CAEにイノベーションを起こすRICOS、シリーズ A ラウンドとなる総額3.0 億円の資金調達を実施
AI とシミュレーション技術で製品設計の効率化と高付加価値化を実現する株式会社科学計算総合研究所(以下、RICOS)は、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズおよび株式会社 DG ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資を実施し、シリーズ A ラウンドとなる約 3.0 億円の資金調達を 2021 年 10 月に完了した。
調達の背景と目的
RICOSは、CAE(Computer Aided Engineering)※ に AI および高性能計算の技術を組み合わせることで、ものづくりのプロセスを最適化するテックカンパニー。
※ CAE(Computer Aided Engineering)とは、より高品質な製品開発のために、コンピュータ内で製品設計やシミュレーションなどを行う設計手法。コストや時間のかかる製品の試作・実験を一部省略できるため、多くの設計現場で用いられている。
ものづくりの現場における製品設計のプロセスでは、 CAE を活用しコンピュータ上に疑似的な製品モデルを作成したうえで、流体の流れや熱伝導などさまざまな物理現象をシミュレートする手法が多く利用される。しかし、高い精度を求めてシミュレーションを行う際に、計算時間が非常に長くなることが 1 つの課題となっている。そこで RICOS は、CAE と AI を組み合わせることで、高速にシミュレーション結果を予測できるアルゴリズム「IsoGCN(アイソジーシーエヌ)」を 2020 年に開発し、特許を取得した。自動車のボディ設計をはじめとする幅広い製造業の製品設計の現場に同社の「IsoGCN」の導入が進みつつあり、製品設計のシミュレーションの効率化および精度向上の成果が出始めている。
今後は、「IsoGCN」を組み込んだ SaaS 型プラットフォーム「RICOS Production Suite」の開発を進めていくという。「RICOS Production Suite」に搭載される予定の主要なソリューションは、シミュレーションに必要な高品質メッシュを自動で生成する「RICOS Mesh」と、「IsoGCN」によりシミュレーション結果を高速かつ高精度に予測する「RICOS Lightning」の 2 つがある。特に「RICOS Lightning」に強みがあり、数日かかる流体シミュレーションの計算結果をたった数分で予測した実績を有する。
RICOS は、顧客の製品設計の業務フローへの「RICOS Production Suite」の導入を進め、製品設計のシミュレーション結果の精度を担保しながら、シミュレーションにかかる時間の大幅な削減を目指すという。
なお、今回調達した資金は、「RICOS Production Suite」の開発に充てるとともに、CAE を発展させる AI アルゴリズムの精度向上を目的とした研究開発、プロダクトの開発エンジニアや BizDev 人材などの採用強化に充当する予定。
RICOS は、国内外への「RICOS Production Suite」の提供を進め、あらゆるものづくりの現場で効果的に科学計算が活用され、最終的には最適な性能を瞬時にデザインできる世界の実現を目指すという。
シミュレーション結果予測 AI アルゴリズム「IsoGCN」について
RICOS が開発した AI アルゴリズム「IsoGCN」を使うことで、シミュレーション結果を高速かつ高精度に予測できる。シミュレーションデータへの適用に特化した「IsoGCN」は、下記の 3 つの特長を備えている。
①従来のシミュレーションに比べて計算量が削減できるため、シミュレーションの抜本的な高速化が可能になる。
② 3 次元形状を詳細に把握できるため、製品設計の現場で用いられる複雑な形状の予測に適している。
③アルゴリズムに流体解析、熱解析、構造解析などの手法を組み込んでいるため、従来のシミュレーション同様まったく新しい製品形状に対しても信頼性の高い結果が得られる。
これにより、数日かかっていたシミュレーションの計算時間を十分な精度を保ったまま数分にまで短縮した実績もある。また瞬時に計算結果を確認できることで、リアルタイムでの製品設計の実現に近付く。これまでの適用実績には、自動車の空力特性解析、電子部品の熱解析、樹脂製品の成形解析などがある。
調達資金の使途
1. プラットフォーム「RICOS Production Suite」の開発・ユーザビリティの向上
2. AI およびシミュレーション工程に関わる技術の研究の推進
3. 優秀な人材採用による開発体制の強化および海外展開を見据えた PoC の推進
引受先各社からのコメント
■株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ パートナー 井出 啓介 氏
RICOS が独自開発した 3 次元物理シミュレーション向けグラフ・ニューラル・ネットワーク・アルゴリズムは、従来のシミュレーション手法と比較して数桁単位の高速化が可能です。これにより、今までのシミュレーション手法では到達し得なかったデザインが可能になります。 3 次元 CAD を使う全てのデザイナーや設計者に活用頂けるよう、製品・サービス化を推進していきます。
■株式会社 DG ベンチャーズ 取締役 前川 雅彦 氏
RICOS 社の魅力は、顧客のニーズ把握と専門的な研究の両輪が上手く回っているところにあります。これからさらに事業が加速し、高度な計算科学の研究結果が顧客の使うサービスに落とし込まれていくことが楽しみです。RICOS 社のサービスが広く使われるように、決済ソリューションなどのテクノロジー面も含め、ビジネスの拡大を支援していきます。
RICOS(リコス)について
RICOS は、CAE に AI および高性能計算の技術を組み合わせることで、ものづくりのプロセスを最適化するテックカンパニー。
RICOS が開発を進めるソリューションは、CAE と AI で製品設計をより高付加価値なものにするための SaaS 型プラットフォーム「RICOS Production Suite」。同プラットフォームの主要なソリューションは、シミュレーションを行うための高品質なメッシュを自動で生成する「RICOS Mesh」と、独自に開発したシミュレーション結果予測 AI アルゴリズム「IsoGCN」によりシミュレーション結果を高速かつ高精度に予測する「RICOS Lightning」の 2 つがある。特に「RICOS Lightning」で提供するシミュレーションに強みがあり、数日かかる流体シミュレーションの計算結果をたった数分で予測した実績を有する。また、自社で計算資源を有する顧客に対しオンプレミス型でも「RICOS Production Suite」の提供を行う。
関連リンク:プレスリリース