山口県、島津製作所、花王、協同乳業ほか|高齢者の健康づくりで共同研究を開始
協同乳業株式会社、株式会社島津製作所、花王株式会社、山口県、山口市、国立大学法人山口大学の6者は、共同で高齢者の健康づくりなどをテーマとした地域コホート連携に関する共同研究を開始すると発表した。
共同研究の内容と背景
2019年10月時点の山口県の高齢化率(総人口に占める65歳以上の比率)は34.3%であり、全国平均の28.4%を上回っている(全国第3位)。この課題に対応するため、山口県、山口市、山口大学と島津製作所の4者は、2018年12月に健康づくり等をテーマとした技術連携に関する基本合意書を締結し、協議を進めてきた。今回これに、協同乳業と花王が加わることで、取り組みを強化する。
本連携において、山口大学、協同乳業、花王、島津製作所は、高齢者の介護予防、加齢に伴う認知機能・移動機能・口腔機能などの低下を予防するため、生活習慣や腸内フローラの関係性についての検証などをテーマにした地域コホート研究を、山口県内で実施する。
コホート研究とは、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究のことだ。山口大学医学部に、当該研究に取り組む社会連携講座を設立し、共同研究に着手するという。
各社の役割分担
協同乳業は、腸内細菌叢の代謝産物解析を利用した機能性食品を開発している。その中で、腸内細菌叢により産生されるポリアミン(※1)がマウスの寿命伸長を促し、加齢に伴う学習記憶力の低下を防ぐことを見出している。
一方、島津製作所は、クロマトグラフや質量分析計など、血液や食品などに含まれる多成分を高感度に検出する高度な技術・製品を有している。認知症に関しては血液から高い精度のアルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出法開発の実績も持っている。
花王は、血中のキラルアミノ酸を迅速・高感度に一斉解析する技術を有しており、認知機能の変化を評価する指標として、血中に微量しか存在しないD-アミノ酸が有用であることを発表している。
本取り組みにおいては、山口県と山口市における各関係機関との連携や住民モニターの協力のもと、腸内細菌叢のポリアミン産生を促すヨーグルトなどによる認知症のリスク低減・予防等に関する実証研究を行うという。
※1: ポリアミンはすべての生物種の全細胞に普遍的に存在し、DNA、RNA、およびタンパク質の合成や安定化、細胞の増殖や分化など多方面の生命現象に関連しており、細胞の正常な活動のために必須の生理活性物質だ。特に老年病の主要因である慢性炎症の抑制に有効で、健康寿命との関連性が注目されているほか、最近は脳機能への関与も示唆されているが、加齢に伴い産生能力が低下することから、生体外から摂取することでアンチエイジング効果を得る試みがなされている。
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