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【TAP Report】 第4期優秀賞 Yper×Connected Designの共創で目指す“再配達のない未来”

【TAP Report】 第4期優秀賞 Yper×Connected Designの共創で目指す“再配達のない未来”

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スタートアップ企業の支援を通じて産業の新陳代謝を促進し、日本経済の再興を図ることを目的にしている、東急アクセラレートプログラム(TAP)。4期目となるDemo Dayが、3月20日にセルリアンタワー東急ホテルにて開かれた。

『優秀賞』に輝いたのは、Yper(イーパー)株式会社が提案した再配達をなくすスマートフォン連動型置き配バッグ「OKIPPA」だ。これに、東急グループのConnected Design株式会社(以下、CDI ※)が提供するスマートホームを組み合わせた共創プロジェクトが着々と進められている。

▲OKIPPAは、置き配バッグとスマホのアプリを連携させたサービス。取り付け工事は必要なく、狭いスペースでもかんたんに設置。配送状況はアプリで確認し、複数の配送業者の情報をまとめて管理できる。

なお、OKIPPAではすでに大手配送会社と都内1000世帯で実証実験を実施。1カ月で6000個もの荷物を受け取り、不在率は51%にも関わらず、再配達を61%削減することに成功。ユーザー満足度も高く、8割の人が及第点の60点以上をつけた。そして、94%の配送員がこれからも使ってほしいと回答している。――今後は2019年夏頃を目処に、OKIPPAとCDIのスマートホームを組み合わせたテストマーケティングを実施予定。東急線沿線のマンションを中心とした集合住宅で実施する予定だ。

今回の記事では、YperとCDIによるTAPを通じた共創プロジェクトの裏側に迫るべく、Yper代表・内山氏とCDI・林田氏、田中氏の3名に話を伺った。

※Connected Design株式会社……ケーブルテレビ事業を始め、暮らしのIoTサービス「インテリジェントホーム」を提供するイッツ・コミュニケーションズ株式会社と、インターネットサービスを提供してきたニフティ株式会社(現・富士通クラウドテクノロジーズ株式会社)、そして東京急行電鉄株式会社のジョイントベンチャーとして、2015年に設立。個人・法人向けIoTサービス用ハードウェアおよびソフトウェアの企画開発、調達および販売を行う。

<写真中> Yper株式会社 代表取締役 内山智晴氏

<写真左> Connected Design株式会社 企画開発部 部長/CPO 林田丈裕氏

<写真右> Connected Design株式会社 事業推進部 田中優里氏 

OKIPPAを使い、そのサービスの革新性に驚く

――まずはCDIさんに、どのような流れでYperさんとの共創に至ったのか。その背景についてお伺いします。

CDI・林田氏 : イッツ・コミュニケーションズと共に、スマートロックやIPカメラなどスマートホームサービスを展開している当社では、事業シナジーを生み出せるような宅配事業関連のスタートアップと組みたいと考えていました。当初は、スマートロックを使って、住人が不在でも荷物を家の中に置くことができる構想を練っていたのですが、上手くまとまらず…。そんなときにYperさんのスマホ連動型置き配バッグ・OKIPPAのプレスリリースを見て、「これは!」と思い、すぐに購入して試しました(笑)。

頑丈な入れ物に荷物を入れるのかと思ったらそうではなく、軽量なバッグの形状で驚きました。さらにOKIPPAは盗難保険が付帯されているのでユーザーは安心できる。――OKIPPAを実際に使ってみて、「こういった割り切りがないと、再配達を減少させるサービスは広がらないな」と思いました。まずは普及させて、カルチャーが根付いた先にスマートロックや安心を担保するIPカメラのようなIoT技術が必要とされるのだなと。そこで、YperさんにTAPを通じてコンタクトを取ろうと思いました。

――YperさんはTAPのことをご存知でしたか?

Yper・内山氏 : TAPの存在は知っていましたが、東急グループ全体で取り組んでいるとは思っていませんでした。最初はプログラムでなくても協業できればいいかなと思っていたのですが、他社のアクセラレーターを経験したときに、プログラム形式の方が動きやすいのは実感していたんです。OKIPPAというまだ確立されてないサービスの場合は、プログラムで柔軟に動けた方がメリットもあるなと考え、TAPに応募を決めました。

――他のプログラムも経験されたとのことですが、TAPならではの“良さ”はどのような点にあると感じますか?

Yper・内山氏 : 東急線沿線という広いエリアをカバーすることができ、かつ幅広い東急のグループ企業とコラボレーションできる部分です。地域という“面”をおさえることで、OKIPPAの配送ソリューションを試験的にでも導入しやすくなりましたね。

議論の中で見えてきた、付加価値を生み出す「ストーリー」

――2018年から共創を始め、お互いどのようにして進めていったのでしょうか。

CDI・林田氏 : まずOKIPPAは、ケーブルテレビのイッツ・コミュニケーションズの営業網を通じて、東急線沿線ユーザーに届けることを主軸に検討しました。それから、ターゲットを「戸建住宅」にするか、「集合住宅」にするかを検討。――集約した形でOKIPPAが設置できれば、配送会社さんのメリットもあるため、集合住宅にフォーカスすることにしたんです。集合住宅ですと、インターネットやケーブルテレビを導入しているマンションオーナーさんとの繋がりがあって、サービスの説明もしやすくなるというメリットもあります。

さらに、当社が提供するスマートロックを全戸導入している集合住宅の80%は宅配ボックスが設置されておらず、市場調査から見ても置き配機能にニーズがあるはずだと考えました。そこで、OKIPPAとスマートロックを一つのサービスにしてはどうかと。加えて、サービスを使うために必要なOKIPPAのアプリも活用しようということになりました。そんな時に出てきたのが、転居の際の入退去情報が追えないというケーブルテレビ事業者が抱える営業機会損失の課題です。たとえば、OKIPPAアプリを通じて配送拠点が変わったことを検知できれば、その部屋は空室であり、次の入居者が控えていることが分かるようになります。

CDI・田中氏 : アプリによって転居の際の入退去情報を追うことができるのは、このサービスの大きな付加価値になったと思っています。

――OKIPPA×スマートロックで一つのサービスにし、アプリによって転居時の情報まで管理できるようにしたわけですね。ここまでの共創で、問題点などはなかったのでしょうか。

Yper・内山氏 : 難しいと思ったのが、スマートロックとOKIPPAは親和性が高いようで、そうでもなかったこと(笑)。OKIPPAはバッグ式宅配ボックスを玄関先につるして、荷物を受け取るというアナログなサービス。IoTであるスマートロックが目指す世界観とズレがありました。しかし、議論していく中で先程お話しした、転居の際の入退去情報が追えないという課題をアプリで解決できるという発見があったのです。今まで考えていなかったビジネスモデルを作ることができ、しかもTAPによって地域に広く提供できる環境もありました。

CDI・林田氏 : マンションオーナーの方に、OKIPPAだけでスマートロックはいらないと言われたら厳しいなと…。当社としては、収益を得ることができなくなりますから。そんな行き詰まりの中で、転居時の情報まで追えるというストーリーが見えたのは、大きな発見でした。

――今後、サービスをどのようにスケールさせていく予定ですか。

CDI・林田氏 : テストマーケティングは今年の夏頃に実施できればと考えています。集合住宅に向けて営業をかけ、マンションオーナーからのリアクションや入居者がどれくらい設置するか数字を取っていきます。そこから月額いくらで提供するのか、このビジネスモデルで成り立つかを検討していく予定です。また、サービスの紹介を不動産屋さんに依頼するなど、様々な方向性を考えていきます。

Yper・内山氏 : 6月からOKIPPAの量産体制も整うので、Yperではアプリをどんどんアップデートさせていきます。OKIPPAシステムにはオートロックマンションのエントランスを安全に解錠できる認証機能があるのでそれを応用し、スマートロックとの連携でクリーニングや洗濯物の玄関内配送、家事代行を希望するユーザーには作業員が家の中に入れるような、OKIPPAだけでなく生活に関わるあらゆるサービスを提供できるようにしていきます。

優秀賞を獲ったことで、協業がスムーズになっていく。

――優秀賞を獲ったことで社内外からの反響はありましたか?

Yper・内山氏 : 優秀賞を獲れるとは、正直思わなかった(笑)。プレゼン資料も発表直前まで作成して、やっと完成したくらいですから。しかし、DemoDay後は、周りが優秀賞を獲ったのを知っていて。やっぱりTAPは知名度あるなと実感しました。

CDI・林田氏 : TAPで優秀賞を獲ったことは、東急グループの経営層にもOKKIPAの印象を強く残せたと感じています。優秀賞を獲得したことで、協業がスムーズに進むのではと期待しています。

CDI・田中氏 : 東急グループ内でも評判になっていたと耳にしましたね。うちは小さい会社なので、グループ内で取り組みの知名度を上げるのも大変ですので、TAPでアピールできてよかったです。

――Yperさんとしては、今後の展開も考えていますか。

Yper・内山氏 : 東急グループには、不動産事業もありますし、リテール事業もあります。OKIPPAは、東急グループ内の多様なニーズに応えられる可能性があるなと思っています。

▲3/20に開催された「東急アクセラレートプログラム2018」Demo Dayで最優秀賞を受賞したYper×CDI。

スタートアップとの共創が、東急の文化になっている。

――今回の共創を通じて、これから実現させていきたい世界観をお聞かせください。

Yper・内山氏 : やはり、再配達を少なくする社会を作り上げていきたいですね。再配達ゼロは難しいですが、そこに近づけていきます。再配達は届ける人も、受け取る人もストレスになる。マンションオーナーにとっても悩みの種。もはや地域のストレスと言っても過言ではありません。これを軽減させれば、さらに魅力的な地域になると思っています。そうすれば、引っ越しの際も、次も東急線沿線をに住みたいと思ってもらえると信じております。そういった地域づくりに少しでも貢献できればと思っています。

――最後に、TAPへの応募を検討しているスタートアップに一言お願いします。

CDI・林田氏 : TAPは2019年度で5期目に突入しました。これまでの経験から、スタートアップとどう取り組むべきか、大企業側が歩みを合わせることも必要だという認識もあります。東急グループ内での理解が進み、非常に取り組みやすいプログラムになってきました。

Yper・内山氏 : TAPを通じて、サービスやプロダクトの議論を深めていくことができます。そのおかげで、今回のような転居後の情報を追えるようなアプリのアイデアが生まれ、新しいビジネスモデルを構築する可能性が出てきました。さらに、その発見を発展させるリソースや環境もあります。試しに応募して議論するだけでも、サービスやプロダクトに広がりができるかもしれません。

CDI・田中氏 : 今回、私はTAPに初めて参加したのですが、東急グループ内の規模の大きな企業でも柔軟に対応し、推進力を持って進めているなと感じることが多くありました。グループ各社に勢いがあって、いいライバル関係を保ちつつ、プログラムに取り組んでいます。「いいソリューションは、東急から始めたい」という強い気持ちがあります。東急の街づくりに必要なアイデアを、これからもお待ちしています。

取材後記

どんなに優れたサービスやプロダクトであっても、数多くの改良を重ね、やっとの思いでリリースまで辿り着いている。Yper×CDIも議論を重ねたからこそ、アプリによって転居の際の入退去情報を管理するというアイデアが発見でき、プロジェクトがドライブしていった。多様なパートナー企業と共創を続けてきたTAPだからこそ、プロジェクトを熟成させるノウハウを持っているという、何よりの証だ。優れたサービスやプロダクトがあるのに、上手く軌道に乗らない。そのような悩みを抱える企業にとって、TAPは飛躍のチャンスになることを今回の共創が示している。

(構成・取材・文:眞田 幸剛、撮影:齊木恵太)

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