ElevationSpace、プレシリーズBで11億円を調達 民間主導の再突入衛星「あおば」開発を加速
宇宙から地球への“帰り道”をつくるスタートアップ、株式会社ElevationSpaceは、プレシリーズBラウンドにて総額11億円の資金調達を実施した。既存・新規投資家8社からの第三者割当増資に加え、金融機関からの融資を含むもので、累計調達額は37億円に達した。
宇宙から地球への“輸送インフラ”を構築へ
ElevationSpaceは「軌道上のヒト・モノをつなぐ交通網を構築する」というビジョンを掲げ、宇宙から地球へと物資を輸送する新たなサービスの開発を進めている。主力プロジェクトは、無人の小型衛星を用いて無重力環境で実験・製造を行い、それを地球へ回収する「ELS-R」および、宇宙ステーションからの高頻度回収を実現する「ELS-RS」。これらは“ポストISS時代”における宇宙環境利用の基盤技術と位置付けられている。
2026年後半には、日本初の民間主導による再突入衛星「あおば」の打ち上げを計画。これにより、宇宙で生まれた素材や医薬品などを安全に地上へ持ち帰る仕組みを確立し、宇宙経済の拡大を目指す。
技術と組織の両輪で開発を推進
シリーズA以降、同社は組織規模を50名超へと拡大し、福島工場の新設や開発環境の整備を進めてきた。エンジニアリングモデル(EM)の完成や各種環境試験を経て、再突入耐熱材料を豊田自動織機と共同開発するなど、技術基盤の強化にも余念がない。
また、JAXAと連携するNeSTRAプロジェクトでは、火星着陸機開発および大気圏再突入実証計画が宇宙戦略基金に採択されるなど、研究開発領域でも成果を挙げている。今回の資金調達により、「あおば」のフライトモデル製造や「ELS-RS」の本格開発、さらには宇宙戦略基金プロジェクトの推進が一層加速する見込みだ。
投資家・金融機関からの厚い信頼
今回のラウンドには、Beyond Next Ventures、ジェネシア・ベンチャーズ、東北大学ベンチャーパートナーズ、FFGベンチャービジネスパートナーズ、みらい創造インベストメンツ、Z Venture Capital、ごうぎんキャピタル、新日本空調の8社が参加。さらに、JA三井リースなどからの融資も実現した。
リード投資家のBeyond Next Ventures代表の伊藤毅氏は「再突入技術は模倣が難しく、将来の宇宙輸送インフラを担う可能性を強く感じている」とコメント。各社からも「宇宙インフラの要としての成長性」「地域産業との連携」「日本発の技術競争力」に期待の声が寄せられている。
「地球と宇宙を往還する時代」を目指して
同社の代表取締役CEOの小林稜平氏は「今回の調達は、初号機『あおば』の製造やサービス化を力強く後押しするもの。東北を拠点に、宇宙から地球への新たな輸送インフラを築きたい」と語る。今後は、国内の地域企業・金融機関との連携を強化しながら、東北や九州、山陰などに根差した開発体制の拡大も視野に入れる予定だ。さらに、海外展開も進め、宇宙と地球をつなぐ「帰り便」の社会実装を目指す。創業からわずか4年で累計37億円を調達し、国内宇宙ベンチャーの新たな旗手として注目を集めるElevationSpace。日本発の再突入技術で、宇宙利用の常識を変える挑戦が続いている。
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(TOMORUBA編集部)