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東京都内の中小企業が挑むOIプログラム「Change」インタビューVOL.3<環境・アップサイクル編>――ホスト企業3社(ファイン、サキュレ、ESSH)が共創を通じて実現したい新規事業とは

東京都内の中小企業が挑むOIプログラム「Change」インタビューVOL.3<環境・アップサイクル編>――ホスト企業3社(ファイン、サキュレ、ESSH)が共創を通じて実現したい新規事業とは

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公益財団法人東京都中小企業振興公社は、都内中小企業の企業変革力の向上を目的に、自社変革に向けた戦略立案から計画の策定・実行までを最長3年間にわたって伴走支援する「サプライチェーン強化等に向けた企業変革促進事業」を推進中だ。

同事業の一環として、都内の中小企業が他の中小企業やスタートアップとの共創によって新製品・サービスの事業化を目指すオープンイノベーションプログラム「TOKYO SME OPEN INNOVATION PROGRAM「Change」」(以下、本プログラム)を開始。都内中小企業9社がホスト企業となり、各社が掲げるテーマに基づき、パートナー企業を募集している。

そこで今回TOMORUBAでは、本プログラムのパートナー企業の募集開始に先立ち、ホスト企業9社への取材を実施。全3回のシリーズ企画として、各社が抱える課題意識や共創テーマ、実現したい未来などについて紹介していく。

第3弾となる本記事では、「環境・アップサイクル」をテーマに参画するホスト企業3社(ファイン、サキュレ、ESSH)へのインタビューの模様をお届けする。

【ファイン】 「“歯ブラシの駆け込み寺”として、社会に必要とされるものづくりを」

ベビー用品、介護用品、複合樹脂開発――。ファイン株式会社は、“歯ブラシメーカー”という枠に収まらない独自の商品開発を続けている。同社が重視するのは、「不便を便利に、不安を安心にするお手伝い」という思想。大量生産ではなく、困っている人を起点にしたものづくりだ。今回のプログラムでは、歯ブラシ製造で培った“アイある視点”で「食事」を支える新サービスの共創を目指す。

▲【左】ファイン株式会社 営業 歯ブラシデザイナー 曲尾健一氏、【右】ファイン株式会社 代表取締役社長 清水直子氏

――事業内容と特徴について教えてください。

ファイン・曲尾氏 : 私たちは歯ブラシメーカーですが、それに派生するさまざまな製品を企画・開発・製造しています。「Made in Japan」ではなく「Made in Fine」を目指している会社です。我々の特徴は開発の仕方だと思います。

ファイン・清水氏 : 当社では、いわゆる“マス市場”をターゲットにはしていません。むしろ、ベビー用品や介護用品といったニッチな分野に注力しています。その理由は、まさにそうした領域にこそ、真に助けを必要としている方々がいらっしゃるからです。

――印象的だった商品開発事例はありますか。

ファイン・曲尾氏 : 片麻痺の方向けの入れ歯用ブラシですね。通常、入れ歯洗浄は両手が必要ですが、片手でも磨けるよう、置き型ブラシを開発しました。流水を流しながら、上から押し当てて回すだけで洗える。さらに、ご家族にも渡しやすいよう、パッケージもお菓子のようなデザインにしています。

――今回のプログラムに参加した理由を教えてください。

ファイン・曲尾氏 : やはり、単独ではできない領域に挑戦したかったからです。今後は、単に高機能な歯ブラシを製造して流通させるだけでなく、EC化などの市場環境の変化に対応した『この商品でなければならない理由(体験価値)』を提供していく必要があります。だからこそ、異業種との掛け合わせによって新たな価値を創造したいと感じていました。

――今回の共創テーマについて教えてください。

ファイン・曲尾氏 : 1つ目は、「口内の健康を可視化する予防・未病医療ソリューション」です。医療機関やメディカル企業と連携しながら、家庭での口腔ケアをアップデートしたいと考えています。

2つ目は、「素材に新しい機能を宿す高機能素材開発」です。私たちは、木くずや野菜くず、カカオ殻など未利用資源を樹脂に混ぜ、新しい素材を作っています。カカオ殻は本当にチョコレートの香りがするのです。サステナブルは、今や当たり前になっていますが、それだけでは選ばれない。だからこそ、香りや質感など、感性的な価値を持つ素材を作りたいと思っています。

3つ目のテーマは「楽しく・食べる」を支える製品開発です。 歯磨きと“食べる”は、本来つながっています。食育や発達とも密接に関係している。だから、食品メーカーや飲食業界の企業と一緒に、“食べる”と“磨く”をつなぐ商品・サービスを作りたいと思っています。

――パートナー企業に提供できるアセットについて教えてください。

ファイン・曲尾氏 : 私たちの最大の強みは、アイデア段階から製品化までを一気通貫で実現できる開発体制です。一般的には、素材メーカー、製品メーカー、デザイナー、金型メーカーなど複数のプレイヤーが関わりますが、当社では各社と連携して、企画、設計、試作、素材開発、量産までをワンストップで進めることができます。パートナー企業が持つ技術やアイデアを、実際の製品として形にできることが大きなアセットだと考えています。

――最後に、応募を検討している企業へのメッセージをお願いします。

ファイン・清水氏 : 社会に役立つものづくりを、本気で考えている企業と取り組みたいと考えています。私たちの理念に、「真ん中にアイがある」を掲げています。相手を思いやる気持ちがなければ、本当に良い商品やサービスは生まれない。私たちはその価値観を大切にしています。短期的な成果だけを追うのではなく、お互いに学び合いながら長く価値を育てていけるパートナーと出会えたら嬉しいです。

【サキュレ】 「業界の社会的地位を変える」――100億円企業を目指す挑戦

株式会社サキュレは東京23区の一般廃棄物収集運搬許可を保有し、運送業と産業廃棄物事業を展開している。エッセンシャルワーカーとして社会を支えながらも、人材不足や低い社会的評価という課題に直面している。背景にあるのは、業界そのものを変えたいという強い想いだ。 今回のプログラムでは、23区全域の物流網と希少なライセンスを解放し、現場のリアルから「業界標準」の社会課題解決策の共創を目指す。

【左】株式会社サキュレ 代表取締役 宇都宮基行氏

【右】株式会社サキュレ 村田捷樹氏 

――事業内容と特徴について教えてください。

サキュレ・宇都宮氏 : 大田区に本社を構え、運送業と産業廃棄物業を行っています。従業員は約100名、車両も多数保有しています。特徴としては、東京23区の一般廃棄物収集運搬許可を持っている点です。この許可は実は新規取得が非常に難しく、基本的に新規発行をしていません。そのため、かなり希少性があります。

――今回のプログラムに参加した理由を教えてください。

サキュレ・宇都宮氏 : 業界の一番の課題は人材難です。でも、この根本原因は、社会的地位の低さだと思っています。運送も産廃も、社会になくてはならない仕事です。様々な事業やサービスが危機に陥ったコロナ禍でも、当社の事業が止まることはありませんでした。しかし、労働環境や事故リスクといった側面から、固定観念や旧来のイメージを持たれがちな側面もあります。だからこそ、利益率を高めて新しい事業を創出し、働く人たちにしっかりと還元できる魅力的な業界に変えていきたいと考えています。

――今回の共創テーマ、具体的な共創イメージ、パートナー企業像について教えてください。

サキュレ・村田氏 : はい。私は入社半年なのですが、「どうやったら当社の利益率を改善できるか」を考え続けてきました。例えば、回収している家電。今は廃棄しているものも多いのですが、本来は有価物。そのようなものを再流通できれば、大きな価値になります。

具体的な事業としてはまずは学生向けの家電レンタルを考えており、冷蔵庫・洗濯機・電子レンジの3点セットを想定しています。将来的には、新卒社会人向けのハイグレードプランにも広げたい。ただ、私たちは中古品販売のサプライチェーンやレンタル運営の実務ノウハウにおいて、まだ発展途上の段階です。だからこそ、その領域に高い専門性を持つパートナー企業とタッグを組み、お互いの強みを掛け合わせたいと思っています。

サキュレ・宇都宮氏 : 私は今回のプログラムにおいて、「離職防止と安全管理を両立するドライバー特化型の「安全×つながり×報酬」システムの創出」というテーマと、「パッカー車の爆発事故を未然に防ぐ。リチウム蓄電池の混入を検知するシステムの共同開発」というテーマを担当しています。

まず、ドライバーは個人作業が多くて孤独になりがちです。アルコールチェックや安全確認も、どうしてもマンネリ化する。そこで、安全クイズや社内掲示板、ポイント制度などを組み合わせて、安全とエンゲージメントを両立したいと考えています。

また、リチウムイオン電池の問題は本当に深刻です。年間約140件の爆発事故が発生していて、当社でも3台のパッカー車が発火被害に遭いました。電子タバコや小型扇風機などに使われているリチウム電池が可燃ゴミに混ざることで、圧縮時に発火します。現在は自治体の啓蒙活動のみにとどまっているので、その改善に取り組みたいと考えています。

▲サキュレでは数多くのパッカー車を所有。廃棄物処理事業を手がけている。

――パートナー企業に提供できるアセットについても教えてください。

サキュレ・宇都宮氏 : 私たちは23区全域で収集運搬業務を行うことができるため、日々さまざまな廃棄物やリユース可能な資源に接しています。こうした現場接点そのものが、新たな事業創出の源泉になると考えています。

また、実際の運送・回収オペレーションを活用した実証実験が可能です。例えば、リユース家電事業であれば回収から配送までの物流網を提供できますし、ドライバー向けシステムであれば実際の現場で検証できます。リチウムイオン電池の検知技術についても、パッカー車の運行環境そのものをPoCフィールドとして提供できます。机上の検討ではなく、実際の現場で検証できることが大きな強みです。

さらに、行政との接点も当社の特徴です。一般廃棄物事業に加え、自治体案件の入札事業も手掛けており、行政と連携した事業運営のノウハウがあります。社会実装を見据えた取り組みや公共性の高いプロジェクトについても、一緒に検討できる環境があります。

――最後に、応募を検討している企業へのメッセージをお願いします。

サキュレ・宇都宮氏 : 私たちが求めているのは、単なる利益の追求にとどまらず、社会課題の解決に対して真摯に取り組むことのできる企業様です。実際に活用いただける「現場」と、具体的な「実証環境」がすでに整っています。だからこそ、現場での気づきを起点に、新しい価値を共に創り上げていけるパートナーと出会いたいと考えています。

【ESSH】 アップサイクルの常識を変える化学技術で循環型社会を実装する

合同会社ESSHは化学薬品の調合技術を強みに、アップサイクルのハードルを劇的に下げる独自技術を開発する会社だ。分別・洗浄・加熱処理を必要とせず、混合廃棄物をそのまま資源化できる技術を武器に、地域循環型のものづくりを実現している。今回のプログラムでは、廃棄物から豊かな未来を目指し、独自のアップサイクル・エコシステムの創出をテーマに掲げている。

▲ESSH株式会社 代表取締役社長 坂本光代氏

――まず、事業内容と特徴について教えてください。

ESSH・坂本氏 : 当社は、基本的には薬品の調合会社ですが、どちらかというとディープテック寄りの化学メーカーです。私たちが作っているのは、アップサイクルのハードルを下げるための薬品です。主力は「Z.E.R.O」というセメント添加剤なのですが、これを使うことで、通常アップサイクルで必要となる「分別」「洗浄」「加熱処理」という高コスト工程を省略できます。つまり、ゴミをそのまま混ぜて固められるのです。

――“ゴミをそのまま混ぜられる”とは、どういうことなのでしょうか。

ESSH・坂本氏 : たとえば、海洋プラスチックや漁網といった廃棄物は、通常であれば分別しなければなりません。しかし私たちの技術なら、木片やガラス、ウレタンなどが混在した状態でも、そのまま固形化が可能です。さらに、現場にある海水を用いて固めることもできるのが強みです。

製造工程も非常にシンプルで、セメントに廃棄物を骨材として加え、専用の薬品を混ぜた希釈水で練り合わせて型枠に流し込むだけです。特別な大規模設備は必要なく、100Vの電源さえあれば、大人2人の体制で1日に約600〜800枚を生産できます。

▲マルチ性能セメント混和剤「Z.E.R.O」の特徴(画像出典:ESSH HP

――今回のプログラムに参加した理由を教えてください。

ESSH・坂本氏 : 技術だけでは社会実装ができないからです。私たちは素材や製造技術を持っています。しかし循環を作るためには、ユーザーや企業、自治体、福祉事業所など、多くのプレイヤーが関わる仕組みが必要です。そのため、自社だけで完結するのではなく、社会全体を巻き込む共創が必要だと考えました。今回のプログラムは、その実証の場になると感じています。

――今回の共創テーマについて教えてください。

ESSH・坂本氏 : 大きなテーマの一つが「CO2削減の循環システム」です。私たちは環境省の原単位を活用したCO2算定アプリを開発しており、廃棄物削減やCO2削減量を可視化できます。しかし、単に数字を見せるだけでは社会は変わりません。そこで考えたのがポイント化です。

企業が削減したCO2量をポイントとして付与し、そのポイントを社員が地域産品や福祉事業所の商品購入に利用できる仕組みを構想しています。削減が地域経済や福祉支援につながる循環をつくりたいのです。

加えて、当社の技術とアップサイクル製品の製作支援実績を活かし、廃棄物を新しい製品へと変え、新たな用途を探索していくことも共創テーマとして掲げています。

そして最後に、アップサイクル製品の製作工程に参画いただき、新しいリサイクル体験のシーンを共創するというテーマも設けています。現在当社では、廃棄物をアップサイクル製品に変える工程の一部を福祉施設に委託しており、タイルなどを手作業で製作することによって、自立支援の機会としています。今後、高齢者向けサービスや旅行パッケージなどにも活用いただき、新たなリサイクル体験のシーンを共創したいと考えています。

――パートナー企業に提供できるアセットについても教えてください。

ESSH・坂本氏 : 廃棄物ビジネスの大きな課題は輸送コストです。遠くへ運ぶほど採算が悪くなります。そこで私たちは福祉事業所と連携し、地域で回収した廃棄物を地域で製品化する「地産地消型アップサイクルモデル」を構築しています。現在はJR九州さんとの連携も進んでおり、福祉事業所を活用した生産体制づくりが本格化しています。資材価格高騰やエネルギー問題が世界的な課題となる中、低電力かつ分散型の製造システムは大きな強みになると考えています。また、帝人グループさんともアプリ基盤の協議を進めています。

――具体的な共創イメージと、パートナー企業像について教えてください。

ESSH・坂本氏 : 一つは廃棄物を抱える工場系企業、もう一つはCO2循環システムを実証・実装まで一緒に伴走してくれる企業です。技術だけでなく、「循環型社会を本気でつくりたい」という想いを共有できる企業と挑戦したいですね。

――最後に、応募を検討している企業へのメッセージをお願いします。

ESSH・坂本氏 : 2〜3年後の目標は、お客様の困りごとがESSHに集まることで、より確度の高いレシピを提供できる存在になることです。「ゴミで困ったらESSHに相談しよう」と言われる企業を目指しています。さらに、CO2削減を企業活動だけでなく生活者の行動変容へつなげ、日本のものづくりや地域社会を支えるインフラ企業になりたい。日本のものづくりと地域循環を本気で下支えする存在を目指しています。

取材後記

今回紹介した3社は、環境・アップサイクルという一見ハードルの高い領域において、それぞれが即戦力となるオンリーワンの強みを有しており、共創相手として非常に魅力的なポテンシャルを秘めていることは間違いない。また、各社が「高機能素材開発」「リユース家電レンタル」「CO2削減の可視化」など、環境・アップサイクル領域において多様な切り口から募集テーマを設定していることもあり、様々な角度からオープンイノベーションの可能性を探ることができそうだ。持続可能な未来への挑戦に興味を持たれた方々は、ぜひ積極的にエントリーを検討いただきたい。

※「TOKYO SME OPEN INNOVATION PROGRAM「Change」」の詳細はこちらをご覧ください。

(編集・文:入福愛子・眞田幸剛、撮影:齊木恵太)

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