
中小製造業のDX化を推進 シャボン玉石けん×Qsolが共同研究の成果を発表
無添加石けんのパイオニアであるシャボン玉石けん株式会社は2025年5月28日、Qsol株式会社と取り組んできたスマートファクトリー化に関する共同研究の成果を発表した。本研究は2023年4月より開始され、AIやIoT、ウェアラブルデバイスなどのデジタル技術を活用し、製造現場の生産性向上と安全管理、さらには熟練技術の継承に向けた具体的な成果を上げている。
熟練技術とDXの融合で現場を変える
今回の取り組みでは、シャボン玉石けんが製造現場の検証フィールドや業務視点での評価を、Qsolがシステム開発や技術評価をそれぞれ担った。2023年度には推進体制と技術基盤を構築、2024年度にはデータ収集範囲を大幅に拡大し、現場の改善に本格的に着手した。シャボン玉石けんによる内製開発も進み、IoT活用レベルは飛躍的に向上した。
特に注目すべきは、生産計画の自動立案である。従来はベテラン社員の経験と手作業によって構築されていた計画工程に対し、最適化AI技術を導入。年間200時間以上の業務時間削減が見込まれるという。属人化の解消と業務負荷の軽減に直結する成果であり、DX化の意義を現場レベルで実感できる好例だ。
環境負荷を抑えた製造体制の実現
また、工場の省エネルギー化にも着手。エアー供給配管のエアリーク(空気漏れ)をIoTデータから検知し、改善策を講じたことで、年間で約3.9%の電力削減、金額にして97万円のコストカットを実現した。夜間の待機電力の見直しも行われ、環境にやさしい製造という企業理念に沿った成果を上げている。
安全管理の分野では、夏季に40℃を超える過酷な職場環境に対応するため、スマートウォッチと温湿度センサーを導入。作業負荷の可視化と適切な休憩促進、助けを求めるための仕組みを構築した。
職人の技術をデータで継承
さらに、シャボン玉石けんが長年守り続けてきた釜炊き石けんの製法についても、AIとカメラを用いたデータ化が進められている。職人の動きをモニタリングし、作業タイミングと石けんの状態変化を記録・分析することで、若手への技術継承と品質の安定化を両立させる狙いがある。人材不足が深刻化する中、熟練技術を「見える化」し、継続的に維持する仕組みとして期待が高まる。
中小製造業DXのモデルケースへ
発表の場で、シャボン玉石けん代表の森田隼人社長は「中小企業ではDX導入がコスト負担と捉えられがちだが、社内プロジェクトとしてスモールステップで推進することで、現場がすぐに成果を実感できた」と述べた。地方中小企業としての立場から、DXのロールモデルとなることを目指し、「ものづくりのまち北九州」から全国へとその波及効果を広げていく構えだ。
Qsol株式会社も今回の成果をもとに、今後は製造業全体への支援強化に取り組むとしている。リアルな現場に根ざした技術導入のノウハウは、多くの中小製造業が直面する課題の解決に貢献する可能性を秘めている。
DX化は単なるシステム導入ではなく、現場に寄り添い、職人の知恵や安全への配慮と結びつくことで、初めて持続可能な成果を生み出す。本共同研究はその解の一つとして、インパクトを与えている。
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(TOMORUBA編集部)