サントリーとTOWING、飲料製造残渣から高機能バイオ炭を本格製造 収量約30%増を確認し地域循環モデル構築へ
サントリーホールディングス株式会社と、名古屋大学発のグリーン・アグリテックスタートアップである株式会社TOWINGは2026年6月、飲料製造工程で発生する残渣を活用した高機能バイオ炭の本格製造を開始すると発表した。両社はこれまで実施してきた実証実験において、作物の品質を維持したまま収量を約30%向上させる効果を確認しており、今後は九州地区を起点とした地域循環モデルの構築を進める。また、タイでの実証実験も推進し、東南アジア地域における環境課題の解決にも取り組む。
茶粕を活用した高機能バイオ炭で収量向上を実証
今回の取り組みは、飲料製造過程で発生する茶粕などの製造残渣を新たな資源として活用し、持続可能な農業の実現につなげることを目的としている。
両社は2025年5月から共同実証を実施。サントリーグループの飲料工場から排出される茶粕を原料としてバイオ炭を製造し、そこにTOWINGが保有する有用微生物群を培養することで高機能バイオ炭を開発した。
この資材をサントリーと契約するチャノキ農園へ散布した結果、第1期、第2期のいずれの実証においても、収穫物の品質を維持しながら収量が約30%増加したことを確認した。収量向上と品質維持を両立できたことから、再生農業の実践を支える有効な資材として期待が高まっている。
九州熊本工場を起点に地域循環モデルを構築
実証成果を受け、両社はサントリー九州熊本工場で発生する製造残渣を原料とした高機能バイオ炭の本格製造を開始する。
製造した高機能バイオ炭は原料供給元であるチャノキ農園へ還元される予定で、工場から排出された残渣を農地へ循環させる地域資源循環の仕組みづくりを進める。従来は廃棄物として扱われることもあった製造副産物を農業資材としてアップサイクルすることで、資源循環と農業生産性向上の両立を目指す。
また、高機能バイオ炭の活用によって有機肥料の利用効率向上が期待されることから、化学肥料使用量の削減にもつながる。化学肥料由来の温室効果ガス(GHG)排出を抑制しながら、農地への炭素固定も実現できる点が特徴だ。
タイでも実証を推進 野焼き問題の解決へ
両社は国内にとどまらず、海外での展開も進めている。
タイでは、農業残渣であるもみ殻を活用した高機能バイオ炭を製造し、現地のサトウキビ畑へ施用する実証実験を2025年から実施している。現在は第2期実証に入っており、収量向上効果や土壌改善効果の検証を進めている。
東南アジアでは農業残渣の野焼きが深刻な大気汚染の原因となっている。こうした残渣を高機能バイオ炭へ転換できれば、農業生産性向上だけでなく、野焼き削減による環境負荷低減やGHG排出削減にも貢献できる可能性がある。
名古屋大学発スタートアップ「TOWING」の技術力
TOWINGは2020年創業の名古屋大学発スタートアップで、「サステナブルな次世代農業を起点とする超循環社会の実現」を掲げて事業を展開している。
同社が開発した高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」は、地域の未利用バイオマスや食品工場残渣を原料とし、バイオ炭に有用微生物群を定着させた農業資材だ。土壌環境を短期間で改善し、作物の品質や収量の安定化を支援するほか、有機質肥料の利用効率向上による化学肥料削減効果も期待されている。
さらに、炭素を長期間土壌中に固定することでカーボンクレジット創出にもつながることから、農業分野における脱炭素化技術としても注目を集めている。
サントリーグループはこれまでも製造残渣の100%再資源化を進めてきたが、今回の高機能バイオ炭事業は、単なるリサイクルにとどまらないアップサイクルの取り組みとして位置付けられる。両社は今後も持続可能な農業の推進を通じて、カーボンニュートラルと循環型社会の実現を目指していく方針だ。
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(TOMORUBA編集部)