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アジア・南米・アフリカなどで活躍する投資家6名が語る“海外進出のノウハウ”とは?――「Next Silicon Valley」レポート

アジア・南米・アフリカなどで活躍する投資家6名が語る“海外進出のノウハウ”とは?――「Next Silicon Valley」レポート

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少子化によるマーケットの縮小が「確定した未来」である日本。国内の企業には、海外のマーケットに打って出る決断が迫られている。しかし、闇雲に海外進出を図っても勝機はない。綿密な市場調査と現地のパートナーを見つけることが不可欠だ。

そんな海外進出に悩む日本企業に向けたイベント「Next Silicon Valley」が8月29日、東京ミッドタウン日比谷にて行われた。イベントでは世界から注目が集まる地域で、現地に根ざして活動するVC、アクセラレーターが集まり、現地のマーケットについてリアルに語ってくれた。

今回イベントに登壇したのは中国、ブラジル、ロシア、イスラエル、アフリカ、インドの6ヶ国で活動する投資家たち。イベントは2部構成になっており、前半はWIRED日本版編集長、松島倫明氏のキーノートスピーチから始まり、各国のショートセッションが行われた。後半は各国で活動する6人の投資家がステージに上がりパネルディスカッションが行われ、最後にグローバルな市場を狙うスタートアップ8社によるピッチによって幕を閉じた。

今回はイベントの中でも、パネルディスカッションとスタートアップ8社のピッチに焦点を当ててレポートする。

各国それぞれのマーケットの強みと弱み

パネルディスカッションでは、イベントを主催であるシェアエックス株式会社のCQO池田将氏がモデレーターとなり、ゲストたちに話を聞いた。最初のテーマは各国のマーケットの強みと弱みに関して。それぞれどのような違いがあるのだろうか。

寺久保氏(アフリカ)「アフリカのマーケットの強みは、まだインフラが完全に整っていないため、スタートアップでもインフラビジネスに参入できることです。既存のプレーヤーがいても、サービスが充実していないため、まだまだ入り込める余地があります。

例えばアフリカではこれまで、郵便物は富裕層しか受け取れませんでした。郵便物を受け取るのに年間42ドルを支払わなければならないため、貧困層は郵便物を受け取れなかったのです。しかし、現地のスタートアップが年間3ドルで郵便物を受け取れるサービスを作り、貧困層に支持を得ています。このように既存のプレーヤーがカバーできないサービスを作ることで、スタートアップがインフラを作れることは面白く、強みになるかと思います。

逆に弱みを挙げるならば、スタートアップがサービスを提供するのと、インフラ環境が整うのが時間の勝負であることです。また、アフリカは決してGDPが高くはないので、一人あたりからとれる収入が限られていることも留意しなければなりません。」

▲Samurai Incubate Africa / 代表 寺久保 拓摩氏

寺田氏(イスラエル)「イスラエルの強みはなんと言っても技術力ですね。この点に関して言えば、世界でもトップクラスだと思います。特にC向けサービスでは、UI・UXに特化したサービスが強みを持っています。一方でイスラエルはヘブライ語を公用語にしており、その人口は900万人と少ないです。そのためC向けのサービスでは、大きなマーケットは期待できません。

あとは強みとも弱みともとれることですが、イスラエルの人たちはネゴシエーションがとてもハードです。例えば、私が日本人のクライアントとの間に入った時、日本企業の方から”10年以上海外との折衝をしているけど、今までで一番キツかった”と言われました。

私は長くイスラエルにいるので慣れてしまっていますが、慣れていない方にとっては厳しいと思います。ネゴシエーションが強みである反面、海外に出るときはそのようなカルチャーを翻訳する人が必要ですし、イスラエルの市場に参入する場合は順応しなければいけません。」

▲Aniwo Ltd. / Founder & CEO 寺田 彼日氏

Pavel Korolev 氏(ロシア)「ロシアの強みは、ITのスペシャリストや各業界の学者が多くいることです。そして、そのような人たちの人件費が安いため、あらゆる開発を自分たちが持っているITセンターで開発するようにしています。

また、2つ目の強みとして、B向けのビジネスが発展していることが挙げられます。テクノロジーのパイロットをローンチすることに対してみんなオープンですし、そのためのインフラやファイナンス、ロジスティクスの分野が整備されています。さらに3つ目の強みは、5G回線への準備が進んでいることです。国土の90%はネット環境がカバーしていますし、EC市場の成長率は年間30%です。

弱みとして挙げられるのは法規制が弱いことです。その点に関しては私たちが英国法や、アイルランドの法律を使いながら制度を作っているところです。また、国際的なビジネスディベロップメントに関してコンピテンシーが弱いことも挙げられます。その点に関しても私達が海外のアクセラレーターと組みながら改善を図っていますね。」

▲Pulsar VC マネージングパートナー Pavel Korolev氏

中山氏(ブラジル)「ブラジルの強みはマーケットが大きいことです。インドと中国の方に挟まれながらこんなことを言うのは気が引けますが、世界で5番目の人口を誇っていますね。あとは外資規制が少ないことも魅力です。日本の投資家が投資をしてキャピタルゲインが出ても、そのまま利益にすることができます。

弱みというか、チャンスとも捉えられますが、ブラジル発で面白いスタートアップが少ないことです。ライドシェアで言えばUBERがマーケットをとっているので、それを考えると海外から参入する企業からすれば面白い市場だと言えます。それだけ外資のサービスに対して許容度が高いので。もう一つ言えるのは規制や法規関係が複雑だと言うことです。海外から来た人は面食らってしまうかもしれません。しかし、ブラジルに10年もいれば困りませんし、そのような人をパートナーにすれば大丈夫でしょう。」

▲株式会社ブラジルベンチャーキャピタル / 代表 中山 充氏

ブラジルのマーケットに関して、モデレーターの池田氏から質問が入る。

池田氏「ブラジルはリオのカーニバルが代表するように、踊ったり歌ったりするのが好きな国民性だと思います。そのため、毎月の収入のうちエンタメサービスに使う割合が比較的高く、エンタメ系のスタートアップが成長していると聞いたのですが事実ですか?」

中山氏(ブラジル)「エリアにもよると思いますね。ハイパーインフラを経験している国なので、お金は貯めずに使ってしまえ、と思っている方は多いです。しかし、意外にも財布は紐は固く、無料のサービスには飛びつきますが、お金がかかるサービスには抵抗があります。そのためフリーミアムのサービスはやりづらいです。」

流れはそのまま中国の強み弱みに。

KAY MOK KU氏(中国)「中国の強みは、どんなビジネスをやるにしても、政府がサポートしてくれることですね。中国の法人は国からさまざまな支援を受けられます。弱みとしては超コンペティティブな環境であることです。つまり、超競争社会でして、グルーポンをコピーしたサービスが5,000以上あったのは有名な話です。」

▲GOBI PARTNERS / MANAGING PARTNER KAY MOK KU氏

村上氏(インド)「インドの強みはなんと言っても優秀な人材が多いことです。大学を卒業したばかりでも、FacebookやGoogleといった世界的な企業から、年収1,000万円のオファーが出るほど優秀な人がいるのも有名ですね。また、人材の流動性が高く3年に1回は転職するので、数人のスタートアップを経験した人間や、自分で起業した経験のある方が転職市場に人材も大勢います。

一方、弱みに関してですが、エコシステムとしての弱点はあまりないと思います。強いて言うなら、中国ほどではありませんがコンペティティブな環境であることです。いい会社が出てきて大型の資金調達をしたと思ったら、2週間後には競合が10社20社現れるのは日常茶飯事です。」

▲Incubate Fund India / 代表 村上 矢氏(インド・ベンガルールからオンラインでの参加)

ーー国によって強み弱みは様々だ。それぞれの国の特徴を理解しなければ、海外進出をするのは難しいだろう。

海外進出のためにまず現地の情報を集めること

次のテーマは「海外に進出するために、まず何から手をつければいいか」という内容。それぞれの投資家からアドバイスを募った。

寺久保氏(アフリカ)「まずは現地の人がどんな課題を知ることがスタートですね。課題を知るには各産業にどのようなプレーヤーがいて、それぞれのステークホルダーがどのような悩みを持っている分析しなければなりません。一般消費者にもインタビューを行い、現地の生活感を理解しながら、課題感を掘り下げていくことが大事だと思います。」

寺田氏(イスラエル)「ドメインにもよりますが、そもそもイスラエルでやるべきなのかというところから、調査して考えなければなりません。会社の戦略にマッチするのか、小さい予算から始めて調査していきます。数百万の予算を組んで現地を訪問し、ステップ・バイ・ステップで進めていくのがいいですね。小さくバジェットを確保してできそうならやる、というサイクルをいかに早く回すのかが重要です。あとは信頼できる現地のVCを探して組むことも重要です。」

Pavel Korolev 氏(ロシア)「ロシア人は日本のことが好きですし、日本のサービスはハイテクだと思っています。既に日本の大企業はロシアに進出しているので、日本企業はロシアには進出しやすいと思います。もしもロシアの市場が有望だと感じたのであれば、ロシアに法人を作るのをおすすめします。法人を作ることで現地のビジネスのスピードを上げられますし、国からの支援も受けられます。もう一つおすすめするのはロシアのベンチャーフォーラムを訪問することですね。毎年4月に開いているフォーラムでして今年で15年目になります。ロシアのさまざまなベンチャー企業に出会うことができますよ。」

中山氏(ブラジル)「海外進出をすることは新規事業だと思った方がいいですね。ゼロから事業を始める意識でなければいけません。そのため、3年以内に黒字化したいと思っているなら海外進出は辞めた方がいいでしょう。黒字化するのに10年スパンで考える必要があるため、転んでも痛くない予算で始めるのがおすすめです。どの地域に進出すれば成功するかというのは、最初は分からないので、投資と同じ様にうすく広くいろんな国に張っておくといいと思います。」

村上氏(インド)「海外進出は焦らないことが重要です。海外進出に失敗している企業のほとんどはパートナー選びに失敗しています。誰と組んで攻めるかというのはとても重要なので、パートナー選びには時間とお金をかけなければなりません。進出した後もじっくり腰を据える必要があって、数年は赤字を出す覚悟で、時間軸を長めにとって考えることが重要です。あとは現地の情報をどのように収集するかということも大切ですね。最近では進出する前に現地のVCにLP出資して、現地の情報を吸い上げる日本企業も増えています。」

テーマを変えて会場からも質問を募集した。まず挙がったのは「日本人のビジネススキルの課題感は何か」という質問。

村上氏(インド)「日本の企業はスタンスを明確にしないですね。私もよく日本企業に頼まれて現地の企業を繋げるのですが、次のアクションが曖昧になることが多いです。興味があるのかないのか、もしあるなら次は何をするのか明確に意思表示する姿勢が海外に比べて弱いと思います。スタンスがわからないと周りも動きづらいため、迷惑をかけることになりかねません。」

ーー次に挙がったのは「現地の人材を採用する時に、どのようにスクリーニングをすればいいか」という質問だ。

寺田氏(イスラエル)「これはイスラエル独特のことだと思うのですが、イスラエルではみんな軍隊に憧れて入ります。軍隊で同じ釜の飯を食っていれば、その人が信頼できる人間かどうかは自ずと分かるものです。そのためイスラエルでは、リファーラル採用がとても重要になってきます。イスラエルで優秀な人材を採用したいのであれば、友達つてで紹介してもらうのが一番確実だと思いますね。」

中山氏(ブラジル)「私の事例ですが、現地のカントリーマネージャーを採用する時は、ともかく数を当たりましたね。結果的に1人採用するのに1000件のレジュメを見て、80件の面接のオファーを出し、40人と面接をしました。その40人にも宿題としてビジネスプランを持ってきてもらうのです。そうすれば現地の市場感も、人材採用の基準も分かります。ほとんどの日本の企業は、日本語は話せる人かどうかで選びますが、それではいい人材を採用できません。とても大変なように感じるかもしれませんが、先程の話も1ヶ月くらいのことです。海外でビジネスを成功させたいと思うなら、それぐらいは覚悟しないと無理ですね。」

グローバルスタートアップ8社によるピッチ

イベントの最後にはグローバル市場を狙うスタートアップ8社によるピッチが行われた。それぞれどのような事業を展開しているのか紹介していく。

■ライクPay

誰もがインフルエンサーになれるプラットフォームを展開。客として利用した美容室やカフェの写真をタグ付けして投稿し、いいねが集まれば加盟店で割引が受けられる仕組みを作っている。現在5名で活動しており、2回のエンジェル調達を達成。

■アメグミ

インドのスマホ普及率を上げる「SUNBLAZE Phone」という事業を展開するスタートアップ。スマホのビジネスモデルを変え、法人向けにスマホを販売することで、インドで誰もがスマホを持てる社会に変革しようとしている。

■ANYMIND(エニーマインド)

インフルエンサー領域のプラットフォームを開発するシンガポール発のスタートアップ。企業のマーケティング担当者がインフルエンサーを探して管理し、有効活用して効果検証するまでを、ワンストップで行えるソリューションを提供している。

■Sagri(サグリ)

インドに拠点を起き、途上国の低所得農家を救うビジネスを展開するスタートアップ。天候や農業ノウハウ、土のデータから、農家の信用スコアを示し、農家が現地の金融機関から資金調達しやすくなるサービスを開発している。

■HUMANEYES(ヒューマンアイズ)

2000年創業のイスラエルのベンチャー企業。一台で360°カメラとVRカメラがセットで使えるカメラを開発している。カメラで撮影した動画を編集できるソフトも提供しており、これまでにない映像体験を提供している。

■Bolome(ボロミー)

越境EC事業を行う中国のスタートアップ。中国のインフルエンサーを活用することで、日本の商品を中国で販売するためのプラットフォームを開発している。これまで100ブランド以上のプロモーションを行ってきた実績を持つ。

■WASSHA(ワッシャ)

アフリカでLEDランタンのレンタル事業を展開する、東京大学発のスタートアップ。アフリカではスマホが急激に普及するも、都市部から離れると電気が通っておらずアルコールランプで生活している。灯りにもなり、スマホの充電もできるランタンを、現地の小売店と提携してレンタルしている。

■LEVIAS(レビアス)

ブロックチェーンを使って新しい経済圏を開発するスタートアップ。アフリカ初のブロックチェーン国家となったシエラレオネ共和国に、ブロックチェーンによる国家管理システム、社会システムの提供を行った。

取材後記

マーケットの縮小が確実視される日本において、海外に打って出る必要性があるのはスタートアップから大企業も変わらない。大事なのはどの国に展開するかということだ。国によって生活文化も違えば、法規制も異なる。自分たちのビジネスが受け入れられるかどうかは国によって大きく違うだろう。

そしてさらに大事になるのが現地のパートナー。信頼できるパートナーを見つけることは海外進出の必須項目と言っていいだろう。イベントで登壇したゲストたちも、日本の優秀な企業と現地の企業を繋げるために邁進している。今後日本が世界での競争力を高めていくために、海外に進出する企業が増えることを期待したい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平、撮影:古林洋平)

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  • Ayuko Nakamura

    Ayuko Nakamura

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    中国、ブラジル、ロシア、イスラエル、アフリカ、インドの6ヶ国のお話。リアルな現地の情報がわかるイベントのレポート。
    
    事実を飛ばして意見や考察を聞くことは空論を広げてしまう。ふんわりした空論や、妄想や期待、そういうものをクリアにして整理するには意見を求める前に事実を「自ら知ること」が絶対的な近道であり本質的だと思うこの頃です。
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