IGアリーナ・名城エリアで「笑顔」を寄付に変える実証実験を実施 スポーツを起点としたウェルビーイング循環モデルを検証
愛知県とあいちスポーツイノベーションコンソーシアムAiSIAは、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、株式会社R-proなどと連携し、「笑顔」を寄付へと変換するシステム「スマイラル」を活用した実証実験「Smile Economy PROJECT」を実施した。実証では、IGアリーナおよび名城エリアを舞台に、来場者の笑顔をAIで検知し、その数に応じて寄付金を積み上げる取り組みを展開。検証期間中には17,828件の笑顔が検知され、89,140円の寄付金が創出された。
今回の取り組みは、スポーツ観戦や地域イベントを通じて生まれるポジティブな感情を可視化し、社会貢献へとつなげる新たな仕組みの可能性を検証するものだ。単なる募金活動ではなく、人々の幸福感そのものを社会価値へ転換する試みとして注目を集めた。
AIが笑顔を認識 「1笑顔=1円」の寄付を実現
本プロジェクトで活用された「スマイラル」は、「笑顔が寄付に変わる」をコンセプトとするシステムである。防犯カメラなどに搭載されたITセンサーや画像認識技術を活用し、人々の笑顔を検知。その結果をもとに寄付金額を算出する仕組みだ。
従来、防犯カメラは犯罪防止や安全管理を目的として利用されるケースが大半だった。一方、スマイラルでは同様のセンシング技術を「しあわせの可視化」に活用する点が特徴となる。笑顔を社会的価値として捉え、それを寄付へと変換することで、「一人ひとりが幸せであればあるほど社会が良くなっていく」という考え方の実現を目指している。
今回のSmile Economy PROJECTでは、カメラ機能とAR技術を組み合わせたスマイラルを導入し、スポーツ観戦の場で自然に生まれる笑顔を収集。参加者は特別な手続きを行うことなく、笑顔を見せることで社会貢献に参加できる仕組みが構築された。
IGアリーナと周辺エリアを舞台に実証
実証実験は2026年1月19日から25日にかけて実施された。メイン会場となったのは、1月24日・25日にIGアリーナで開催された名古屋ダイヤモンドドルフィンズ対シーホース三河戦である。
実験では、試合会場だけでなく周辺地域も含めた計3エリアにスマイラルを設置した。
具体的には、アリーナ近隣の商業施設周辺への常設設置、IGアリーナ内センターハングビジョンを活用した笑顔検知、さらに場外イベントスペースでの笑顔認識型アクティビティなどを展開。観戦客だけでなく、周辺施設を訪れる人々も参加できる設計とした。
スポーツ観戦の高揚感やイベント体験によって生まれる笑顔を街全体で収集し、その効果を検証した点が今回の特徴だ。なお、HEATエリアとFUSIONエリアでの実施は1月24日のみとなり、25日は悪天候のため一部企画が中止された。
目標を大幅に上回る寄付金額を創出
検証期間中に検知された笑顔の数は17,828スマイルとなった。事前に設定された目標達成率は60%となったものの、寄付金額は89,140円に達し、目標達成率297%を記録した。
これは単純に笑顔数と同額の寄付ではなく、協賛や企画設計による寄付換算の仕組みが組み合わされていたためとみられる。結果として、多くの来場者が楽しみながら社会貢献活動に参加し、当初想定を大きく上回る支援金を創出する成果につながった。
スポーツイベントの盛り上がりと社会貢献を結び付ける新たなモデルとして、一定の有効性が確認された形だ。
集まった寄付は障がい者スポーツ支援へ活用
本プロジェクトで集まった寄付金は、名古屋ダイヤモンドドルフィンズが推進する社会的責任活動「Dolphins Smile」の一環として活用された。
具体的には、4月18日・19日に開催された前座試合へ参加した愛知FIDバスケットボール連盟所属選手への応援グッズ提供に充当された。FIDバスケットボールは知的障がい者を対象とした競技であり、今回の寄付は障がい者スポーツ振興への支援につながっている。
寄付金の用途を地域スポーツコミュニティへ還元することで、笑顔から生まれた支援が再び新たな笑顔を生む循環の創出を目指している。
スポーツとテクノロジーで地域課題解決へ
近年、スポーツチームには競技成績だけでなく、地域社会との共生や社会課題解決への貢献が求められている。名古屋ダイヤモンドドルフィンズも「Planet」「People」「Peace」の3分野を軸とする「オフコートの3P」を掲げ、社会的責任活動「Dolphins Smile」を推進している。
今回のSmile Economy PROJECTは、その取り組みを象徴する事例の一つといえる。AIやセンシング技術といった先端テクノロジーを活用しながら、人々の幸福感やコミュニティ形成といった定量化が難しい価値を可視化し、社会貢献へ結び付ける挑戦だからだ。
スポーツが生み出す熱狂や感動を地域全体のウェルビーイング向上につなげる試みとして、今後は他地域や他競技への展開も期待される。名古屋ダイヤモンドドルフィンズは今後も地域住民や関係団体と連携しながら、スポーツの力を活用した持続可能なまちづくりを推進していく方針だ。
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(TOMORUBA編集部)