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警鐘!オープンイノベーションは「目的」ではない

警鐘!オープンイノベーションは「目的」ではない

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新規事業の創出から実行までの支援を行うBornrex(ボーンレックス)とオープンイノベーションのプラットフォームeiiconによる共催イベント【Open Innovationレシピ】が、インキュベーション施設「CO☆PIT」(東京都港区港南)で開催された。第一回目となる今回は『Open Innovationを成功に導く3要素をひもとく』をテーマにパネルディスカッションやインタラクティブセッションが実施され、成功事例や心構えなどが紹介された。

<Bornrex企業概要> http://www.bornrex.com/

「自分の人生を生きる」をミッションに掲げ、大手企業及びベンチャー企業に対する新規事業立ち上げ支援、創業支援を行う。事業立ち上げにコミットすることに強みを持ち、「案があっても動けない」という場合、同社がドメイン内で、リリースまで立ち上げきり、クライアントに売却する「代理出産モデル」を手がける。

新規事業立ち上げの伴走型支援の他、JVの設立や、事業の座組み、制度設計の支援も行う。ベンチャーへの「力ぞえ」サービスとして、コンセプトメイキングから資金調達支援、ハード・ソフト開発、マーケティング支援等、立ち上げ全般を網羅し、ハンズオンで想いの実現にコミットしている。

そもそもオープンイノベーションとは何か?そして必要なのか。

Bornrex・森田幸恵氏が登壇し、改めて「オープンイノベーションとは?」について解説を行った。まずオープンイノベーションを「企業の境界線を越えて、社内だけなく、社外のリソースを活用し、生み出していくこと」と定義されると伝えた。

オープンイノベーションが引きおこるプロセスについて、OPENとINNOVATIONの2つのフェーズがあり、順に「協業先との出会い」から「新規事業立ち上げ+事業リソース(運用)」と進んでいくと提示。さらに、オープンイノベーションの必要・有用性については、2000年の段階で研究とイノベーションのアイデアの50%を社外から調達すると宣言したP&Gの事例を出し、同社では現在までに売上2倍以上にした実績を紹介した。

また、森田氏はオープンイノベーションを成功に導くには3つの要素が必要になると話す。それが以下の項目だ。

①社外共創パートナー

②社内立ち上げ力

③社外サポーター

このうち、「社外共創パートナー」はスタートアップや提携先企業を指し、「社外サポーター」は事業実施後、イノベーションを加速させるコンサルティング企業など支援会社を指しているという。それらの3つの要素を交えることで、オープンイノベーションの成功確度が高まっていくと話す。

オープンイノベーションはあくまで方法論の一つ。

続いて、「オープンイノベーションそもそも論とその必要性」という切り口でパネルディスカッションが実施された、Bornrex代表である室岡拓也氏、eiicon代表の中村亜由子氏が登壇、森田氏がモデレーターを務めた。

▲Bornrex 代表取締役 室岡拓也氏

慶應義塾大学 経済学部卒業(金融・マクロ経済学専攻)。三井物産株式会社入社後、インフラ事業投資、プラント輸出事業、CDM事業等に従事。他、家庭教師・塾講師紹介・派遣事業研薦会創業やスペイン語オンライン会話サービスSPANISIMO創業に関わる。

このセッションでは、「オープンイノベーションはイノベーションや新規事業を創造する一つの手法、方法論であり、成功させるには地道な努力の積み重ねが必要」と強調された。一方で、「オープンイノベーションそのものが目的となり、必ず成功すると見なされているところがある」と警鐘を鳴らす。

中村氏は「『新規事業はオープンイノベーションで行う』で済ませているケースがある」ことを取り上げ、それでは具体性に欠き、何も言っていないに等しいと指摘。同時にアクセラレータープログラムの隆盛についても触れ、「相性のいい企業と出会えたのに、『ウチのアクセラレータープログラムに応募してほしい』という、手段と目的を取り違えたコミュニケーションが発生することも起こってしまっている」と現状発生している問題にも言及した。

室岡氏は「新規事業や実現したいことをやり遂げるため、力が及ばない部分を他社に頼ることと捉えればいいのではないか」と提案した。

▲eiicon company 代表/founder 中村亜由子

東京学芸大学を卒業し、株式会社インテリジェンス(現 パーソルキャリア株式会社) に入社。入社後は、最速で営業マネージャーに昇進、約1000名の転職をサポート、MVP他社内表彰受賞歴多数。2015年育休中にeiiconを単独起案。2016年4月に育休から復職後、予算取りに駆け回り7月から本格的に立ち上げを開始。 地の利に関係なく地方含めた日本企業のオープンイノベーション実践をアシストするオープンイノベーションのための企業検索ぷらっとフォームeiicon(エイコン)を担う。

社外共創パートナーを見つけるには、目的を明確にすること。

次にインタラクティブセッションは、オープンイノベーションを成功に導く3要素を軸に、

①社外パートナーとの競争で重要な視点とは?

②社内で立ち上げる力を上げるために重要な視点とは?

③社外サポーターの力の上手な活用方法は?

といったテーマに対して、会場からの質問に応える形で進められた。

一口に社外の共創パートナーといっても、必ずしも「大企業×スタートアップ」に限らない。<図1>はeiiconによる分析だ。ここに示されるように大企業・スタートアップ両者の生態が異なることを踏まえた上で、「大企業×大企業」、「スタートアップ×スタートアップ」、また複数社間での協業はあってよく、実際、規模の大小に問わず協業が成されている例は多くあるという。重要なのは「目的の明確化」であり、何のためにどのようなパートナーを探すかを事前に明らかにしておくことが大切であると中村氏は指摘。

<図2>にある「オープンイノベーションを阻む5つの壁」でも紹介されているように、連携したい事業領域が明確でなければ”オープンイノベーション迷子”ともいえるような状態に陥ってしまう。中村氏は「共創パートナーと何をしたいかが明言でき、さらにそのビジョンが合致している相手と出会えれば、今物理的にできないことがあっても、将来的にはうまく共創できることもある」と事例を交えて解説した。

いくつかの事例では、「なぜ自社一社ではできないのか?」というオープンイノベーションという方法に踏み切る理由と、さらに「詳細には何をしたいのか?」を紐解き、公示することで理想的なパートナーとの出会いを創出できたという。

<図1>大企業とスタートアップの違い

<図2>オープンイノベーションを阻む5つの壁

社内立ち上げ力をアップさせるには、メディアの積極的な利用を。

社内で実際に事業を立ち上げるには、キーマンを見つけること、十分に交渉すること、状況を見て勝手に始めること、が有効と伝えられた。多少強引な手段を取ったとしても、「実践し物事を前に進めることが有効だ」と話す中村氏。加えて、メディアの力を借りることも有効だと伝えられた。

メディアで発表されたら「社内は動かざるを得なくなる」と室岡氏。同時に社内の発言力も増すという。このため、記者と親しくなることが重要だが、知り合いがいない場合はオープンイノベーションのイベントなどに足を運べば、必ずメディア関係者はいると伝えられた。

また会場からは、「アクセラレータープログラムを実施し、現場の効率化を目的にあるサービスの導入を図ったが、現場に受け入れらなかった。どうしたらよいか?」との質問が寄せられた。これに対し室岡氏は「前向きに話し合いのできる10人程度のスタッフを集め、超スモールで始めてみてはどうか。その上で、現場の声に耳を傾け、必要に応じて改善・改良するのがいい」とアドバイスした。

社外サポーターの声は強い。

メディアと同様に、社外の声も、社内を動かす大きな力となる。社外から「なぜやらないのか」と言われると、社内は動き出すことが多いという。また、経営陣に対しても、「遠慮なく意見を伝えられる」(室岡氏)ことが社外の強みとのことだ。

多様なノウハウを持つコンサルティング企業は多くあるが、一方で、「事業計画の作成という根本的な部分から頼ってしまうケースも見受けられるが、担当者が内容を把握できていない事象にも出会うことがある。もちろんそれではうまくいかない」と中村氏は伝える。アドバイスを受けながらも、自らが作るべきだと力説した。室岡氏は「パッションがあるから先に進める。実現への思いが強ければ支援者も集まってくる」と締めくくった。

取材後記

オープンイノベーションについて中村氏は「1を100にする側面もあり、日本に向いている方法論」と言う。近年盛り上がりを見せる、新しい手法ではあるが、本イベントで伝えられたように、現在までに具体的な事例なノウハウも徐々に蓄積され始めてきた。また、歴史を振り返ってみれば、新たな事業を始める際は、外部との協業が当たり前に行われてきた。それが、ある時期に自前ですべて行う文化に切り替わったに過ぎない。実現したいことがあるのなら、なりふり構わずということではないが、積極的に外部の力に頼るのがむしろ本来のあるべき姿なのではないだろうか。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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