堺市×Empathy4u×想ひ人、「孤独・孤立」課題を可視化する実証プロジェクトを開始
堺市はヤングケアラー向け支援事業を行う株式会社Empathy4u、介護に関連する支援サービスを提供する株式会社想ひ人と連携し、「孤独・孤立」をめぐる課題の可視化と支援手法の効果検証を行う実証プロジェクトを開始した。
堺市が実施する「令和7年度 公民連携実証プロジェクト推進事業(テーマ:孤独・孤立対策)」に採択されたもので、正式名称は「堺市の孤独・孤立対策に関する新たな相談支援ツールの構築及び孤独・孤立の状況調査」。実証期間は令和8年3月31日までを予定している。
AIと専門相談員による多角的な相談支援を提供しながら、支援に至る導線そのものを検証・分析する点にある。孤独・孤立の問題において、「誰が、どのような困難を抱え、どの支援が有効なのか」を定量的に把握し、政策提言につなげる全国再現可能なモデルの構築を目指す。
背景にある「孤独・孤立対策推進法」と現場の課題
2024年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行され、孤独・孤立は社会全体で取り組むべき課題として位置づけられた。内閣府の調査によれば、国民の約40%が孤独・孤立に関する何らかの不安や困りごとを抱えているとされる。
一方で、実際に支援が必要な当事者が行政窓口や既存の制度につながることは容易ではない。相談窓口の縦割り構造や情報の分かりにくさにより、悩みを抱え込んだまま支援にたどり着けず、問題が複雑化・深刻化してしまうケースも少なくない。特に、既存制度の対象外となる「制度の“はざま”」にいる潜在層へのアプローチは、全国の自治体に共通する課題だ。
LINEを基盤に、AIと有人相談を組み合わせた新たな支援導線
本実証では、LINE公式アカウントを基盤とした相談支援ツールを構築。相談者の状況や課題の深刻度に応じて、①AIチャットボットによる情報提供、②福祉特化AIによる自動相談、③福祉専門相談員による有人相談という三つの支援導線を用意する。これにより、深刻な悩みを抱える層だけでなく、「解決してほしいわけではないが、もやもやしている」といった初期段階の不安にも対応し、早期支援への接続を図る。
あわせて、世代や想定課題に応じたオンライン広告を活用し、支援を必要とする潜在層を相談窓口へ誘導。広告接触から相談行動、支援導線の利用状況までを一気通貫で分析し、孤独・孤立の実態をデータとして可視化する。
現場理解と技術力が生んだ協業の成果
株式会社Empathy4uは、ヤングケアラー支援を中心に、SNS相談やオンラインイベント、AIシステム開発などを通じて自治体支援の実績を重ねてきた。孤独・孤立という見えにくい社会課題に対し、データとテクノロジーを用いて向き合う本取り組みの行方が注目される。
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(TOMORUBA編集部)