東芝と金沢大学、AIを活用した糖尿病性腎症重症化予防の共同研究を開始
国立大学法人金沢大学医薬保健研究域医学系の和田 隆志教授らの研究グループと、株式会社東芝、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、糖尿病性腎症の重症化メカニズムの解明により精密医療の実現を目指す共同研究を開始した。同共同研究では、東芝デジタルソリューションズのアナリティクスAI 「SATLYS™」(※1)を活用することで、透析導入および重篤な合併症を引き起こす可能性がある糖尿病性腎症重症化メカニズムを解析する。さらに、リスクごとに詳細に層別化・体系化された予防法を開発することで、患者のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上を目指す。
日本は、台湾に次ぐ世界第2位の人工透析大国であり、透析患者数は国民の約380人に1人、約33万人にも及ぶ。中でも、糖尿病性腎症に起因する透析患者数が最も多く、全体の4割以上を占めている(一般社団法人日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」から引用)。人工透析が必要になると、透析治療によりQOLが低下するだけでなく、1人当たり年間約500万円の医療費負担、国全体では年間約1.6兆円の公的医療費が必要となる。このため、糖尿病性腎症の重症化を予防することは健康寿命を延ばすだけではなく、医療保険財政を健全化する点からも喫緊の課題という。
同共同研究では、金沢大学が持つ長期経過観察を伴い腎生検(※2)で診断した糖尿病性腎症例の臨床・病理情報を用いて、金沢大学の高度な医学的な知見と東芝デジタルソリューションズのアナリティクスAI「SATLYS™」の活用により、糖尿病性腎症の重症化メカニズムの解明を目指して研究開発を行う。東芝グループは、「東芝Nextプラン」において「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療を中核として医療事業への本格的な再参入を表明している。アナリティクスAI「SATLYS™」により、糖尿病性腎症患者を複数のパターンに分け、層別化・体系化された最適な予防法の開発が期待できるという。これにより、疾患の早期治療・進展予防、さらには病状の悪化を防ぐ可能性を見いだすことで、患者のQOL向上を目指していく。
▲図)本共同研究で目指す糖尿病性腎症患者の重症化パターン別の予防法開発
※1 東芝アナリティクスAI 「SATLYS™(サトリス)」……東芝の「ものづくり」の実績から得た知見をAIの設計に生かし、高精度な識別、予測、要因推定、異常検知、故障予兆検知、行動推定などを実現するAIサービス。
※2 腎生検……タンパク尿、血尿、腎機能低下などの腎臓病を患っている患者に正確な診断を付け最もふさわしい治療法を決定するために、腎臓の組織の一部を採り、顕微鏡で評価する検査方法。
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(eiicon編集部)