建設現場のDX・自動化を目指す東大発スタートアップのARAV、東大IPCより資金調達
建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAV株式会社は、3月8日シードラウンドにおいて、第三者割当増資による6300万円の資金調達を行ったと発表した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)だ。
ARAVの事業内容とビジョン
2020年4月設立のARAVは、ロボット工学を用いて建機の遠隔操作や自動操縦に取り組んでおり、既存の重機に後付けするプロダクトを開発している。建設現場のDXを促進し、研究・開発・実証実験を通じて収集・解析されたビッグデータを活用することで、建設現場が抱える様々な問題を解決していくことを目指している。
2020年11月に国交省「建設現場の生産性を向上する革新的技術」に選定されるなどARAVの技術への注目が高まる中、伊藤忠TC建機株式会社と建設機械の遠隔操作実用化に関する開発業務委託契約を締結。ARAVの建設機械遠隔操作装置技術をベースに災害対策用遠隔建設機械操作システムの早期実用化を計画中だ。
また、ビスペル合同会社(静岡県富士市)と共同で、準天頂衛星みちびきのセンチメータ級測位補強サービスを活用した油圧ショベルの積み込みタスク自動化に成功し、現在10社以上の建機メーカー等と遠隔・自動化の共同開発を進めている。
調達資金の使用用途
同社は調達した資金を用いて、事業投資および採用活動の強化を図る。事業投資については、遠隔操作システムのパッケージ化および自動制御システムの開発を実施する方針だ。
遠隔操作は、特に災害や製鉄所など過酷な労働環境下における対応や遠隔地利用での実用化を目指す。また自動制御システムは、シンプルかつ反復を伴う現場の作業に対応する開発に注力し、早期製品化を目指す。
さらに、建機メーカーだけではなく、建機のリースおよびレンタル会社とも提携し、特殊な建機を買わずとも遠隔操作や自動運転できる建機を、日本中で利用できる環境を整備する。このプロダクトにより、建設現場が抱える課題を解決するためのソリューションを開発し、現場の安全性の確保、リスクの軽減を、1日でも早く世界中に広めることを目指す考えだという。
代表・投資家のコメント
■ARAV株式会社 代表取締役 白久レイエス樹 氏
『日本に限らず、世界における建設現場には未だ課題が山積で、それらのソリューションも、複雑で多角的な様相であると考えています。 このような状況の中で当社は、建設機械の遠隔・自動化によって「現状、目に見えている課題」を「まずはひとつずつ解決していく」ことにフォーカスし、多くの企業様とパートナーシップを築いて参りました。
今回、東大IPCからの出資による資本増強を行ったことで、今後は、取引先企業様と実証実験した成果を踏まえた量産化準備に向け、β版の生産体制を構築するための人材採用を強化、ベンチャー企業として更なるDXソリューションを提供できるよう取り組んで参ります。』
■東大IPC AOI1号ファンドCIO 水本尚宏 氏
『白久氏はエンジニアかつシリアルアントレプレナーという日本では非常に希少な存在です。また建機は自動車同様に日本が強みを持つ産業分野ですが、技術転換期を迎えており、世界的大手各社が自動制御に巨額の投資をしています。このような環境下で、多くの建機メーカー等と遠隔操作および自動制御の開発を行うARAVの重要性は年々増加すると考えており、今回リード投資家として参加できることを光栄に思います。
またARAVは、東京大学FoundXが支援したベンチャーに東大IPCが投資した初めての事例です。AOI1号ファンドの設立以後、シードステージから事業会社と連携を行う東大関連ベンチャーは着実に増加しておりますが、東京大学FoundXと共同で東大IPCが支援するARAVの成功がこの動きを加速し、建機業界のオープンイノベーション、ひいては日本全体のイノベーションの加速に寄与すると確信しております。』
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