【記者発表会レポート】日本郵便×サムライインキュベート〜スタートアップとの協業で郵便物流の革命を狙う〜
日本郵便株式会社と株式会社サムライインキュベートは9月4日、オープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」(日本郵便主催、サムライインキュベート共催、パーソルキャリア株式会社「eiicon」協力)を開始すると発表した。日本郵便にとってオープンイノベーションプログラムは初となる。
▲会見に出席した日本郵便 福田聖輝 代表取締役副社長(写真左)、サムライインキュベート 榊原健太郎 代表取締役(写真右)
同プログラムは、外部のテクノロジーや発想力を取り入れることを目的に実施され、郵便事業をはじめ、関連する事業に革新がもたらされることに期待が寄せられている。同日からスタートアップを募集するWebサイトが公開された(http://event.samurai-incubate.asia/jp-logitech/)。募集の概要は以下の通り。
【募集テーマ】
●テクノロジーを活かした新しい郵便・物流の仕組みを実現
●テクノロジーを活用した郵便・物流の管理、配送業務効率化の実現
●郵便・物流リソースを活用した既存分野に留まらない新しいサービスなど
【応募資格】
●既に法人登記されていること。ステージは不問。
●チームに1名以上の技術者がいることが望ましい。
【応募条件】
●プロダクト、サービスが完成しているか完成の目処が立っており、日本郵便とのシナジーが見込めること。
●1社で応募できるのは1プラン。
●期間中の全日程に参加可能であること。
●プレゼンテーションや資料は日本語を使用すること。
●プラン内容または事業内容が控除良俗に反していないこと。
【スケジュール】
9月20日(水)28日(木)/応募説明会
10月4日(水)/応募締め切り
10月下旬/採択企業決定
11月上旬/キックオフ、メンタリング開始
2018年1月下旬(予定)/Demo Day
郵便物流のアセットを積極的に開示し、スタートアップと共同活用を。
会見では、日本郵便の福田聖輝代表取締役副社長が、郵便事業140年の歴史に触れながら、郵便番号の導入など、これまで革新的な取り組みを導入してきたことを紹介した。その上で、「近年、郵便物流を取り巻く環境が大きく変化しているとともに、革新的で先進的な技術がスタートアップから多く出されている」と語り、「これからの時代に応じた郵便物流サービスを提供し社会をより豊かにするためには、当社の経営資源とスタートアップの革新的で先進的な技術とアイデアを組み合わせ、新たな価値を作ることが不可欠」と強調した。
福田副社長は郵便物流のアセットを積極的に開示し、スタートアップと共同活用すると明言。合わせて、PoC(概念実証)を実施する場として、郵便局やドローン実証実験地を提供すると話した。また、シナジーが見込める場合は、出資やテストマーケティング費用の負担を検討するとした。「スタートアップとの共創を、全社を挙げて行い、次の140年の歴史を切り拓いていきたい」と締めくくった。
▲日本郵便が使用するドローンの機体はもちろん、操縦者や管理者、そしてドローン実証実験地といったリソースも提供予定だ
世界に誇るロジスティクスイノベーションを起こす。
サムライインキュベートはシード期のスタートアップに対して出資・インキュベーションを行うとともに、オープンイノベーションを推進する事業を手がけている。同社の榊原健太郎代表取締役は、「郵便は地域に密着している事業であり、データを送るのとは異なり、簡単ではない部分がある。だからこそ、最新テクノロジーのAIやロボティクスを活用して、物流オペレーションの効率化や新しい配達方法を確立したい。また、可能であると考えている」とし、「世界に誇るロジスティクスイノベーションを起こしたい」と意気込みを見せた。
今回の募集について、採択企業は10月下旬に決定され、11月上旬にキックオフ、メンタリングが開始される。その後、3カ月にわたり事業化や実証実験に向けた検討が共に進められると説明された。来年1月下旬にはデモデイを行う予定となっている。プログラムには日本郵便の役員や各業界のスペシャリストがメンターとして参画するほか、日本郵便とシナジーが大きいスタートアップにはサムライインキュベートが450万円の出資を検討することなども紹介された。
榊原代表は「近年、オープンイノベーションの注目度は高まっているが、郵便という日本に根付き、かつ規模感のあるリソースを活用できることはめったにない。ぜひこの機会を活かしてほしい」とスタートアップに呼びかけた。
取材後記
POST LOGITECH INNOVATION PROGRAMに対し、日本郵便 福田副社長は全社で取り組むと意気込みを表した。実際、メンター陣には同社の社長をはじめ、役員・部長クラスが名を連ねており、高い本気度がうかがえる。現在、オープンイノベーションの注目度は日に日に高まっているが、サムライインキュベートの榊原代表が言うように、これほどのリソースを活用できる機会はめったにないはずだ。日本の生活や世界への与えるインパクトも決して小さくはないだろう。榊原代表はスタートアップに自分の事業に自信を持ってほしいとも呼び掛けている。ぜひこの機会を積極的に活用し、大きなイノベーションを起こしてほしい。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)