【木暮太一氏から見たeiiconとオープンイノベーション】「とりあえず、会おう」では、何も生まれない!<前編>
ビジネス書作家 木暮太一氏が、eiiconユーザーに! 2017年2月のサービスリリースから、想定を超える反響を集めているeiicon。オープンイノベーションを日本の新規事業開発の一手法として根付かせていくために、有識者からの声を聞いてサービスを適宜改善している。今回、eiiconのファウンダーである中村亜由子がお話を伺ったのは、20年間で50冊ものビジネス書を出版する作家であり、数々の企業で講演やコンサルティングを行う木暮太一氏。eiiconの可能性や、オープンイノベーションを成功させるための秘訣を伺った。
▲木暮太一/ビジネス書作家、TVコメンテーター、一般社団法人教育コミュニケーション協会 代表理事
1977年千葉県船橋市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。在学中に自主制作した学生向けの経済学入門書が大学生協や一般書店で累計5万部を突破した。大学卒業後は、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートに勤務。現在はビジネス書作家として活動しつつ、企業内・組織内での講演を多数行っている。2017年4月13日、「どうすれば、売れるのか?――世界一かんたんな『売れるコンセプト』の見つけ方」(ダイヤモンド社)を出版。
■オープンイノベーションの第一歩は、自己分析
木暮: 今朝、さっそく登録してみましたよ、eiicon。
中村:ありがとうございます! サービスについて、まずは率直な感想を聞かせてください。
木暮:企業が外とのつながりを持って真面目にビジネスを考えるための、いいきっかけになるサービスだと思います。メーカーで働いていたことがあるから分かるのだけど、特に大手メーカーさんは外となかなかつながりを持てなかったりするから。
中村:嬉しいです!ローンチしてまだ日は浅いeiiconですが、すでに都内の大手メーカー様と地方の中小企業様などの面談が進んでいます。今までにないつながりが生まれてきそうな実感があります。
木暮: ただ、「とりあえず色んな人と知り合いました」で終わってしまうのではいけないですよね。異業種交流会みたいな…。雑多なつながりって単なる自己満足で、そこから新しいものは何も生まれませんから。
中村:おっしゃる通りです。色んな企業と会っても、結局は会食や打ち合わせが増えるだけで何も生まれなかった、という声が実際にオープンイノベーションの担当者の方々をヒアリングする中でも出てきています。
木暮: あと、どうアピールしたらいいのか分からない人や会社は多いんじゃないかな。実は僕も登録するとき、PRポイントの欄に何を書こうか迷いました。つながりは持ちたいけれど、改めて「誰と」「何のために」というのを考えたことがなかったなって。自己分析が十分できていないということなんですけどね。
中村:うんうん。そうですよね!
木暮:「自分たちの価値はこうだ」「うちと組むとこんな利点がある」というアピールポイントが相手にとって魅力的に伝わらないと、コンタクトすら取ろうと思ってもらえないじゃないですか。だから、まずは自己分析。eiiconのようなサービスを利用して、自社を見つめなおすことからスタートするといいと思います。
中村:ありがとうございます。おっしゃるとおりなんです。外に出会いを求める前に、「なぜ会いたいのか」が明確でないといけません。eiiconの登録項目は、埋めていく過程で「自社が何者であるか、どんな企業となぜ、出会いたいのか」が自己分析・認知を促していけるように設計をしました。
木暮:でも、情報を外にどこまで出すかの判断と伝え方って難しいですよね。特に新規事業に関わってくるところになると、完全にはオープンにすることはできないだろうし。
中村:実はそのあたりの情報の精査・線引きは、当社(インテリジェンス)の得意とするところなんです。人材会社として、新規事業の採用に携わってきた経験から、企業としてどこまで出せるかの線引きや、応募する側に対する効果的な伝え方のノウハウが蓄積されています。一部有料のサービスなのですが、eiiconでは事業戦略に則ったターゲットの設定や効果的にPRを行うためのコンセプト設計もサポートしています。
■相手と自分の資産を掛け合わせて「新しいもの」を生み出す発想が重要
中村:木暮さんご自身は会社員時代に、他社との協業の大切さを実感されたことはありますか?
木暮: 企業にいるときはあまりなかったですね。そういう世界があるということに気付いていなくて、できていなかった。「無意識的無能(できていないことに、気づいていない)」という状態でしたね。独立してから気付いたのは、自分の事業領域を広げていくためには、他者とのジョイントが不可欠だということ。相手の資産と自分の資産を掛け合わせて新しいものを生み出すという発想が、スモールビジネスには大事なんですよね。
中村:企業同士でも、そこは同じですよね?
木暮:そう思います。でも難しいんですよね。互いの資産をどう掛け合わせたら使えるようになるのか、戦略を立てて推進できる人が社内にいないと。社長だけが意識高い系で突っ走ってる状態になりかねない。
中村:まさにそうなんですよ。社外との連携の前に、まず社内連携。トップマネジメントと担当者との意思統一が成されないまま進み、後からお互いの目線がずれて「違うんだよね」となるケースもみています。ですから、先ほど木暮さんがおっしゃったような自己分析が本当に大事だなと。その会社の資産は何で、何が足りないのか。どんな資産を持つ相手と掛け合わせるといいのか。それを明確にするお手伝いを、eiiconはしていきたいと考えています。
早速、eiiconを登録してみたという木暮氏。数々の大手企業に勤務していた経験はあるが、「無意識的無能」という状態で他社との協業の重要さには気づいていなかったという。起業してから気づいた、“相手の資産と自分の資産を掛け合わせて新しいものを生み出す”(=イノベーションを起こす)という発想。明日公開する対談の後編では、イノベーションを起こすために必要な考え方、そしてeiiconに期待することを語ってもらった。
(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)
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木暮氏がリクルート社で学んだ「事業のつくり方」や「売れる法則」を体系化した書籍。商品やサービスの価値をどう打ち出していけば、人を惹きつけることができるのかを、分かりやすく解説しています。オープンイノベーションの協業パートナーを見つける際、自社の価値を外に向けてどう表現すれば伝わるのか、そのヒントにもなる一冊です。