【インタビュー】受け継がれる「挑戦するDNA」。東急不動産が手がけるオープンイノベーションとは。
総合不動産グループの東急不動産ホールディングスグループが、外部機関との協業に向けて積極的に動き始めた。その舵を取るのが株式会社東急不動産R&Dセンターだ。なぜ、今オープンイノベーションを求めているのか。変えていくことと、決して変えないこととは。同社研究員の高橋孝太朗氏に話を聞いた。
▲株式会社東急不動産R&Dセンター 研究員 高橋 孝太朗 Kotaro Takahashi
1989年生まれ。法政大学法学部政治学科卒。2013年に東急不動産株式会社入社。シニア住宅やコワーキングスペースの運営を担当した後、2017年より同社へ出向。グループ会社のオープンイノベーションを促進するため、外部リソースの発掘等に従事
社会課題の解決に挑み続け、受け継がれる「挑戦するDNA」
――株式会社東急不動産R&Dセンターは、東急不動産ホールディングスグループにおいてどのような役割を担うのでしょうか。
約60社で構成される東急不動産ホールディングスグループの横断的な研究開発機能を担っています。ホールディングスの3年後、5年後、その先を見据えて長期的な戦略を立て、新しいソリューション案をつくっていく。そのための技術導入に向けた研究をしています。急激に少子高齢化が進み、社会構造が変わるなかで、「新しい価値」を生み出していかなければなりませんが、自社のリソースだけでできることは限られています。今後その動きを加速するために、積極的に他社のアイデアや技術を導入していきたいと考えています。
もともと当社グループには、いいアイデアをどんどん取り入れて形にしていく土壌があります。当社の始まりは1918年に渋沢栄一によって設立された田園都市株式会社で、今でいうベンチャー企業。何もないところから宅地をつくって、新たな街を作り上げるなど、ゼロからイチを生み出すことを90年以上前から行ってきました。東急不動産株式会社となってからも他社に先駆けて仲介業を始めたり、都市型駅前施設を建設したり、最近ではシニア事業やコワーキングスペース事業を立ち上げるなど、新しいことに「挑戦するDNA」が受け継がれています。
——御社グループ企業と他社との協業事例についてご紹介ください。
東急不動産ホールディングス株式会社は、今夏から本田技研工業株式会社と共に、高齢化社会対応型スマートコミュニティの実現を目指す実証実験を始めました。20年前に東急不動産株式会社が手掛けた郊外型住宅団地があるのですが、ここで暮らす住民の方々を対象に、まずはHondaの次世代電動パーソナルモビリティーを走らせたり、カーシェアリングを検討したりして、移動支援に取り組んでいます。さらに大学、研究機関、企業、自治体など地域社会と連携しながら、オープンイノベーションによる研究や実証実験を進めていきます。
総合不動産管理会社の株式会社東急コミュニティーは、テラドローン株式会社と提携し、スタジアムの管理業務に自動航行ドローンを活用した空撮システムを導入しました。これまでスタジアムの屋根の点検目視業務は専門の作業員が長時間かけて点検していたのですが、カメラを搭載したドローンを用いて点検できるようにしています。
丁寧な接客を大切にし、バックオフィスの省人化を目指す
――御社グループが目指すものと、その実現のために求めるパートナー企業のイメージを教えてください。
ドローンの活用事例のように、まずは「お客様と接しない業務」の省人化・効率化を目指しています。大前提として、当社グループは運営・販売業において接客を非常に重視しています。味気ない接客では他社には勝てませんので、スタッフの人間味やサービスで差別化を図っていく。人と人とのコミュニケーションを大切にしており、ここは今後も変えていく予定はありません。
例えば小売業での棚卸、品出し、検品、在庫チェックなどバックオフィスの省人化、施設管理業ではスタジアムやオフィスの清掃を、ロボティックス等を用いて省人化するなどを検討しています。これまで維持管理に人件費を割いていたところを省人化しながら、新しい事業に人材を転換していきたい。
その上で賃貸や分譲マンション、ホテルを始めとする各種サービスの付加価値づけになるような提案を求めています。例えばシニア住宅事業においては、高齢者の方々にとっての新しいソリューションを模索しています。実は高齢者の約6割が施設よりも自分の家で最期を迎えたいと考えており、住み慣れたところで最期を迎えられるような仕組みづくりや、独居高齢者がどう幸せな晩年を迎えるかも課題の一つとして、他社と協業しながら解決していきたいです。
当社グループは業務範囲が広く、人の生活に関わるものすべてを提供しています。ベンチャー企業の皆さんにとって幅広い挑戦、さまざまな展開ができます。また採用が決まればグループ内の企業にも波及する可能性もあります。省人化のアイデアや技術、固定概念にとらわれないような新しいサービスをお持ちの方は、ぜひお気軽にご連絡ください。