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【オープンイノベーションの立役者たち/アスキー・鈴木亮久氏】メディアを通じ見てきた、スタートアップ・オープンイノベーションの現状と課題とは?

【オープンイノベーションの立役者たち/アスキー・鈴木亮久氏】メディアを通じ見てきた、スタートアップ・オープンイノベーションの現状と課題とは?

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IT業界全般に深く関わりを持ってきた、編集者・鈴木亮久氏。かつてはパソコン少年だったこともあり、ハード・ソフトの両方に興味を持ち、いくつもの企業やサービス、製品を取材し続けてきた。スタートアップが隆盛を見せる近年は、必然的に多くのオープンイノベーションを見るようになる。メディア側の立場で、初期の段階からオープンイノベーションを盛り上げ、取り上げてきた鈴木氏は何を感じているだろうか。また、オープンイノベーションを推進していくために必要なことは何か。eiicon lab編集部とeiicon founder・中村亜由子(上写真・右)が鈴木氏にお話を伺った。 

株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 ASCII.jp/週刊アスキー編集部 ASCII STARTUP 編集者・鈴木亮久(ガチ鈴木)氏

■Web業界の急速な発展を体感。

――鈴木さんは、ずっとアスキーに勤めていらっしゃいますね。まずはスタートアップに関わるようになった経緯をご紹介ください。

鈴木:2004年に入社して以来、アスキーで編集の仕事をしています。ハードウェアや自作パソコンをはじめ、ネットワークやソフトウェアについてなんでも担当しました。ニュース部門への配属から、ハードウェア以外にもイベント取材など新しいことをどんどん取材するようになりました。

そのころから、主にWeb業界を担当するようになり、Webが発展した歴史を取材を通じて体感しました。今では誰もが知っているSNSや動画などを、世に出始めたころから取材をして、あれよあれよという間に広がっていく、成長のダイナミズムを見ていたんです。Webはスタートアップやベンチャー企業が多く参入してくる業界です。その関係でスタートアップに深く関わるようになりました。

 ――スタートアップに関わりだしたのは、いつ頃くらいからですか。

鈴木:2014年です。スタートアップが一種のブームとなっており、編集部としても新たな媒体を作って本格的に取り上げようということになりました。私に知見のある分野ですので、担当することになったのです。

――2014年に立ち上がった『大江戸スタートアップ』のことですね。

鈴木:そうです。『週刊アスキー』の一つのコンテンツとして立ち上がりました。主に一般ユーザー向けに「新しくてこんなに面白いものがあるよ」と紹介していました。2015年10月からは『ASCII STARTUP』に名称を変更しています。アスキーブランドを使って、スタートアップを盛り上げていこうというのが一つの狙いです。

――これまで取り上げたスタートアップで、印象に残るところはありましたか。

鈴木:JDSoundという仙台の会社です。ハードウェアのスタートアップを盛り上げることを目的にアスキーで特集記事を組んでおり、その一つとして取り上げました。たまたま仙台に行く機会があって私自身が取材をしたのですが、GODJというスマホを2台つなげたほどのサイズのデバイスを作ったのですね。小型にもかかわらず本格的なDJプレーが楽しめ、世の中にこんなものがあったのかと大変に驚きました。記事を読んでくれた方も同じように感じたようで、アスキーの記事は大きな反響を呼びました。

■オープンイノベーションには「目的意識」が欠かせない。

――これまで多くのスタートアップを見てきたと思いますが、最近のトレンド・特徴はありますか。

鈴木:これまでは一つの企業が単独でサービスを生み出し盛り上がっていましたが、ここ数年は外部のサービスと連携することで伸びていくことが増えました。おそらく、この傾向はこれからも続いていくと思います。

――まさにオープンイノベーションということですね。オープンイノベーションについても多くの取材をされていると思いますが、その中で感じていることはありますか。

鈴木:そうですね。個別の例ということではないのですが、アクセラレータプログラムを多く取材する中で感じているのが、全体的に総花的な傾向があるということです。つまり、オープンイノベーションという名のもとに、何でもいいから新しいことをしよう、新しいアイデアを持ってきてほしい、という内容が多いように受け取っています。今後は、より目的意識を持ったプログラムに注目していきたいですね。例えば、東急電鉄さんのプログラム(東急アクセラレートプログラム)は「渋谷を元気にしよう」という明確な意図があります。提供できるアセットも、スタートアップに求めていることもわかりやすく示しています。他にはCCCさんのプログラム(T-VENTURE PROGRAM)も目的が明確でした。

■成果を発信してほしい。

――(eiicon founderの中村から)オープンイノベーションに対して課題や、警鐘を鳴らすではありませんが、これではよくない、ということはありますか。

鈴木:繰り返しになりますが、オープンイノベーションを目的にするのではなく、何を目的にオープンイノベーションをするかが大切です。これまではオープンイノベーションそのものに目新しさがあったため、記事にすることもできました。しかし、今はオープンイノベーションがバズワード化しているので、メディアも簡単には取り上げないでしょう。

同時に、企業側の情報発信が弱いところがあるのです。アクセラレータプログラムを開催します、オープンイノベーションを行います、デモデイを開催しました、というリリースはよく目にします。一方で、その結果がどんなことになったのかはほとんど情報発信されていません。サービスを創りました、そしてそのサービスはこんな貢献を果たしています、という事例がいろんなところからもっと出てきてほしいと思っています。逆に言えば、そうなってこないと「オープンイノベーションという手法はダメなんじゃないか」と思われてしまうのではないでしょうか。

確かに、オープンイノベーションは結果が出るまでに時間がかかります。しかし、そこで立ち止まるのではなく、わずかでも結果が出たら、すぐに情報を伝えるようにしてほしいと思います。もちろん、メディア側の人間として、PRはしっかりとさせていただきます。

――メディアに情報を載せるコツなどはありますか。

鈴木:アスキーについてのことになりますが、メディアの特性として、ユーザーさんにとってメリットのあることは積極的に情報発信します。新しいサービスが生まれました、などは記事にしやすいですね。サービスによって前後が明確になるもの、これがあることによってこんなに変わった、と言えるものであれば、もっといいでしょう。私たちもそんな情報を一人でも多くの人に伝えていきたいという思いがあります。

■取材後記

鈴木氏は、オープンイノベーションそのものが目的化している現状があることを指摘する。元来、オープンイノベーションは何らかの成果を生み出すための手段に過ぎない。改めてそのことを認識すべきだろう。また、オープンイノベーションを実施するという情報発信はあるが、その結果を知らせる情報発信が極めて少ないことについて警鐘を鳴らす。今の状態が続けば、一時の流行として収束する可能性があることを感じ取っているのだ。オープンイノベーションによって世の中にどんな新しい価値を創造したか。生まれたものをぜひ情報発信してほしい。きっとアスキーが取り上げてくれるはずだ。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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