富裕層インバウンドで地方創生へ エクスペリサスがシリーズAの最終ラウンドで5.6億円を調達
訪日富裕層向け旅行市場の開拓を通じて地方創生を目指すエクスペリサス株式会社は、シリーズAの最終ラウンドにおいて、九州旅客鉄道株式会社(JR九州)、大和ハウスベンチャーズ株式会社、複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資に加え、みずほ銀行、三井住友銀行などからの借入を実施。総額5.6億円を調達し、シリーズAラウンドの累計調達額は12.4億円に達した。
“100年先の文化を継承する仕組み”を目指して
エクスペリサスは「100年先の未来へ、日本中の多様な文化が継承される『仕組み』を創る」を理念に掲げ、2017年の設立以来、富裕層向け観光を通じた地方創生を推進してきた。
同社はBtoB型のクローズドECサイト「XPERISUS.com」を通じ、世界8,000社を超える富裕層旅行会社ネットワークを構築。コロナ禍では海外販売事業を一時休止したが、その間に国内富裕層向け、法人・自治体向け事業を拡大し、2022年には前年比400%成長・黒字化を達成。以降、2期連続で黒字を維持している。
2023年には世界的ラグジュアリーツーリズム・コンソーシアム「Serandipians」に加盟し、グローバル展開をさらに加速。高付加価値な旅や体験を通じて、日本の文化資産を世界市場へと届けている。
富裕層旅行者がもたらす“量より質”の地方創生効果
国土交通省によれば、富裕層旅行者は訪日観光客全体の1%に過ぎないが、消費額では約14%(6,700億円)を占める。エクスペリサスは、こうした高付加価値層の地方誘客に注力し、地域経済への波及効果と持続的な観光モデルの実装を進めている。
同社が掲げるのは「富裕層送客の社会インフラ化」。少人数・高消費・長滞在型の旅行を促進することで、オーバーツーリズムの抑制と地域資源の持続的活用を両立させる考えだ。
調達資金の使途 3つの重点戦略に投資
今回の資金は、①海外マーケティング体制の強化、②地方観光資源の高付加価値化支援、③プラットフォーム事業・オペレーション強化の3領域に投じられる。とくに地方自治体との連携による新たな体験コンテンツ開発や、AIエージェント間連携(AtoA)に備えたデータ基盤整備など、観光DXにも注力する方針だ。
出資各社からの期待の声
JR九州は「エクスペリサスの国際的ネットワークと企画力を活かし、九州の魅力を国内外へ発信する共創を進める」とコメント。
また大和ハウスベンチャーズは「地方創生と文化継承を両立する社会的意義の高い取り組み」と評価し、事業支援に加わる。みずほ銀行も「地域経済の持続的発展を支える革新的サービス」として支援を表明した。エクスペリサスの代表取締役 丸山氏は「エクスペリサスが構築する富裕層送客の仕組みは、単なるビジネスを超え、日本の多様な価値を次世代に継承していく“社会インフラ”であると考えています。今回の調達を契機に、理念を共有する仲間とともに、日本の観光の新たなスタンダードを築いていきます」と語った。
地方の伝統と自然、そして人々の営みを世界の富裕層へ。エクスペリサスの挑戦は、観光を超えて“文化をつなぐ社会づくり”へと進化している。
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(TOMORUBA編集部)