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佐賀から世界へ!佐賀県×JCC主催の「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」ピッチイベントをレポート

佐賀から世界へ!佐賀県×JCC主催の「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」ピッチイベントをレポート

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2020年7月、佐賀県一般社団法人ジャパン・コスメティックセンターによる、県内企業とスタートアップ企業とのオープンイノベーションによる新たな事業創出を目的としたプログラム「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」がスタートした。

「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」は、佐賀県とジャパン・コスメティックセンター(以下、JCC)が共同で開催する、佐賀県内の企業とスタートアップ企業とのオープンイノベーションによる新たな事業創出を目的としたプログラムだ。


2月25日に開催されるデモデイに向け、昨年12月に採択協業案についてのピッチイベントがオンラインで実施された。本ピッチイベントは、プログラムに参加する佐賀県内で活動する企業4社と採択されたスタートアップ10社によって進行。本記事では、「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」の取り組みや採択協業案について詳しく紹介していく。

佐賀県が推進する「コスメティック構想」の一環として立ち上がったプログラム

佐賀県では、地方創生の取組として、唐津市・玄海町を中心とした北部九州に美と健康に関するコスメティック産業を集積し、コスメティックに関連する天然由来原料の供給地となることを目指して2012年から「コスメティック構想」を推進している。

JCCは、2013年に設立され、「国際取引」「原料開発」「環境整備」「産業集積」の4つの柱を掲げて佐賀県、大学、民間企業の連携を支援してきた。

設立から約7年の支援実績として、海外への輸出事例として約30件、商品開発においては佐賀県産のグレープフルーツやみかん、いちごなどから抽出した原料を使って、約30社120以上の商品が開発されるなどがあり、目を見張るほどのものである。

産業集積の観点では、8社が立地し、14の新たな起業家が誕生(2020年3月時点)、さらに2021年3月末までに380人の雇用を見込んでいるなど、順調に実績を積み重ねている同取り組みだが、それをさらに加速するために「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」が企画された。

「佐賀県、日本一コスメビジネスがしやすいマチから世界へ」をビジョンに掲げ、スタートアップとの協業により佐賀県から世界を変えるビューティー&ヘルスケア事業の創出を目指す、日本で唯一の自治体によるコスメ特化型支援プログラムとなっている。


プログラムに参加している企業4社と、採択されたスタートアップ10社は以下の通りだ。


「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」参加している佐賀県企業(4社)

・株式会社クレコス (国産オーガニック化粧品メーカー/工場:佐賀県唐津市)

・株式会社サガテレビ (佐賀県内唯一の民間テレビ放送局/本社:佐賀県佐賀市)

・三栄興産株式会社 (麦茶を中心としたお茶の専門メーカー/本社:佐賀県唐津市)

・株式会社ブルーム (化粧品輸入代行、成分分析/本社:佐賀県唐津市)

「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」採択スタートアップ(10社)

・合同会社ひいらぎ

・株式会社Afree

・株式会社sportip

・株式会社タベテク

・株式会社アジクル

・株式会社エーエスピー

・株式会社バルドゥッチ

・株式会社ハンドレッドライフ

・株式会社Fam-Time

・株式会社シマント

――それでは実際に、ピッチイベントではどのような採択協業案が提示されたのか?10のプランをそれぞれ紹介して行きたい。


セッション1: 地域×福祉×化粧品!残渣を活用した商品開発で社会問題を解決 (クレコス×ひいらぎ)

ピッチイベントに登場した1社目は、国産オーガニック化粧品メーカーである株式会社クレコス。「地方の離島で持続可能な経済活動を実現し、人々が自然と共生しながら豊かに暮らせる未来」を目指すNPO法人Retocosと合同で事業を行う。

「人も社会も美しくする化粧品」づくりを目指し、社会課題解決の取り組みにも力を入れるクレコスが採択したのは、福祉事業を行う合同会社ひいらぎ。障害者と一人親で作る「老犬ホーム」をテーマにした協業案を発表した。高齢化が進み認知症になった犬の介護問題を人材活用で解決する。


少子高齢化が進み人材活用が急がれる中、障害者や一人親などが活躍できる場はいまだに少ないという状況に注目。そうした人材を優先的に雇用する老犬ホームの立ち上げを提案。クレコスとの協業では、老犬ホームや障害者のイメージアップの側面も含め、老犬用に特化したオーガニックシャンプーなどの開発を目指していく。

セッション2: テレビで放送した番組をアプリ内で配信!トレーニング需要に対応(サガテレビ×Alfeee)

1969年開局、佐賀県で唯一の民間テレビ放送局である株式会社サガテレビは、3社のスタートアップ企業を採択。情報発信を通じて地域の暮らしや文化の向上に貢献するだけでなく、本取り組みを機に、サガテレビグループだけでは達成できない新たな価値創造を目指す。

1社目の採択企業は、フィットネス動画配信アプリBeneFitnessを展開する株式会社Alfree。BeneFitnessは、フィットネスインストラクターが自分で撮影した動画を有料で配信できるアプリ。インストラクターはアプリ内でレッスンを持つことができ、ユーザーはレッスンごとに授業料を支払うというビジネスモデルだ。


サガテレビとの協業では、テレビで放送した番組をアプリで配信し、トレーニングやフィットネス需要に応えることが狙いだ。サガテレビの強みである発信力とメディアの信頼性を武器に配信に取り組んでいく。

ビジネスモデルとしては、月額1,000円を想定。トライアルとして2021年1月から3月末までの期間で配信を開始。会員数100人の獲得を目標とし、Alfreeが得意とするマーケティングやデータ解析といった分野を活かしながら、目標達成を目指していく。

セッション3:  AI技術の活用で佐賀県のスポーツを活性化(サガテレビ×Sportip)

サガテレビによる2社目の採択企業は、ヒトの“全て”の運動指導をAIによって代替する筑波大学発ベンチャー、株式会社Sportip。専門家と共同開発した独自の技術活用し、膨大な時間と費用が必要だったデータ解析を実現。動作解析ツールによるパーソナライズスポーツを提案した。


サガテレビとの協業では、まず実証実験として佐賀県とサガテレビの共催で実施する「SSPクロスキャンプ」(※)内にて、佐賀県内のユースアスリートに向けてAI技術を活用した測定・分析・フィードバックを行う。「ユースアスリートたちの県外への流出など、佐賀県が抱えるアスリートの育成環境という課題解決にも取り組んでいきたい」とコメントした。

今後は佐賀県内での取組みの基盤作りを目的とし、まずはSSPクロスキャンプ内でSportipのプログラムを実施。フィジカルトレーニング方法のAIコーチング、全競技に共通する「走る」ことの分析とAIコーチング、指導者、整形外科医向け1RMテストの3案からいずれかの案での実施を検討している。

また、長期的なアウトプットとして、佐賀県SSP推進グループとの事業、佐賀古湯キャンプでのイベント展開、放送番組での展開も目指していく。

(※)SSP:佐賀県が推進するSAGAスポーツピラミッド推進プロジェクト。「佐賀から世界に挑戦する新たなスポーツシーンを切り拓く」という長期的な計画で、トップアスリートの育成やスポーツ文化の裾野を広げ、地域全体の活性化を目指すプロジェクト。

セッション4:  廃棄ロス削減し、佐賀県のミカンを世界に発信!(サガテレビ×タベテク)

サガテレビ3社目の採択企業は、大学発のベンチャー、株式会社タベテク。同社は、プラズマ技術を活用し果物に刺激を与え抗酸化物質を増やし、カビの発生を減らすことで鮮度保持を実現している。


協業案は、タベテクのプラズマ装置を活用し佐賀県のみかんを世界に発信するプロジェクトだ。タベテクが開発したプラズマ発生装置を、サガテレビのグループ会社である株式会社ライフプロが出資する農業法人石橋果樹園のみかん貯蔵倉庫内で稼働させ、腐敗の抑制効果や費用対効果の検証を行う。

実証実験と同時に、石橋果樹園のみかんをリターンとしたMAKUAKEのクラウドファンディングに登録。クラウドファンディングで必要な追加資金の調達や社会ニーズの確認を行う。事業化の指標として、カビの発生率約30%以下、クラウドファンディングでの資金調達目標750万円の達成をKPIとする。

サガテレビでは自社番組やWebメディアでプロジェクトの情報を発信。実証実験ならびにクラウドファンディング終了後、費用対効果を確認し商品化や販売といった事業計画に繋げていくという。

セッション5:  2021年を「日本からバングラデシュへの麦茶の伝播」元年に!(三栄興産×アジクル)

「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR 2020」への参加企業3社目は、1965年創業の三栄興産株式会社。国内の主要な大麦産地である佐賀県で「美味しい麦茶」を製造している。本プログラムにおいて、麦茶、健康茶の新たな挑戦を目指す。

三栄興産株式会社の採択企業1社目は、マイクロ保険の事業開発とバングラデシュを主とした途上国進出支援を行う株式会社アジクル。日本の麦茶を現地に届けることで、日本の食文化の発信を目指す。


バングラデシュへの日本の食文化発信のため、まずはアジクルが貿易に向けた事業可能性調査と現地提携先選定を行う。三栄興産では日本の麦茶だけに限らずさまざまな日本食を発信できるよう国内の食品メーカーの協力を仰ぎ、日本一丸となって日本の食文化の輸出を目指す。そうすることで、どのような影響があるかを分析。日本食の新たな可能性を模索していく。

具体的には、バングラデシュの小売店やECサイトで日本フェアの開催、麦茶をはじめとした日本の食品に係る貧困層/富裕層向け試飲・試食会、三栄興産が所属している輸出協議会との連携を企画。販売に留まらず、現地でマーケティング活動を行い、より良い商流の構築を目指す。

セッション6:  廃棄物を出さない産業化で目指す、農産物の安定供給(三栄興産×エー・エス・ピー)

三栄興産による採択企業2社目は、農作物安定供給プラットフォーム構成の事業を展開する株式会社エー・エス・ピーだ。近年よくフードロスという言葉を耳にするが、実はフードロスには「畑で廃棄された未利用農産物」はカウントされていない。しかし、この未利用農産物は全体の生産量の約15%もの割合を占めている。


三栄興産とエー・エス・ピーの協業では、全国各地で未利用となってしまっている規格外農作物を健康茶に加工し有効利用することで、廃棄物を出さない産業化、農産物の安定供給を目指す。各地の地域資源を市場に提供することでブランド化、三栄興産の製茶技術や販路を活かした商品開発、マーケティングも視野に入れている。

本協業でフードロスや規格外品という言葉を無くすべく、食品ロスの減少、農家の収入を増加させることで安定した収量を可能にする作付を実現し、産地のブランド化も目指していく。

セッション7:  お茶が理想の心や体を叶え、世界中の女性をもっと健康でハッピーに(三栄興産×バルドゥッチ)

三栄興産の採択企業3社目は、日本発デリケートゾーンのお手入れブランド「トレスマリア」を展開する株式会社バルドゥッチ。「世界中の女性をもっと健康で美しくハッピーに」をテーマに、三栄興産の製茶技術、健康茶原料のノウハウを活かした新たな商品開発を目指す。


トレスマリアというブランド名には、「3人のマリア」という意味が込められており、母・自分・娘への『美絆の伝承』がコンセプトとなっている。実証実験として、更年期世代、妊娠·ママ世代、生理世代という3世代のそれぞれのニーズに合った商品を製造するという。

現在検討しているのは、綺麗で健康であることをめざす「ブレンド茶」、ぽっこりおなかの悩みを解消する「減肥茶」、 ゆっくり眠れる「快眠茶」の3種類。商品が市場ニーズにあっているか、既存の販路や展示会などでのマーケティング活動を予定している。

セッション8: 心と体の安らぎで、過ごしやすい国・日本を実現(三栄興産×ハンドレッドライフ)

三栄興産の採択企業4社目は、ヘルスケア領域のサポートサービスを展開する株式会社ハンドレッドライフ。健康に悩みを抱えるビジネスパーソンを対象に、心と体が安らぐホッと落ち着くサービスの提供を目指す。


サービスの具体的な内容は、ハンドレッドライフが展開する健康チェックなどのサービスを活用し、一人ひとりの健康をサポートする健康茶を提案すること。質問に応えていくことで、その人の健康情報をインプットし分析、必要な栄養素をアウトプット。得たデータにマッチする健康茶をリコメンドしお届けする、という仕組みだ。

体と心の健康状態をチェックし、健康茶を飲んだ人/飲まなかった人で差は出るのか、健康茶に期待できる効果はどのようなものかなどの結果を分析。分析結果を元に、新たなルートへの提案も視野に入れる。

健康茶は薬事法によりなかなかその魅力を市場に伝えることができないのが現状だ。本協業により、健康茶の可能性を広め、多くの人が心身ともにやすらげる世界を目指す。

セッション9: 日本の麦茶を世界のMUGICHAへ!DXで食体験の向上を目指す(三栄興産×Fam-Time)

三栄興産株式会社最後の採択企業は、デジタル技術を活用した家事、育児に関する支援サービスや食関連サービスを展開する株式会社Fam-Time。同社が提供する食コミュニケーションアプリ「FamCook」は、音声UIやチャットボットなどで料理の献立から買い物、調理手順までをサポート。このデジタル技術を活用し、三栄興産の知見を元にした麦茶のデジタルコンテンツサービスを展開する。

「FamCook」に記事コンテンツ、クイズ、Q&Aチャットボットなどのデジタル麦茶コンテンツを公開。麦茶の知識を得た上で、アプリから三栄興産のECサイトへ送客する仕組みだ。毎日のように飲む麦茶を食のコミュニケーションとして活用し、食体験の向上を目指す。


セッション10: DXでデータベースを結合し、輸入代行業務を効率化!(ブルーム×シマント)

最後のピッチとなったのは、化粧品輸入代行・品質管理GQP/GVPサービス・成分分析事業を展開する株式会社ブルーム。採択企業は、データ管理ソリューションを展開するテック系スタートアップ企業、株式会社シマントだ。

協業案は、輸入代行業務を効率化するためのシステム構築。各国の法規制チェックを可能にするプラットフォームの開発だ。ブルームの輸入代行業務においては、成分別・各国別の国内成分使用可否と成分名の言語変換対応が必須業務となる。この業務を行うために必要なデータは膨大な量になり、スムーズな対応にはデータベースの管理が重要になってくる。


デジタルトランスフォーメーションをテーマにデータ管理のソリューション提供するシマントと協業することで、一元的に管理する統合データベースを再構築。ブルームの持つCSVデータを仮想DBとして結合させ、輸入・輸出の必要に応じたデータを抽出できるシステムを作る。

輸入代行業務の効率化だけでなく、効率化によって期待できる業務拡大を通じ、国際市場において国内商品が脚光を浴びる一翼を担い、事業の更なる発展を目指していくという。

日本で最もコスメビジネスがしやすいマチ、そして世界へ

「日本一コスメビジネスがしやすいマチ」となることを目指し、コスメやヘルスケア領域の産業集積を進める佐賀県。ピッチイベントの締めくくりとして、佐賀県ものづくり産業課コスメティック構想推進室の北村室長がピッチイベントへの感謝の気持ちを述べた。

また、北村室長は「社会課題の解決に直結するもの、消費者ニーズをうまく捉えた発想が反映された有望なスキームばかりだった。協業案が事業化されるのが楽しみ」とコメント。日本一コスメビジネスがしやすい町へ、大きく前進したピッチイベントとなった。

取材後記

10社との協業案という非常に聞き応えのあった「SAGAN BEAUTY & HEALTHCARE OPEN ACCELERATOR2020」ピッチイベント。決して1社では生まれなかったであろう、それぞれが持つ技術や強みを活かした協業案は、”オープンイノベーションによる新たな事業創出”という本プログラムの狙いをしっかりと捉えたものになっていた。課題解決、世界への進出、DX。――本取り組みにより、佐賀県がこれからどのような変革を遂げていくのだろうか。2/25に開催されるデモデイにも注目したい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:阿部仁美)

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