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富士通 | プログラム開始から4年目。ベンチャー支援を”リブランディング”した理由とは?

富士通 | プログラム開始から4年目。ベンチャー支援を”リブランディング”した理由とは?

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イノベーションリーダーズサミット実行委員会と経済産業省の共同調査による「イノベーティブ大企業ランキング 2018」。ベンチャー連携を通じたオープンイノベーションに積極的に取り組んでいる大企業を評価する同ランキングで4位に輝いた富士通。同社内でスタートアップとの窓口的な役割を担い、各事業とのオープンイノベーションを推進しているのが、ベンチャー協業支援チームが手がける富士通のベンチャープログラムだ。

このプログラムでは、2015年からアクセラレータプログラム(富士通アクセラレータプログラム)を運営しており、現在までに第6期(2018年5月〜2019年1月)を実施。第6期のピッチコンテストは、電子薬歴システム「Musubi」を提供する”カケハシ”が最優秀賞を獲得。また、KYC/本人確認に関連する様々なAPI を手がける”TRUSTDOCK”と、無線通信技術を核とした東大発ベンチャー・”ソナス”の2社が優秀賞を獲得している。

プログラムを通じたスタートアップとの協業検討はすでに100社を越え、協業実績は約50社にのぼった。――そして、第7期のアクセラレータプログラム開催を目前に迫った今、ブランドを大幅に刷新することが決定。ブランドネームを「FUJITSU ACCELERATOR」に変更するとともに、ロゴデザインを新たに加えた。

このリブランディングをデザイン面から支えたのが、志水新氏だ。志水氏は学生時代に「OTON GLASS」の創業に関わり、富士通入社後に自ら手を挙げてベンチャー協業支援チームに加わった。“デザイン思考”などが注目される中、スタートアップの創業や新事業創出にデザイナーが関わるケースも増え、一つのトレンドになっている。今回のリブランディング自体が、そのトレンドを体現していると言えるだろう。

プログラムのブランド刷新にかける想いをプログラム運営責任者である山田氏、志水氏の両名に話を聞いた。

▲富士通株式会社 執行役員 グローバルマーケティンググループ長 兼 マーケティング戦略本部長 兼 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 副本部長 山田厳英氏

富士通入社後、システムエンジニアや営業を経験した後、北海道、九州の支社長を務め、2017年からマーケティングの責任者として、富士通のスタートアップ協業を牽引している。

▲富士通デザイン株式会社 サービスインテグレーションデザイングループ デザイナー/ベンチャー協業支援チーム デザインパートナー 志水 新氏

大学でプロダクトデザインを学び、大学院ではインタラクションデザインを専攻。在学中に、文字を読み上げるスマートグラス「OTON GLASS」の創業に携わる。デザインファーム「Takram」でのインターンを経て、富士通に入社し、デザイナーとして手腕を振るう。2017年から、ベンチャー協業支援チームにデザインパートナーとして参画する。

これまでとは違うアプローチをするために。

――富士通さんは「イノベーティブ大企業ランキング 2018」でも高い位置につけ、スタートアップとの連携を推進するプログラムも認知が広まっているように感じています。そのような中、なぜプログラムのリブランディングを手がけたのか。まず、その背景をお聞かせください。

山田氏 : 確かに、イノベーティブ大企業ランキングでは4位に入り、それは名誉なことだと思っています。しかしながら、まだまだスタートアップのみなさんに対して、私たち富士通が”共創パートナー”であることの魅力が十分に伝わっているとは言えません。「富士通アクセラレータプログラム」も第6期まで開催していますが、同じことをただ単に繰り返すのではなく、新しい息吹も込めていく必要があります。そのための一つの施策として、今回のリブランディングの話が上がってきました。その中心になって活躍してくれたのが、志水さんです。

――志水さんは、富士通のインハウスデザイナーなんですよね。

山田氏 : そうですね。あまり認知されていないかもしれませんが、実は富士通社内には約300名のデザイナーが在籍しているんです。

――なるほど。志水さんは大学院在籍時にスタートアップである「OTON GLASS」の創業に携わった経験などを経て、富士通にご入社されていますね。

志水氏 : はい。スタートアップ創業やデザインファームのインターンなどを経験し、大企業でのインハウスデザイナーに興味を持ち、富士通に入社しました。入社後は各事業やクライアント企業のサービス・プロダクトなどのデザインを手がけている一方で、ベンチャー支援活動を知りました。富士通がベンチャー支援を積極的に手がけているのに、クリエイティブの要素が入っていない。そこに、私のスキルや経験が活かせるかもしれないと思いました。

――デザイン面からベンチャーを支援することに興味を持ったキッカケは何ですか?

志水氏 : 2つあります。1つ目は、私が「OTON GLASS」というスタートアップの創業に携わった経験があったこと。2つ目は、数年前から欧米ではVCやインキュベーターなどによるスタートアップや事業開発に対するデザイン支援が一つのトレンドになっていることです。デザインの役割に関しては、富士通という大企業においても、確立されたナレッジやデザインプログラムはありません。ですので、私のスキルや経験を活かしてデザイン支援できないかと考えていました。

そこでベンチャー協業支援チームに自ら声を掛け、チームに参画。2017年からデザインパートナーを兼務しながら、インバウンドサービスやモビリティのスタートアップととの協業プロジェクトを手がけ、2018年からはこの活動のリブランディングにも着手しています。

パートナーを招き入れることを表現した新ロゴに込めた想い

――今回のリブランディングを手がけるにあたって、どのような課題感がありましたか?

志水氏 : ベンチャー支援チームのメンバーが持つ熱量と、社外からの見られ方に大きなギャップがあることが課題だと感じていました。メンバーは自ら手を挙げてチームの一員になった主体性・積極性のある方々ばかり。本当に熱量が高く、「日本のスタートアップと共にエコシステムを作りたい」「共にムーブメントを作っていきたい」という大きなビジョンを持っています。一方で、社外のスタートアップからは、「大手企業のベンチャー協業はどこも同じ」という印象を持たれるケースも少なくありません。

――なるほど。

志水氏 : リブランディングに向けて、代表とメンバーに対してヒアリングを重ね、FUJITSU ACCELERATORのメインコピーとリード文、世界観を作成した後、100〜200ほどのロゴ案を検討しました。最終的に決定したのがこちらのデザインです。

富士通の文化を受け継ぐ形でテーマカラーは赤にし、パートナーを招き入れる余白を示す「_(underline)」をモチーフにしています。ロゴを構成する5×5の赤いビットは、FUJITSU ACCELERATORにまつわるさまざまなシーンでサインや装飾として展開していく予定です。これからの時代を創るスタートアップと富士通が協業し、ビジネスを急成長させていく活動主体として相応しいロゴになるようにデザインしました。

――山田さんはこの新しいデザインを見て、どのように感じましたか?

山田氏 : 富士通の「F」が逆立ちしているようにも見えますし、色づかいも従来と比べて赤と白を反転させている。これまでとは違うアプローチ方法でベンチャー支援を進めていくという強い意識を感じるデザインだと思いましたね。いい感じだな、と(笑) 

志水さんが多くの案を作ってくれて、メンバーからは「コレがいい!」というすごい圧があったんですよ(笑)。それほどメンバーも愛着を抱いているデザインと言えますね。このロゴが、富士通のもう一つの顔になっていくことで、スタートアップとの接点をますます増やしていきたいと思います。

第7期プログラムは、デザインや知財支援を強化。グローバルにも注目。

――「富士通アクセラレータプログラム」は2018年11月26日から第7期の募集を開始します。ブランド刷新に加えて、プログラム内容の刷新もあるのでしょうか?

山田氏 : 第7期については、デザイン支援と知財面の支援をメニューに加えます。志水さんがチームに加わったことでデザイン支援が強化され、それをきちんとメニュー化する予定です。戦略としてのデザインの重要性は年々高まっていますからね。さらに、富士通社内の知財担当からも「一緒に何かやりたい」という声があがり、協力してもらうことになりました。

――知財に関するノウハウを有しているスタートアップはなかなか無いと思います。スタートアップとしてはとても心強い支援になりますね。では最後に、山田さんからスタートアップのみなさんへのメッセージをお願いします。

山田氏 : AIやIoTなどが注力分野になりますが、グローバルも強化していきたいと思っています。先日もベンチャー協業支援チームのメンバーがヨーロッパで開催された「Web Summit」に参加していますが、シリコンバレー以外のエリアにもアプローチしていきたいと考えています。今回、リブランディングを行なったことで気持ちを新たにし、スタートアップのみなさんに魅力的な価値提供を行い、事業創造をしていきたいと思います。

取材後記

2015年にアクセラレータプログラムをスタートさせ2018年11月には第7期を迎えるなど、継続的にスタートアップ支援に取り組んできた富士通。山田氏が話したように、来年からはデザイン・知財面の支援もメニューに加えるなど、リブランディングに伴ってプログラムも進化・発展している。さらに、以前にも取材したように、ベンチャー支援チームの熱量高いメンバー陣も魅力の一つだ。大企業と共創したいと考えているスタートアップにとって、富士通は大きな価値を得るパートナーとなり得るだろう。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:古林洋平)

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