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東京メトロのアクセラ審査会に密着――「VRで地下鉄恐怖症の克服」・「eスポーツジム運営」の2つの共創プランを採択!

東京メトロのアクセラ審査会に密着――「VRで地下鉄恐怖症の克服」・「eスポーツジム運営」の2つの共創プランを採択!

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2019年12月、東京メトロは4期目となるアクセラレータープログラム「Tokyo Metro ACCELERATOR2019」の募集を開始した。今期のプログラムのコンセプトは「みんなが自分らしくつながる未来へ」

東京に生きる一人ひとりが、自分らしく、活き活きとした暮らしを実現するための事業創出を目指し、3つのテーマ「CONNECTION(つながり)」「WORK(働き方)」「WELLNESS(健康)」を設定して、共創プランを募った(下記参照)。東京の都市機能の一部として、膨大な人々の社会生活を支えてきた東京メトロ。そんな東京メトロが、パートナー企業との共創でどのような価値を生み出すのだろうか。

●テーマ1:CONNECTION「新たなつながりを通じた、社会・地域の発展」

東京の街と街をつなげてきた東京メトロが、その経験を活かし「ヒト」や「コト」をつなげ、新たな価値を生み出す。

●テーマ2:WORK「誰もが自分で選択できる働き方へ」

働く場所や時間にとらわれない、多様で現代的な働き方をサポートする。

●テーマ3:WELLNESS 「健康の維持・促進を通じ、社会全体の活力を引き出す」

体の健康だけでなく、心の満足度や生活の充実も含めた「健康的な暮らし」を支える。

130件の応募から6件が選抜され、審査会に臨む。

「Tokyo Metro ACCELERATOR2019」は、約1ヵ月間 の募集期間で130件の応募があり、書類・面談審査を通じて6社のスタートアップを選抜した。2020年1月からは、東京メトロの社内から選出された「コーディネーター」がスタートアップとチームを結成。審査会までのおよそ1.5 ヵ月に渡り、共同で共創プランを練り上げていった。

そして、2020年3月6日、東京メトロ本社を舞台に最終審査会が開催された。審査会ではスタートアップの各チームが、コーディネーターと共にプレゼンテーションを実施。常務取締役 経営企画本部長の古屋俊秀氏を中心にした、合計6名の経営層メンバーが審査を手がけた。さらに審査会には、各界で新規事業創出の実績を持つ外部アドバイザーが参加し、各チームへのアドバイスを行った。

【審査委員長】

■東京地下鉄株式会社 常務取締役 古屋俊秀氏

【審査員】

■東京地下鉄株式会社 取締役 小坂彰洋氏

■東京地下鉄株式会社 鉄道統括部長 田地朗氏

■東京地下鉄株式会社 需要創出・マーケティング部長 古川守氏

■東京地下鉄株式会社 流通・広告事業部長 亀野拓也氏

■東京地下鉄株式会社 企業価値創造部長 川上幸一氏

【外部アドバイザー】

■NPO法人ミラツク 西村勇哉氏

■eiicon company 中村亜由子


2社のスタートアップの共創プランが採択!

6社の共創プランを、審査員は「意義・目的」・「対象とする顧客と提供価値」・「ビジネスモデル」・「収支計画」・「実行計画」などの軸で評価し、審査を行った。その結果採択されたのは、魔法アプリゲシピの2社だ。この2社は、東京メトロと共に実証実験に臨み、共創プランの実現に向けて取り組みを進めていくことになる。

一つずつ、詳しい提案内容を見ていこう。

●株式会社魔法アプリ「VR技術を活用した電車・地下鉄恐怖症の克服に向けた取り組み」

魔法アプリが提案したのは「VR技術で広場恐怖症・パニック障害を救う」という共創プランだ。広場恐怖症・パニック障害とは、突然前触れもなく動悸やめまい、震えなどの症状に襲われ、その結果パニック発作を起こしてしまう障害のこと。日本国内には約120万人の患者がいるとされており、その多くがパニック発作を起こす恐怖から電車に乗車することができない。

この広場恐怖症・パニック障害を、VR技術を用いた「曝露(ばくろ)療法」で克服に導こうというのが魔法アプリのソリューションだ。曝露療法とは、患者が恐怖を抱いている物や状況に、危険を伴うことなく対面させて、不安感に慣れさせていく心理療法のこと。

魔法アプリは、VR技術で電車内の状況を再現し、それを体験することで電車に乗る恐怖を克服する曝露療法のソフトウェアを開発。 今後は東京メトロと連携することで、ソフトウェアのブラッシュアップに取り組むとともに、患者向けの治療ワークショップを開催し、社会における広場恐怖症・パニック障害の解消を目指したいという。

具体的な共創プランは、「リアリティの高い地下鉄VR曝露療法システムの共同開発」「電車・地下鉄恐怖症治療ワークショップ」の2つだ。

「リアリティの高い地下鉄VR曝露療法システムの共同開発」では、東京メトロの駅構内、車両、車内音声などをサンプルにしたVR曝露療法システムを開発。現実に近い地下鉄内の状況を再現することで、より効果の高いVR曝露療法を確立する。

「電車・地下鉄恐怖症治療ワークショップ」では、開発したVR曝露療法システムを用いて、地下鉄に特化した治療ワークショップを開催。地下鉄に乗車することができない患者に対して、VR体験や、基礎知識のレクチャー、不安に襲われた際の対処法の講習などを行い、症状の克服・軽減を狙う。治療ワークショップの運営にあたっては、施設や告知などで東京メトロのリソースを活用し、段階的に事業拡大。事業開始から5年後には都内5ヶ所、月40回の開催を目指している。

●ゲシピ株式会社「東京メトロ沿線でのeスポーツジムの運営・裾野拡大に向けたイベント実施」

ゲシピの提案は「eスポーツのジムの運営、イベント実施を通じて東京の魅力・活力を創出する」という共創プランだ。すでに国体の正式種目となり、2028年のロサンゼルスオリンピックでも種目化が検討されているeスポーツ。国内市場は年平均20%の成長が見込まれているほか、政府主導による市場発展の取り組みも推進されているなど、いまや社会的な意義も内包するカルチャーとして認知されつつある。

そうしたなかで、現在eスポーツの課題となっているのが、プレイ施設の不足やプレイヤーの育成問題だ。専門のカフェや学校の部活動への導入など、徐々にプレイ施設は増えつつあるものの、一般のプレイヤーが気軽にeスポーツを練習できる場所はいまだに少ない。カルチャーとしての裾野を広げるためには、プレイ施設の整備や、プレイヤーを育成するトレーナーの確保が急務となっている。

こうした課題を、東京メトロと共同して解決し、eスポーツの普及と東京の魅力・活力の創出を目指す。ゲシピは一般のeスポーツプレイヤー向けのトレーニング事業を展開し、国内最大級のeスポーツコーチングの実績を持つ企業。こうした実績に、東京メトロが有するアセットを掛け合わせ、東京圏を「面」として活性化することを目指すという。

具体的な共創プランは「eスポーツジムの運営」「eスポーツイベントの実施」の2つ。

「eスポーツジムの運営」では、東京メトロの施設を活用してeスポーツジムを運営し、一般のeスポーツプレイヤーに練習の場を提供。プロプレイヤーからの指導やジム生同士の切磋琢磨により、一般プレイヤーの技術力を向上させるのが狙いだ。ジムの利用料は比較的安価な設定とすることで、より気軽にeスポーツに触れ合い、学ぶことができる環境を整備するという。

さらに「eスポーツイベントの実施」により、eスポーツの裾野拡大を促進する。イベントは一般のeスポーツプレイヤーだけでなく、東京メトロの駅近隣住民、沿線住民など幅広い層を対象に実施。初心者向けの体験会や、プロ選手との対戦イベントなどを通して、eスポーツの楽しさを伝え、eスポーツジムの新規会員への誘導を図るという。

そして、この2つの共創プランを並行して実施し、相乗効果的に事業を拡大。将来的には、東京メトロの沿線全域でジム・イベントを展開し、eスポーツの枠組みを超えた東京の魅力・活力の創出につなげるというのがゲシピの提案だ。

柔軟で、面白い共創プランが生まれた。

以上の各社のプレゼンに続いて、今年度から開始された「マッチングプログラム」の発表が行われた。「マッチングプログラム」とは東京メトロ社内で各部から課題を募り、その課題をスタートアップとの共創で解決するという取り組みだ。今年度は東京メトロ社内で業務負担となっている「会議の議事録の作成」を課題として取り上げ、その解決に向けたマッチングを開始した。

その結果、産総研発の音声認識スタートアップ・Hmcomm株式会社との共創を決定。社内用iPadにピンマイクを設置し、リアルタイムで会議の音声を収集、議事録化するアプリケーションを導入し、今後実証実験を行う予定だ。

全てのプレゼンが終了し、今回のプログラムを振り返って、外部アドバイザーでありeiicon company代表の中村が総評を行なった。中村は「まず明確なビジョンがあり、その後にどのようにテクノロジーを組み合わせるか、という視点での提案が多く感動した」とコメントした。

▲eiicon company 事業責任者 中村亜由子

2008年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)入社。 以来、doda編集部、人材紹介事業部法人営業など、HR転職領域に従事。その後、オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」事業を起案・推進。eiicon company の代表/founderを務める。

続いて、外部アドバイザーの西村勇哉氏は「やはり『東京メトロと組む』というポイントが重要。東京メトロという業態だからこそ実現できる価値を、いかに提案の中心に据え、共創パートナーに伝えるのかがこのプログラムの肝だと感じた」と全体を総評した。さらに「私自身、ユーザーとして接するなかで、東京メトロには『お堅い』というイメージがありました。しかし、これだけ面白い共創プランが生まれ、さらにそれを実現しようとする取締役の方々がいるということを知れたのが、一番の収穫でした」とコメントした。

▲NPO法人ミラツク 西村勇哉氏

大阪大学大学院にて人間科学の修士を取得。人材開発ベンチャー企業、公益財団法人日本生産性本部を経て、2008年より開始したダイアログBARの活動を前身に、2011年にNPO法人ミラツクを設立。セクター、職種、領域を超えたイノベーションプラットフォームの構築と、年間30社程度の大手企業の事業創出支援、研究開発プロジェクト立ち上げの支援、未来構想の設計、未来潮流の探索などに取り組む。

審査委員長・古屋氏インタビュー「来年以降も、新たな共創を続けていく」

審査会終了後、昨年から続いて本プログラムの審査員長を務める東京メトロの常務取締役・古屋氏に、4期目となる「Tokyo Metro ACCELERATOR2019」の感想について伺った。

古屋氏は昨年までのプログラムと比較し「今回はよりビジョンが明確なご提案が多かった」と満足そうに話す。その理由について「今年はコンセプトを設定するのに丁寧な議論を重ねたので、我々が何を求めているのかというメッセージが、共創パートナー企業の方々に伝わりやすかったのだと思う」と分析した。

次に、今回採択された魔法アプリの共創プランについて「非常に良い示唆を与えてくれた。これまでは車いすや視覚障がいをお持ちの方々への取組みを進めてきたが、乗車することに心理的な不安をお持ちの方々に対する取組みはできていなかった。 他の鉄道に比べて閉塞感が強い地下鉄を運営する東京メトロだからこそ、取り組まなければならない と思います」と評価した。

さらに、ゲシピの共創プランについては「eスポーツとはかけ離れたイメージの東京メトロが、この共創に取り組めば大きなインパクトになるでしょう。これまでは自宅でテレビゲームに興じていた人々を外に連れ出し、東京圏を『面』として活性化するのは、需要喚起・顧客獲得という意味でも魅力的です」と評価した。

最後に、本プログラムの今後の意気込みを伺うと、古屋氏は次のように語ってくれた。「2019年度から3年間の中期経営計画が始まりました。その柱のひとつが『東京の魅力・活力の共創』です。東京の魅力を引き出し、活力を生むためには、様々なパートナーと共創していかなければいけない。このプログラムはそうした取り組みの象徴的な位置を占めています。ですから、来年以降も意欲的に取り組み、新たな共創を実現していきたいと思っています」。

 

取材後記

東京メトログループの理念は、「東京を走らせる力」。古屋氏の言葉にもあった “都市としての魅力と活力を引き出す”というフレーズも、その理念に込められている。今回、採択された2社のプランはそれぞれ異なったアプローチで東京メトロと共創し、都市を活性化させる可能性を有している。今後、これらのプランがどのように進化していくのか。引き続き、注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太、撮影:加藤武俊)

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