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業界未来予想図ーー店舗は「買う場」から「体験する場」に。/b8ta Japan

業界未来予想図ーー店舗は「買う場」から「体験する場」に。/b8ta Japan

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アメリカ発の「体験型店舗」として注目を集める「b8ta(ベータ)」が日本にも上陸した。従来の店舗ビジネスとは異なり、商品を仕入れるのではなく、商品を展示するエリアを月額で貸し出すビジネスモデルだ。他にも店内に設置されたカメラで来店客の行動を細かくデータ化し、オンラインのようなユーザー解析が可能にするなど、小売市場に変革を起こす存在として注目されている。


▲b8ta 有楽町店


今回はb8taの日本上陸を手掛けた、ベータ・ジャパンカントリーマネージャーの北川卓司氏に話を伺った。外資系企業での経験が長い北川氏に、海外のビジネスパーソンとの仕事の進め方や、これから日本のリテール業界に起こりうる変化について語ってもらった様子をお届けする。


英語の直訳じゃ日本人には響かない。海外のサービスをローカライズする苦労

ーーまずは北川さんがカントリーマネージャーを務めることになった経緯について教えて下さい。

私はもともと外資系家電メーカーで、店舗でのカスタマーエクスペリエンスの仕事をしていました。そのため、アメリカでb8taという新しい小売の形が流行していることには注目していました。そんな折、友人を介してb8taのファウンダーと話をする機会がありまして、私のキャリアを見込んで日本のカントリーマネージャーに誘ってくれたのです。

ーーすぐに転職を決意したのですか?

いえ、面白いとは思いつつも最初は転職はする気はありませんでした。しかし、何度か会って話を聞いているうちに、b8taなら落ち込み気味の小売業界に新しい可能性を見いだせるかもしれないと思うようになったのです。

b8taのビジネスモデルは面白いものの、日本で成功するかどうかは、誰が日本でb8taを立ち上げるか次第だと思いました。そこにやりがいを感じて、本格的にジョインすることを決めました。

ーーb8taは世界で3カ国目に日本への進出を決めていますが、その理由はなんでしょう?

理由は2つありまして、その一つはb8taの本社があるサンフランシスコは、日本の駐在員や観光客が多い地域であることです。現地の日本人たちが、b8taで展示している最先端のD2Cの商品に強い関心を寄せていたため、日本市場に可能性を感じていたのです。

もう一つの理由は、日本進出を後押しする日本の投資家が見つかったこと。そのような理由がタイミング的にも重なって、日本への進出を決めたようです。日本進出に当たって、カントリーマネージャーを探している時に、私が推薦された形になりますね。

ーー日本でのオープンに向けて苦労したことはありましたか?

採用と言葉の壁には苦労しましたね。アメリカでは知名度の高いb8taですが、日本ではまだほとんど知られていないサービスです。そのため、採用ブランドをゼロから作り上げるのは大変でした。

特に私達のサービスは、一般的な家電量販店よりも一歩踏み込んだ知識や接客が求められます。商品のスペックなどはもちろんですが、どんなビジョンを持った会社が作ったのか、どんなこだわりや開発秘話があるのか、その会社の社員と同じように語れなければなりません。なんとか店舗の人員は採用できましたが、今もリモートで多くのトレーニングを受けています。

ーー言葉の壁の苦労というと? 

本社とのコミュニケーションという意味もありますが、それ以上に対外的なメッセージングに苦労しました。例えばアメリカでは、b8taのビジネスモデルのことを「RaaS(Retail as a Service)」と表現していますが、これを日本語に直訳する「サービスとしての小売」です。

そのままでは日本人には通じないため「実店舗のサブスクリプション」と訳しました。同じように、英語でのメッセージを日本人に響くように意訳するのは苦労しましたね。


▲b8ta 新宿店

海外のビジネスマンとの仕事をスムーズに進めるスケジューリング術

ーー前職でも外資系企業での働いていたとのことですが、海外のビジネスパーソンと一緒に仕事をする上で気をつけていることはありますか。

これまで様々な国の方たちと一緒に仕事をしてきて注意してきたことは、前提となる認識を揃えることですね。国が違えば常識も慣習も違うため、私達にとっての当たり前が、彼ら彼女らの当たり前ではないことがよくあります。

仕事を始める時は、必ず目的とゴールを言葉にして同じ認識で進めるようにしています。「言わなくても分るだろう」という甘えは大変危険です。

もうひとつ加えるとすれば、納期についてですね。

ーー納期について? 

これは人によるので、一概に海外の人がそうだとは言えないのですが。日本人に比べてデッドラインギリギリに納期を設定した上に、さらに遅れる可能性が高いです。ですので、海外の方に仕事をお願いするときは、いつもより余裕のあるスケジュールを組むようにしています。

例えば日本のスタッフと海外のスタッフに同じ仕事を依頼する時も、海外のスタッフには少し前倒しで納期を伝えることもありますね。

ーー納期から遅れる前提で予定を組むんですね。仕事の進め方にも差はあるのでしょうか。

最近はそうでもありませんが、以前は日本と海外ではスピードが格段に違いました。海外は現場に仕事を任せているので、大企業でも現場のリーダー、もしくはその上長の承認だけほとんどの仕事を進められます。日本だと役員に承認をとるようなことも現場で決められるので、スピードが全然違いましたね。

ただし最近では、日本の企業も現場主導で進める企業が増えたので、その差も縮まっているように感じます。

ーー日本の大企業の意識も変わってきているのですね。今回のように海外のサービスを日本で展開しようとする時に、注意すべきポイントがあったら教えて下さい。

海外のサービスを日本で展開しようとする場合は、本国で成功しているケースが多いと思います。「海外で流行っているから日本でもウケるだろう」という甘い認識で、日本で展開して失敗するケースも少なくありません。海外でどれだけ成功しているビジネスでも、日本で展開する際には、必ず日本の市場にフィットさせることが必要です。

今回は私がカントリーマネージャーとして就任しましたが、大企業が外資企業と組む時も同じです。テクノロジーなどは本国のものを使うにしろ、ゼロから新しいビジネスを立ち上げる気概が必要だと思います。

日本のb8taを「発見を楽しむ場」に。オープンにかける想い

ーー8月1日にオープンしたb8taですが、出品者者からはどのような期待を寄せられているのでしょうか。

 出品する企業は大企業からスタートアップまでいて、それぞれから応援の声を頂いています。スタートアップにとっては、低価格であれだけの好立地に商品を置けることで喜んで頂いてますし、日本で新しい商流が生まれるタイミングに携われて嬉しいという声も届いています。


一方で大企業からはこれまで取れなかったデータから、新しいビジネスの可能性を広げられそうだ、という声も頂きました。

従来の店舗でも来店者数のデータはとれますが、b8taなら性別など来店者の属性や、どれくらい興味があったかまで計測できます。それらのデータを使ってより効果的に販促に活かしたり、新しい商品開発に活かそうとしているようです。

ーー次のビジネスに活かすにも効果的なんですね。すでに「スマートスイムゴーグル」や「スマートアートキャンバス」など、多種多様な商品を展示することを発表していますが、特にb8taと相性のいい商品というものはありますか。

どんな商品でも相性がいいと思っていますが、特に説明が必要な商品こそb8taを活用する意義は大きいと思います。もともとb8taはガジェットを手にとって試すためのお店が始まりでしたが、今では家電からコスメまで様々な商品が並んでいます。

使ってみないと分からない、触ってみないとわからない、話を聞いてみないとこだわりがわからない商品こそb8taで売る価値が高いのではないでしょうか。

ーー確かに見るだけで価値が分るならオンラインで十分ですね。コロナショックによってオンラインでものを買う流れが加速しましたが、それによって実店舗の価値はどのように変わっていくと考えていますか。

長期的には、店舗の目的が「買う」ことから「体験する」ことにシフトしていくと思います。仰るとおり、商品を買うだけならオンラインで十分なので、店舗は新しい価値を発見して体験する場所になっていくはずです。

b8taのミッションも「リテールフォーディスカバリーリテールを通じて人々に“新たな発見“をもたらす(Retail Designed for Discovery)」、つまりお客様に発見してもらうことを重要視しています。

ーーb8taはビジネスモデル的にも、店頭での売上を重要視しなくてもいいことになりますが、店頭の販売員さんたちは何をモチベーションにしているのでしょう。

私達は店頭で働くスタッフのことを「テスター」と呼んでいますが、たしかに彼ら彼女らは売上を追っていません。そのため、「売るのが好きな人」よりも「売るのは好きじゃないけどお客さんと話すのが好き」という方のほうがb8taに向いていると思います。

b8taには面白い商品が集まるので、それらを自分で体験して感動し、それをお客さんに伝えて共感してもらうことがテスターのモチベーションになっていくはずです。


ーーお客さんに「発見」を楽しんでもらう仕組みなどがあったら教えて下さい。

私達は店の中の商品の「置き場所」を売っているわけですが、どの場所に商品を配置するかは私達が決めています。「この商品を好きな人は、この商品も好きそうだから隣に置こう」といったように、発見を促すような動線になるよう商品を配置しています。店をオープンしてデータがたまれば、より精度の高い配置ができるでしょう。

ーー新宿と有楽町で2店舗同時オープンとなりますが、それぞれ違いはあるのでしょうか。

どちらもサービスに変わりはありません。ただし、それぞれ来店するお客様の層が異なるので、どちらの層に強くアピールしたいかで商品を展示する店を選んでもらえればと思います。

想定としては、新宿ならファミリー層が多くなりますし、有楽町はビジネスパーソンの来店が多いので、そちらを考慮してもらえればと思います。

ーー最後に、日本におけるb8taのビジョンがあれば教えて下さい。

b8taらしさを守りながらも、日本のb8taは日本のみなさんと一緒に作っていきたいと思います。b8taはもともとガジェットを試す店として誕生したので、アメリカでは今でもガジェット類が多く展示されています。

しかし、日本ではオープンのタイミングからジャンルの間口を広げて商品を募集したので、ガジェットに限らず様々な商品が集まりました。例えば細川機業さんの「和紙布スリッポン」など、伝統的な日本の技術を生かした商品も並んでいます。幅広いジャンルの商品をご用意していますので、日本の方々に発見を楽しんで頂きたいですね。


編集後記

コロナショックでショッピングの機会が限定されるようになり、ショッピングが単に商品を手に入れる行為だけではないことに気付かされた。商品を手に取り吟味し、購入を検討する過程は一種のエンターテイメント性を孕んでいる。そのエンターテイメントを最大化したのがb8taだ。

予定調和のない商品群の中から、予想し得ない商品と出会い、見ただけではわからないこだわりや開発秘話を聞けることは、それだけで価値のあるエンターテイメントだ。店にとっては本意ではないかもしれないが、何も買わなくても楽しめる店になることは容易に想像できる。これからb8taが日本の小売市場にどのような影響を与えるのか楽しみだ。

(編集:眞田 幸剛、取材・文:鈴木光平)

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