚げ物のカロリーも抑制できる。一方、小麦・ライ麦等に含まれているグルテンによる不耐症患者は今後増加すると予想されており、米粉の更なる活用が求められている。
最後に岡田氏は「米粉の浸透・製品を多様化し、より消費者のテーブルに近づけ、世界市場へより参入していきたい。そのために食品メーカーと一緒に製品開発を行いたい」と強く訴えた。
メディアの視点からみる健康志向 Vegewelで見えてきた市場性
登壇者/株式会社フレンバシー 代表取締役 播太樹
同社は「食のバリアフリー」を実現するプラットフォームで、ベジタリアン・オーガニックなど「食の制限」に特化したレストラン検索サイト『Vegewel』と、ヘルシーなライフスタイルを発信するWebメディア『VegewelStyle』を持つ。「ベジタリアン」「グルテンフリー」等の主要キーワードでは、Google検索1位を獲得するメディアへと成長している。
同社の調査によると、日本では自分もしくは家族に食の制限があると答えた人が27%。アメリカでは60%だという。「日本ではまだまだ食の制限に関する理解が遅れているため、食のバリアフリーを実現したい」と播氏は語った。
また、食制限の理由として1位となったのは、アレルギー・環境等ではなく「健康のため」という理由。健康志向が増える中、食制限もより増えていくのはないかと考えられる。それを表すものとして、肉や魚を定期的に避ける「ゆるベジ」と呼ばれる人たちが近年増加している。
「消費者のニーズがここまで顕在化しており、海外では市場が拡大する中で、日本が世界の開発競争から遅れてしまっているのではないか。取り組む企業もまだまだ少数であり、消費者に商品が十分に供給されていない。彼らが生活を送る上での十分な選択肢をとることができるよう、踏み込んでいきたい」と、主催者である播氏は締めくくった。
プレゼンテーションの後は、ネットワーキングの時間が設けられており、各社が開発された大豆で作られたチーズや、グルテンフリーのクッキーなどが用意されていた。同分野において新たなイノベーションを起こそうとする参加者の方々が、試食をしながら意見交換をするという最後まで賑わったイベントとなった。
取材後記
各社のプレゼンテーションで伝えられたように、『植物性商品とグルテンフリー商品』は世界での市場が拡大することが、明瞭である。変化する消費者のニーズに対して日本の企業が応えられるように、新たな取り組みが活性化されることは必須である。そのような中、今回は原料メーカー・食品メーカー・プラットフォーマーが1つとなって、新たなマーケットを共に作り上げていく姿が想像されるイベントであった。
なお、イベントの第2弾となる「食のバリアフリーカンファレンスVol.2~食品メーカーが取り組むべきハラールとベジタリアン~」の開催が決定。3月6日19時より外苑前にて実施予定とのことで、同業界でイノベーションを起こそうとされる方々は、是非ご参加いただきたい。
(構成:眞田幸剛/取材・文:松尾真由子)