【対談】博報堂DYグループのSEEDATAとeiiconが提携。大企業のイントレプレナーたちの協業でイノベーション支援の幅が拡大する。
オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」はこのほど、イノベーション支援事業を展開する、博報堂DYグループの株式会社SEEDATAと提携することになった(詳細情報はこちら)。eiiconはビジネスパートナーの発掘を、SEEDATAは進出する事業領域の決定と具体的事業の実行支援を得意とする。それぞれの得意分野を持ち寄ることで、より強力にオープンイノベーションや新規事業参入をバックアップすることが狙いだ。
今回、SEEDATA 代表取締役CEO 宮井弘之氏(写真・右)とeiicon founder中村亜由子(写真・中央)、eiicon co-founder田中みどり(写真・左)によるトークセッションを実施。事業提携の背景や今後の展開について語ってもらった。
▲株式会社SEEDATA 代表取締役CEO 宮井弘之氏
2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。
【株式会社SEEDATAについて】
2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。
真逆の2人がタッグを組む。
――SEEDATAは博報堂DYグループから社内起業されました。設立にはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
SEEDATA宮井 : SEEDATAも、eiiconさんと同様に社内コンテスト(博報堂DYグループの社内ベンチャー制度「AD + VENTURE」)に応募して事業案が採択されました。応募のきっかけは、データをより多くの企業に使ってもらいたいと考えたことにあります。
博報堂では、新商品の開発プロジェクトなどで、取引先一社のためにオーダーメイドで大量のデータを収集します。非常に洗練されたデータなのですが、この形式ですと、データを利用できるのは一社です。でも、プロジェクトで利用できるよう生活者動向の定性データを予め集めておき、より広くリーズナブルに利用してもらいたいと思ったのです。
――なるほど。今回、eiiconと提携に至った背景には、どんなことがあったのでしょうか。
SEEDATA宮井 : 昨年にソフトバンクさん主催のイベントで、中村さんと一緒に講演させてもらいました(※)。その時に話を聞きながら、直感で動く私と真逆だと感じました。中村さんは計画立てて行動を起こしています。そんな中村さんとなら、面白いことができそうだと思ったんですよね。
※【イベントレポート】「大手企業からの起業」をテーマにイントラプレナーの2人が登壇。社内起業、新規事業立ち上げの「裏側」を伝える。 https://eiicon.net/articles/250
eiicon中村 : まさに直感ですね(笑)。ありがたいお話です!
SEEDATA宮井 : その通り、直観です(笑)。その時から「提携しよう」という話は上がっていたんですが、具体的には動いていませんでした。でも、昨年末に一年を振り返り、中村さんとの事業提携が進んでいないと思って、年が明けてすぐに中村さんに連絡しました。またも直感です。
ソリューションのラインナップが増える
――協業することで、どのようなメリットがあると感じましたか。お互いの強みや弱みを補完し合えるということでしょうか。
eiicon中村 : どちらかと言えば、新規事業を生み出すソリューションのラインナップが増えるという認識です。新しい事業を始めようとした際、オープンイノベーションという手法で外部にパートナーを求めるならSEEDSとしての可能性を持つスタートアップや事業会社と直接つながることができるeiicon。新規事業の方向性に悩みを持たれている場合は、マーケティングリサーチデータを膨大に保有するSEEDATAさん。このようなすみ分けができると思っています。
SEEDATA宮井 : 他にも、例えば、アクセラレータプログラムなどでも、協業はできるのではないかと考えていますね。
――両社で具体的に進んでいるプロジェクトなどはありますか。
eiicon田中 : まだこれからのフェーズではありますが、先日は大手消費財メーカーのお客様をSEEDATAさんと訪問しました。そのお客様は、ビジネスのアイデアはあるが、形にするのはどうすればいいか、顧客ターゲットをどこにすべきか、という点で課題を抱えていました。その段階だとSEEDATAさんで力になれることが多いはずです。このようにeiiconとSEEDATAさんで協業することで、幅広い提案がお客様にできるようになります。
国内のオープンイノベーションは一つ上のフェーズに上がった
SEEDATA宮井 : 国内のオープンイノベーションはeiiconさんのメディアの効果・業界支援もあって、数年まえから一歩進んだ状況にあると感じています。イノベーションや新規事業の手段としてのオープンイノベーションの手法はだいぶ整理されてきている状況なので、今は“どう実行していくか”というフェーズにあるのではないでしょうか。
オープンイノベーションについて言えば、グローバルな展開になると思っているんですけど、eiiconさんは海外進出しないのでしょうか。
eiicon中村 : 実は海外展開については、立ち上げ当初から視野に入れていました。ただ、サービスローンチ後、オープンイノベーション自体がまだまだ日本市場に根付いていないと感じることが、お客様と対峙する中で多かったのです。そのため、昨年は国内に軸足を置き、現在~2019年はまだ国内を見ています。
eiicon田中 : オープンイノベーションが次のフェーズに進んでいるという感覚を宮井さんに持っていただけたのは、とてもうれしいことです。
SEEDATA宮井 : 今後は海外にも行くんですか?
eiicon中村 : そのつもりです。2020年のビジョンとして掲げています。オープンイノベーションのパートナーを国内はもちろん、海外でも見つけられるようにするのが理想ですね。
――提携後は、どのようなお客様を対象に提案を進めたいと考えていますか。
eiicon田中 : 基本的にはイノベーションを目指す企業すべてが対象となります。企画段階から実行まで、一貫して提案ができるのが大きな強みです。
SEEDATA宮井 : 一通りのことはすべてやりつくしたというお客様が対象になってもいいと思います。さらにステップアップするために、提供できるリソースは多くあります。
eiicon中村 : そうですね。宮井さんも私も、大企業の中で社内ベンチャー/新規事業を立ち上げた経験があります。たとえば、「オープンイノベーションをやろうとして挫折した」、「どうしてもうまくいかない」という大企業の担当者に対してはその気持ちを汲み取ったうえで、ご支援できると思います。どうしてもイノベーションに結びつかないという状況でも、突破口はあります。それを一緒に見つけられるという自信は持っています。
取材後記
eiiconとSEEDATA、2つのイノベーション支援プラットフォームがタッグを組むことで、より幅広いソリューションが提供できるようになった。両者を通じて、パートナーを探すこともマーケットを探すこともできる。イノベーションを一歩先へと着実に進めることができるだろう。対談中、「真逆の2人」ということも口にしていたが、宮井氏と中村そして田中には「浦和」という共通点もあった。3名とも、さいたま市の浦和に住んでいた/浦和の学校に通っていたというのだ。――不思議な縁のある3名が率いるSEEDATAとeiiconがどのようなコラボレーションを見せるか。注目したい。
※eiicon×SEEDATA 連携に関する詳細情報は右記URLをご覧ください。 https://eiicon.net/about/eiicon-seedata/
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)