ARグラスで観劇のバリアフリー化へ jig.jp×Palabra、字幕を視界に表示する共同実証を開始
株式会社jig.jpは、文化芸術分野における鑑賞サポート事業を手掛けるPalabra株式会社と共同で、スマート眼鏡(ARグラス)「SABERA(サベラ)」を活用した観劇・映画鑑賞のバリアフリー支援に向けた共同実証実験を開始した。聴覚に障害のある人を対象に、字幕を視界内へ直接表示することで、より自然で没入感の高い鑑賞体験の実現を目指す。
手元端末から視界表示へ 観劇体験の新たな選択肢を提案
近年、映画館や劇場では、タブレット端末などを活用した字幕表示によるバリアフリー鑑賞の取り組みが進んでいる。一方で、利用者からは「舞台と字幕を交互に見る必要がある」「首や目への負担が大きい」といった課題も指摘されてきた。
今回の取り組みでは、jig.jpが開発するARグラス「SABERA」のディスプレイに字幕情報を表示。利用者は視線を大きく動かすことなく、舞台やスクリーンを見ながら字幕を確認できるようになる。
これにより、従来の字幕表示手法と比べて視線移動を最小限に抑え、作品への集中度や没入感の向上が期待される。また、「SABERA」は日常利用を前提に設計された軽量モデルであり、長時間装着しても負担が少ない点が特徴。観劇や映画鑑賞といった長時間の利用シーンとの親和性も高いという。
シェイクスピア作品『リア王』で初回実証を実施
共同実証の第一弾として、埼玉県さいたま市の彩の国さいたま芸術劇場で上演された彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.3『リア王』において実証実験を実施した。
実証では、Palabraが提供する舞台向けリアルタイム字幕配信システム「UDCast LIVE」と「SABERA」を連携。観劇中に必要な字幕情報をARグラス上へ表示し、手元端末を使用しない新たな鑑賞体験の検証を行った。
検証の結果、利用者からは「視線を自然に保ったまま舞台に集中できる」「字幕によって没入感が妨げられない」といった評価が寄せられ、実用化に向けた一定の手応えを得たとしている。
当事者からも高評価 「初めて舞台を見るような新鮮な体験」
実証実験に参加した聴覚障害者からは、従来の鑑賞環境との違いを評価する声が上がった。
体験者の一人は、「まるで子どもが初めて舞台を見るような新鮮な経験だった。演技や演者の表情までしっかり見ることができた」とコメント。
また別の参加者は、「これまでの字幕タブレットは舞台と手元を行き来する必要があり疲労を感じていたが、スマート眼鏡では視線を大きく動かさず作品に集中できる。見た目以上に軽く、普及してほしい」と語った。
観劇における情報保障のあり方を、テクノロジーによって大きく進化させる可能性を示した形だ。
「特別な支援」から「自由に選べる体験」へ
jig.jp代表取締役社長CEOの川股将氏は、「SABERAは日常に溶け込む軽さと快適さを追求している。Palabraとの協働を通じて、誰もがエンターテインメントを楽しめる環境づくりに貢献したい」とコメントした。
一方、Palabra代表取締役社長の山上庄子氏は、「UDCastは今年でサービス開始10周年を迎える。SABERAとの連携により、字幕の可能性が大きく広がることを確信している。鑑賞サポートを『特別なサポート』ではなく、『自由に選択できるもの』へ進化させたい」と期待を寄せた。
映画館や劇場へ展開 アクセシブルな文化体験の実現を目指す
今後両社は、映画館や劇場、バリアフリー上映イベントなどで実証実験を順次拡大する予定だ。
映画向け字幕・音声ガイドアプリ「UDCast MOVIE」や、舞台向けリアルタイム字幕配信システム「UDCast LIVE」との連携を視野に入れながら、字幕の見え方や文字の可読性、装着感などに関するデータを収集。実用化に向けた改良を進めていく。
高齢化や多様性への対応が求められる中、文化芸術分野におけるアクセシビリティ向上は重要なテーマとなっている。今回の取り組みは、ARグラスという新たなインターフェースを活用し、「誰もが同じように作品を楽しめる環境づくり」に挑む事例として注目を集めそうだ。
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(TOMORUBA編集部)