ピクシーダストテクノロジーズ×明電舎、変圧器の騒音課題に挑む共同研究を開始――メタマテリアル技術で静かな社会インフラ実現へ
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社と、電力・社会インフラ機器メーカーの明電舎は、変圧器の振動・騒音抑制を目的とした共同研究開発を開始した。PxDTが開発する音響制御技術「iwasemi」を活用し、変圧器の静粛性向上と設備寿命の延伸を目指す。両社は研究成果について共同で特許出願を行う予定で、「音」と「振動」に着目した新たなインフラ技術の創出を推進する。
電力インフラの陰にある「騒音問題」
変圧器は発電所や変電所、工場、商業施設などに設置され、電力供給を支える重要な設備だ。しかし、その稼働時には磁気振動などに起因する騒音や振動が発生し、とりわけ住宅地に近接する施設では周辺環境への影響が課題となっている。
近年は再生可能エネルギーの普及や電化の進展、データセンター需要の増加などを背景に電力設備の増設が進んでおり、変圧器に対しても高性能化だけでなく、環境負荷の低減や静粛性への要求が高まっている。
こうした状況を受け、明電舎は新たな騒音対策技術としてPxDTの音響制御技術「iwasemi」に着目。従来の防振材や遮音対策とは異なるアプローチによる課題解決を目指し、共同研究開発に踏み切った。
特定周波数を狙って抑える「iwasemi」の技術力
今回の取り組みの中核となる「iwasemi」は、PxDTが独自に開発したメタマテリアルベースの音響制御技術だ。
メタマテリアルとは、素材そのものではなく構造設計によって特殊な機能を実現する技術のこと。PxDTは計算機科学と波動制御技術を組み合わせることで、従来の吸音材や防振材では難しかった特定の周波数帯域の音や振動を効率的に制御できる技術を開発している。
今回の研究では、この技術を変圧器向けに応用。変圧器特有の振動周波数に合わせた「メタマテリアル材」を設計し、振動や騒音をピンポイントで抑制することを目指す。
従来の騒音対策では、防音壁の設置や重量のある防振材の追加などが一般的だったが、「iwasemi」を活用することで、より効率的かつ省スペースな対策が期待される。
静粛性だけでなく設備寿命の向上にも期待
今回の研究開発は、単に騒音を低減するだけではない。
設備に発生する振動は、長期的には部品の劣化や故障リスクにもつながるため、振動抑制によって機器の耐用年数延長や保守コストの削減にも寄与する可能性がある。
社会インフラ設備は長期間にわたる安定稼働が求められるため、静粛性と信頼性を同時に高める技術として注目されそうだ。
両社は共同研究で得られた知見を基に製品化を進め、将来的には変圧器以外の電力設備や産業機器への展開も視野に入れている。
「音」の課題解決から持続可能な社会インフラへ
PxDTは、落合陽一氏らが率いるディープテック企業として、音や光などの波動制御技術を活用した製品開発を進めている。「iwasemi」についてもオフィスや建築、工事現場、自動車、家電など幅広い用途への展開を想定しており、社会全体の音環境改善を目指している。
一方、創業から120年以上の歴史を持つ明電舎は、発電機や変圧器、配電設備などを通じて日本の電力インフラを支えてきた。近年は再生可能エネルギーや省エネルギー分野にも注力しており、持続可能な社会の実現に向けた技術開発を推進している。
電力需要の増加と都市環境への配慮が同時に求められる中、今回の共同研究は「音」と「振動」というこれまで見過ごされがちだった課題に新たな解決策を提示する試みといえる。両社は今後、メタマテリアル材の実用化を通じて、より静かで快適な社会インフラの実現を目指していく。
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(TOMORUBA編集部)