凸版印刷×シグマアイ | 量子コンピューティングによる、物流業務の効率化に向けた実証実験を開始
凸版印刷株式会社と東北大学発スタートアップの株式会社シグマアイは共同で、量子コンピューティング技術の一つである量子アニーリング(※1)の研究を進めている。このたび、量子アニーリングを活用し、物流業務の効率化に向けた実証実験を2021年10月より開始したことを発表した。
※1:量子アニーリングとは、膨大な組み合わせの中から最適な解を求める最適化問題に特化した量子コンピュータの計算技術
実証実験の概要
本実証実験では、凸版印刷とシグマアイが共同で進めている量子アニーリングを、凸版印刷のグループ会社である株式会社トッパン・コスモが物流業界などに向けて提供している業務効率化・見える化システム「MITATE®」(読み:ミタテ)(※2)に適用し、計画立案機能を拡張することで、配車・配送計画などの業務の負担軽減、スピード・精度向上と、配送時間の縮減やそれに伴う環境負荷低減を実現する。
また、本実証実験の効果検証を通し、量子アニーリング活用のノウハウを蓄積し、重さ・大きさ・種類・荷姿など荷物に関する情報の安全・安心な運用・管理、集荷や配達に伴う配車・配送計画策定など、物流業務を効率化・見える化する物流デジタルトランスフォーメーションを目指すという。
▼量子アニーリングと「MITATE®」の連携による物流DXのイメージ図
※2:業務効率化・見える化システム「MITATE®」とは、個別管理による複雑化した業務フローを整理・統合し、管理業務の効率化と、デジタルトランスフォーメーションを促進するクラウドサービス。「MITATE」はトッパン・コスモの業務提携先である株式会社ランプライトの登録商標。
実証実験の背景と狙い
近年のネットショッピングやカタログ通販を始めとする電子商取引(eコマース)の需要増により、物流の市場規模は拡大し、それに伴う物流量の増加と、それに対応する労働力不足が課題となっている。さらにコロナ禍の影響で、個人向けの配送が増え、荷物の配達と再配達など、トラックドライバーの負担が大きくなっている。これらの傾向はアフターコロナにおいても継続し、物流は事業活動や日常生活を支え、社会インフラとして益々重要になっていく。
物流業界に対しては、このような課題の他、配送トラックの燃料や排気ガスの増大などの環境問題や、道路の渋滞といった社会的課題への取り組みも求められており、それらに対応するため、トラック台数の削減、配送距離の最短化や渋滞回避ルートの選定など、配送計画を含めた物流システムの最適化が人工知能やIoTを使って進められている。
しかし、配送先や荷物の種類、荷物到着時間やトラックの積載量など数多くの要件がある配送計画の算出には時間を要するため、急な変更に対応できなかったり、精度が低くなるなど、多くの課題がある。
一方、量子コンピュータの実証実験として近年、工場内の無人搬送車による配送の効率化や、製造ラインの従業員シフトの最適化などが行われており、物流現場においても複雑な制約や状況に応じた最適な計画を算出できる量子コンピューティング技術への期待が高まっている。
これらの課題に対して、凸版印刷とシグマアイは連携して、量子コンピューティング技術のひとつである量子アニーリングを、トッパン・コスモが物流業界などに向けて提供している業務効率化・見える化システム「MITATE®」に適用する実証実験を開始する。
▼トッパン・コスモが提供している業務効率化・見える化システム「MITATE®」のシステム概要
2社の役割分担
■凸版印刷
量子コンピューティング活用に関する研究開発の成果や、DX関連事業での知見を活かし、本実証実験の効果検証と本取り組みにおける事業化を検討することによって、物流DX事業の推進を目指す。
■シグマアイ
東北大学発スタートアップとして、世界でも有数の量子コンピューティング技術を有しており、アニーリング方式の量子コンピュータを活用した配送計画ツールの試作開発と効果検証を行う。
今後の展開
集荷から着荷に至る物流フローにおける物流業務を効率化するシステムを開発し、2025年、物流DXソリューションの提供開始を目指す。また凸版印刷とシグマアイは物流以外にも幅広く、量子アニーリング技術を活用した全体最適化ソリューションの研究を進めていく構えだ。
なお凸版印刷は現在、「Erhoeht-X™(エルヘートクロス)」をコンセプトとして、全社をあげ、社会や企業のデジタル革新を支援するとともに、同社自体のデジタル変革を推進している。
※関連リンク:プレスリリース