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【オープンイノベーター列伝/加藤由将】このままでは「ヤバい」日本、渋谷をグローバルなイノベーション拠点にしたい。(後編)

【オープンイノベーター列伝/加藤由将】このままでは「ヤバい」日本、渋谷をグローバルなイノベーション拠点にしたい。(後編)

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イントレプレナーとしてアクセラレータープログラムを企画し、ベンチャー企業と共創しながら新たなビジネスを創造している加藤由将氏。2004年に東京急行電鉄株式会社に入社して経理などを中心としたバックオフィス業務に携わった後、新規事業の立ち上げにアサインされた。以来、イノベーションと深く関わりを持つようになる。現在、東急グループという大きな母体を動かしながら、オープンイノベーションに取り組んでいる。  

■社会への貢献を果たしながら、会社の発展につなげたい。

アクセラレータープログラムの大きな狙いは、渋谷という都市の発展だ。インフラのみならず、不動産開発やライフスタイル系のサービスを提供することで、都市空間を創るいかにも東急らしい発想、東急だから実現できることと言える。「渋谷の再開発に合わせてベンチャーエコシステムを構築し、様々なサービスやプロダクトの可能性を検証する実験・研究都市としてプレゼンスを発揮したいと思っています。渋谷がグローバルなイノベーション拠点となれば、ヒト・モノ・カネ・情報が流れ込んでくるはずです。同時に、日本のイノベーションが海外に出ていくというイノベーションのインバウンド・アウトバウンドを繰り返せるようになれば、ベストです。オープンイノベーションをきっかけにエコシステムを作り、新たなサービスを沿線に提供すれば生活利便性が向上しますよね。それによってベンチャーが成長すれば雇用が生まれ、経済が活性化し、GDPが上がっていくのではないかと。そうなることを目指しているんです」。 

その実現のため、イントレプレナーとして活動を広げている。「会社のために働くのではなく社会のために働いて、結果として会社が潤うということをしたいんです。”会社のため”を優先させると、社会の協力は得られませんから」。  

■ベンチャーへの理解、上司の理解を得ることは必須。

アクセラレータープログラムの企画から実施、運営まで手がけている加藤氏だが、ここに至るまでには、もちろん、多くの軋轢や抵抗があった。想定外のものとしては、ほぼ同時期に検討されていた社内起業家育成制度を挙げる。 

「同制度は社内で新規事業を立ち上げるためのクローズドイノベーションであり、敢えて外部と一緒に行うオープンイノベーションは不要なのではないかという意見が出ました。でも、イノベーションには内と外、両側面の刺激が必要で、そうすることがクローズドイノベーションにとっても有用だと説明しました」。事実、社内起業家育成制度に積極的な社員であればあるほど、オープンイノベーションへの理解も深く、協力・協業が生まれやすいそうだ。 

「そもそも、多くの人はベンチャーについて知識がありません。ステージや業界が異なればまったく違うことも知らないんです。東急という大企業でも十分に協業できる企業があることを強調して、アクセラレータープログラムのスタートにこぎつけました。私の場合は、直属の上司が非常にイノベーティブだったという幸運もあります。若手を中心に、中間管理職の理解を得られないため、イントレプレナーとして身動きが取れないということも少なくないようです」

東急がオープンイノベーションを推進することは実は東急グループの創業期にM&Aを活発に行っていた動きと本質は似ているのではないか。お話をお伺いしながら、加藤氏からは会社、日本全体を見る視点の高さと、何よりイノベーションに対する熱意を感じた。


■取材後記

単純なことだが、熱意がないとオープンイノベーションは行えない。オープンもイノベーションも、どちらかと言えば、大企業が苦手とすることだ。中途半端な気持ちでは、動かせるものではない。加藤氏は上司に理解があることを運が良かったと語ったが、企画が未熟と却下されたことも少なくないという。アクセラレータープログラムは「これでもか」と出した渾身の提案だったとのことだ。日本の危機を感じ、イノベーションへと突き動かされた加藤氏。幸運は情熱が呼び寄せたものだと思う。 (構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:とみたえみ)


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