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【イベントレポート】NEDO Dream Pitch & seminarに潜入!~グローバル展開に向けた準備の在り方とは〜

【イベントレポート】NEDO Dream Pitch & seminarに潜入!~グローバル展開に向けた準備の在り方とは〜

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民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)。8月31日(金)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJOICの共催で、オープンイノベーションの推進に資するNEDOセミナーを実施。今回は『海外進出』をテーマとし、世界で戦う有望技術を有するJ-Startup企業6社の代表者が登壇。自社の研究開発の成果と海外市場進出を含めた今後の事業展開など、大企業やベンチャーキャピタル等の事業担当者に対し、創造性の高いプレゼンテーションを行った。後半では、海外のイノベーションエコシステムの在り方に精通したモデレーターを迎え、日本のスタートアップがグローバル展開を考える際に準備しておくポイントを6社とパネルディスカッションにて議論した。

第1部 J-Startup企業6社からのプレテーション

■Holoeyes株式会社

http://holoeyes.jp/

CEO兼CTO谷口 直嗣氏

HoloEyesは医療や医療教育に向けてVRやMRを活用した、コミュニケーションサービスを提供しているベンチャーだ。同社開発のHoloEyesXRでは患者個別のCTスキャンのデータからVR/MRアプリを提供し、術中にガイドとなるデータを表示する。さらに3次元の形状と動きの記録が可能となる。これまでCTスキャンにより輪切りにしていた人間の2次元の画像を医師は頭の中で3次元に置き換える非常に難度の高い作業を行ってきた。しかし、同社技術を活用することでこれまで複数の2次元画像を並べてみていたものが、3次元で血管や神経など、複雑な臓器の構造を可視化できる。安全性の向上や手術時間短縮にも寄与する。国内では年間約77万件もの外科手術が行われており、日本は100万人あたりのCTスキャンの台数が100台と世界で最も多くCTスキャン大国と言える。谷口氏は「既存の手法を変え、医療業界にこれまでにない新たなマーケットを創り、医療コミュニケーションを革新したい。」と語った。

■トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社

https://dfree.biz/

CEO中西 敦士氏

トリプル・ダブリュー・ジャパンは「生体の全てを予測し、不測の不幸をなくす」をビジョンに、世界初、排泄のタイミングを予知するウェアラブルデバイス「D Free」を開発したベンチャーである。「DFree」の仕組みとしては、マッチ箱サイズの超音波センサーを下腹部に装着し、膀胱や直腸などの動きを分析、排泄のタイミングをスマホに通知する。2017年4月から排尿予測のサービス提供を開始し、現在は日本の他にカリフォルニア、パリにも子会社を持ち、中国進出も予定。海外でも本格的に導入を開始している。介護における最大の苦労は排泄であるという。そのため、介護事業者からの引き合いは非常に強い。日本に留まらず、世界中の高齢者人口の増加に伴い、さらに同サービスの重要度は増す。同社技術は、世界の日常生活に大きな変化をもたらすサービスであると期待される。

■株式会社ユーグレナ

http://www.euglena.jp/

取締役CTO鈴木 健吾氏

株式会社ユーグレナは「人と地球を健康にする」を経営理念に掲げるバイオベンチャー企業であり、昨年1年間の売り上げが100億円以上のメガベンチャーである。同社はミドリムシ(学名:ユーグレナ)を主軸にした健康食品・化粧品・バイオ燃料事業を展開している。ミドリムシは植物のように光合成しながら、鞭毛を使って泳ぐ動物のような性質を持ち、非常に栄養価が高く、食品としての価値がある。また、酸素がない状態におかれると体内にある炭水化物を脂質(ワックスエステル)にかえる特徴がある。ここに注目した同社はバイオ燃料としての実用化を目指した研究を行っている。前進し続けているように見える同社であるが、失敗もあったと鈴木氏は話す。努力と挑戦の末、2005年ユーグレナは世界で初めて食用屋外大量培養に成功した。2019年には建設したプラントでジェット燃料の精製に着手する。今後はグローバルに展開し、世界の技術に貢献していく。最後、鈴木氏は「日本のバイオテクノロジーで不可能を可能にしていきたい」とプレゼンテーションを締めくくった。

■株式会社チャレナジー1

https://challenergy.com/

▲代表取締役CEO 清水 敦史氏

 株式会社チャレナジーは、次世代風力発電機「垂直軸型マグナス式風力発電機」の研究・開発を行う。同社が開発する風力発電機には羽がない。風力発電130年の歴史にイノベーションを起こすベンチャーである。マグナス力とは、回転する円柱が風を受けたときに生じる揚力のことを言う。同社技術では、この回転する円柱が風を受けた際に発生するマグナス力を用いて、風車を回し発電する。さらに、あらゆる方向から来る風にも対応出来る、垂直軸型を導入。これにより強度の高い安定した発電を供給でき、台風下でも発電できる。2016年8月から沖縄県で世界初の実機による実証実験を開始している。清水氏は今後、台風、サイクロンが日本以上に襲来するフィリピンの離島地域・山間部等遠隔地など、これまで風車が設置できない地域・環境に対して、展開していきたいと話す。 

 

■スペースリンク株式会社

http://www.spacelinkltd.jp/

▲専務取締役 COO 阿部 晃城氏

スペースリンク株式会社は、「宇宙と地上を技術で繋ぐ」をミッションとし、これまで、宇宙技術開発で培った技術とノウハウを、地上で利活用することにフォーカスしている。昨今事業展開が進む、ドローン・自動運転・EV領域で課題としてあげられるのが「バッテリー」と「位置情報」である。同社技術ではこれらを解決する。「バッテリー」においては、カーボンナノチューブを活用した次世代蓄電デバイス「カーボンナノチューブキャパシタ」を開発。性能劣化が極めて少なく急速な充放電を特徴とする「キャパシタ」と、高い物質性を持ち“夢の素材”と言われている「カーボンナノチューブ」を、同社独自のナノカーボン制御技術により組み合わせ高容量を実現した理想的な蓄電デバイスである。スマートフォンの充電では、従来1時間かかるフル充電が同社の蓄電デバイスでは「1分」で可能となる。「位置情報」に関しては、測位を安定的に低コストで行うことが可能な高精度測位受信機「多周波数対応マルチ GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機」を開発。既存の測位受信機に比べ、障害物の多い環境下や急加速時でも、より高精度な測位を安定的に効率よく行うことが可能な受信機である。今後、産業用ドローンや自動運転などの分野への応用が期待される。

 

■株式会社FLOSFIA

▲営業部 部長 井川 拓人氏

株式会社FLOSFIAは、「パワーデバイスが創る次の未来」を掲げる京都大学発ベンチャーである。

「パワーデバイス」とは電力変換に用いられる半導体デバイスの事であり、約9割がシリコンで出来ている。同社は次なるシリコンとして新材料を開発。電力変換効率の良い次世代パワーデバイスからエネルギー環境問題を解決する。電力変換時には、必ず電力損失が生じてしまい、世界的な社会問題と認識されている。同社は酸化ガリウム(Ga2O3)に着目し、この材料を使い新しい「パワーデバイス(GaO™パワーデバイス)」の開発に注力、従来のシリコン製よりはるかに高効率かつ低損失化が期待できる。現在、この「GaO™パワーデバイス」の実用化・量産化に向けた開発が進んでいる。パワーデバイス市場は2025年で約3兆円と言われており、マーケットとして同社が与えるインバクトは十分にあり、省エネ化のキー材料として広範囲な産業領域での活用が想定される。

第2部 J-Startup企業6社とのパネルディスカッション

第2部では、海外のイノベーションエコシステムの在り方に精通したモデレーターを迎え、日本のスタートアップがグローバル展開を考える際に準備しておくポイントを6社とパネルディスカッションにて議論した。

▲モデレーター:バブソン大学アントレプレナーシップ准教授山川 恭弘 氏

【写真左】コメンテーター:独立行政法人日本貿易振興機構知的財産・イノベーション部イノベーション促進課長 奈良 弘之 氏

【写真右】国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構イノベーション推進部 主査 馬場 大輔 氏

—事業の中で感じている課題とは?

モデレーター山川氏:課題と言っても様々な切り口がありますが、ビジネスの部分に絞って、現状最も感じている課題についてお伺いできますでしょうか?

Holoeyes谷口氏:新しい医療の領域に挑戦しているわけですが、私はもともとエンジニアでデジタルのプログラミングを作っていた者です。一方で弊社の製品の評価をしてくれるのは医師でありますが、金銭管理しているのは医師ではなく事務の方です。このバラバラの3者をいかに一つにし、ニーズに応え、新しいビジネスモデルを構築していくのかが今の課題の一つであります。

トリプル・ダブリュー・ジャパン 中西氏:我々は、BtoBもBtoCのいずれも展開しています。

ひとつ課題を挙げると、個人の場合、多くのユーザーさんから購入していただいているのですが、まだまだ「漏らす」ということが恥ずかしいという概念が根強くあります。(私の原体験は1000回以上公に発信していますが・・笑)漏らすことを予防することをよりポジティブに捉えてもらうにはどうすれば良いのか、この課題を突破していきたいと考えています。

モデレーター山川氏:ありがとうございます。お話を聞いてると「当事者意識」というキーワードが出てきたと思います。中西さんの原体験から本当に必要なサービスであるという、当事者意識から生まれた事業だと思います。この当事者意識をどう外に伝播していくことが中々難しく、乗り越える課題ということですね。

—スタートアップと大企業との連携において、パートナーの選び方や連携のコツとは?

モデレーター山川氏:国内のオープンイノベーションを進ませるにあたり、今までみなさんが感じてきた、パートナーとの付き合い方など教えていただけますでしょうか?

ユーグレナ 鈴木氏: パートナーの方へはまず「自分たちのできることを明確に伝える」ということを大切にしています。そして、自分たちの目指す世界観をしっかりと理解して頂いてから、相手にフィードバックをもらう。このように双方向のコミュニケーションを繰り返し取ることを意識しています。

チャレナジー清水氏:弊社はものづくりのスタートアップですので、これまで様々な事業会社さまと連携してきましたが、今思うことは、やはり短期的な目線ではなく、長期的、「ビジョン」に共感していただく企業が深く長く付き合えると思っています。もちろん時間軸であったり、定量的な部分も見てもらいますが、それよりも定性的な面をしっかりと見て欲しいと思います。

FLOSFIA 井川氏:私たちも自分たちの研究、ビジネスが大好きですので、そこの部分をパートナーの企業さまに率直に伝えて、深く共感していただければ、長くお付き合いできていますね。一方的なアプローチではなく、どのようなビジョンを持ち、どんな領域に進んでいくのかをお互いに理解した上で、伴走していくことが連携する上で重要だと思います。

モデレーター山川氏:なるほど、ありがとうございます。 やはり、「会話」が非常に重要であるとお話ししていただいたと思います。一方で1人1人にアポイントを取って会話していくのも、かなり骨が折れます。ですので本日のセッションのような、一同に集まる場で自然と繋がっていくこともビジネスが生まれる一つの機会となりえると思います。

 

—資金調達の仕方や工夫している点は?

モデレーター山川氏:情熱にお金が付いてくるかというところは、日本ではなかなか難しいところでもあり、一方で必要でもあると思います。ビジネスなのでお金は必要不可欠です。資金政策などお持ちコツの部分をお話しいただけますか?

スペースリンク 阿部氏:私たちの場合、研究開発期間が非常に長く、資金調達に非常に苦労しました。事業をドライブさせるにはVCのチカラが必要だと思っていた時に、ユーグレナの出雲社長とお会いする機会があり、「想いを届けて、スピーディーに事業を創る世界を目指す」という話が印象深く残っていました。その後ユーグレナからリアルテックファンドさんが生まれたのですが、同ファンドさんがなかったらスペースリンクはいなかったと思います。アーリーなスタートアップを支援するVCの中でもオンリーワンなVCだと思います。こういったマインドのVCが増えれば、より研究開発型ベンチャーの未来が切り拓くのではないでしょうか。これから資金調達される方には、マイルストーンをしっかり設定し、それをポジティブにクリアしていけるようにする。「まだまだやれるぞ」「先があるぞ」と見せながら、一つずつ事業を確立させていくアプローチをするしかないのかなと思います。

モデレーター山川氏:なるほど、ありがとうございます。

パネルディスカッションの最後、総評として、奈良氏は「スタートアップから選ばれるような大企業にならないといけない、これまでのスタイルを変えていくことが、大企業側に求められている事である。」と話した。また、コミュニケーションの形に関して、よりSNSなどを使った柔軟なコミュニケーションに切り替えていくべきだと話す一方、最後にはやはり、実際に目で相手を見て、理解し、共感する事も重要である、と話した。馬場氏は、6社のみなさんのお話をきいてキーワードとして「ビジョン」や「想い」、「共感」などがでてきた通り、それぞれのビジネスの特徴は異なったとしても、事業を創る、スケールさせる上で重要な要素・ポイントは共通している。NEDOは今後ともこのようなイベントや出会いの場を提供し、人と人とが繋がる輪を創り、支援していきたいと締めくくった。

取材後記

「日本のイノベーションは遅れている」そう耳にすることがある。しかし、今回のNEDOセミナーでは、様々の業種のそれぞれの分野において新しい技術があり、どれも世界と戦える力と市場があった。日本のベンチャーがどう世界に眼を向け、戦っていくのか、今後の飛躍に期待せずにはいられないピッチであった。

(構成・取材・文:保美和子)

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