【イベントレポート】「eiicon」ミートアップイベント第4弾!「IoT」に取り組む5社のピッチに多くの注目が集まりました。
オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」は4月25日、渋谷の「dots.」にて、大手企業とスタートアップの出会いを創出するイベントの第4弾「eiicon meetup!! vol.4」を開催しました。今回のテーマは「IoT」。注目度の高い領域ということもあってほぼ定員に近い40人が集い、会場は盛り上がりを見せました。
冒頭で、eiicon co-founderの田中みどりが挨拶。eiiconは、国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」をビジネスで目指すオープンイノベーション・プラットフォーム「SHIP」の公式パートナーとなっていることに触れ、「今回はSDGsの目標の一つ『都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする。』「住み続けられるまちづくりを」について、IoTから解決を図ります」とピッチの趣旨を説明しました。
登壇企業とピッチ内容は以下の通りです。
and factory株式会社
▲代表取締役CEO 小原 崇幹氏
同社は、スマートフォンを活用し、人々の日常の中にちょっとした&(+)を届けることに挑戦しています。2016年8月には、IoTデバイスを集結させ、一つのスマートフォンアプリで操作できるビジネスホテル「&ホステル」を福岡にオープンさせました。特徴はIoTを身近に体験できるところであり、メーカーにとっては実証検証をする場所となっています。4月には浅草に開業させ、さらに5月には上野に開業予定。今後、ヘルスケア、住宅、オフィス、インバウンド・観光などの分野に展開していきたいことを述べました。会場からは「どのようにIoTを一つのアプリで操作できるようにしたのか」との問いが出され、それに対し「各社にAPIを開放してもらった」と応え、背景を紹介しました。
&HANDプロジェクトチーム
▲Project Leader 池之上 智子氏
同プロジェクトは身体・精神に不安や困難を抱えた人と、手助けをしたい人をLine Beaconでつなぎます。サポートの情報はBeaconを通じて発信され、周囲のサポーターはchatbotでメッセージを受け取ります。例えば、耳の不自由な方は障がいのあることに気づかれにくいのですが、Beaconを通じてメッセージを発信することで、必要なサポートを受けることができます。また、目の不自由な方の場合はBeaconで自身の存在を知らせることができます。今後は外国人旅行者への利用も広め、2020年までに「誰もが手助けできる社会」の実現を目指します。会場からは収益モデルについての質問が出され、「その点が大きな課題」と応え、「ぜひアドバイスをいただきたい」と強調しました。
株式会社ライナフ
▲代表取締役 滝沢 潔
同社は不動産管理向けシステムやアプリの開発をはじめ、ハードウェアの製造・販売、不動産活用サイトを運営。遠隔操作やタイマーによる施錠・開錠などが可能なスマートロックを送り出しました。今後、住まいは「サービス」が付加されているものが主流になると考え、スマートロックを部屋や玄関に取り付けることで、無人で宅配や家事サービスを受けられる仕組みを作り上げようとしています。既に建築材料・住宅設備機器大手のLIXILと共同で開発は進行中とのことでした。さらに同社は、宅配や家事サービス、マンション・住宅ディベロッパーなどにさらなる協力を呼びかけました。また、スマートロックの紹介に際し、TVショッピングで有名な社長の真似をするなど、会場の笑いを誘う一幕もありました。
株式会社チカク
▲共同創業者兼代表取締役 梶原 健司
同社はスマホで撮った子どもの動画と写真が、テレビに映し出される「まごチャンネル」を開発・展開しています。映像を見ることで「離れて暮らしているけど、近くにいる」ことが実感でき、既に47都道府県をはじめ、海外でも導入されています。特徴は、設置・操作が簡単で、ネット環境がなくても視聴できること。100歳になる方の使用実績もあります。映像を送るほうも、スマホで撮影するだけ済み、利便性は高いです。ビジネスモデルは、端末代と月々の利用料。端末は毎日利用され顧客接点が多いという側面もありますので、今後の展開を模索しているとのことです。また、「まごチャンネル」は野村證券の「野村アクセラレータープログラム」の参加企業にもなっています。
株式会社ソラコム
▲テクノロジ・エバンジェリスト 事業開発マネージャー 松下 享平
同社は、モバイル通信サービスを提供する SORACOM Air に加え、セキュアな IoT / M2M システムの構築を可能にするネットワークサービス、アプリケーション連携サービスを提供しています。「住み続けられるまちづくりを通信から支える」が事業のテーマです。日本の人口は、年間で16万2000人も減っているという統計もあり、世の中全体が人手不足になるのはほぼ間違いないことでしょう。そうした中、労働生産性を上げ、人の代わりを果たすこともあるIoTにかかる期待は決して小さくありません。SORACOMはすぐに試せる・使る・止められるという利点があり、農業、工業、交通など使用が広がっています。
取材後記
IoTは今、もっとも注目度の高いビジネス領域の一つだろう。世の中に浸透しているとは言いにくいところもあるが、言葉はあちこちで見かけるし、耳にする。そのIoTには生活に利便を届ける側面と、生産性を向上させるという2つの側面がある。もちろん、明確に分けられるものではなく、他の側面もあると考えられるが、いずれにせよ、これからの日本で重要なキーワードになるのは間違いない。加えて、IoTは既存のビジネスとの組み合わせで、初めて大きな価値を発揮していくものだと思う。オープンイノベーションがもっとも有効となる分野とも言える。今後の展開や隆盛に注目したい。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)