【イベントレポート/CHANGE THE RULES】 「eiicon」のマンスリーミートアップイベント第16回 ~インバウンドでビジネスはどう変わる? 訪日外国人数1937万人(2015)→6000万人?!(2030)~
オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」の月一ピッチイベント「eiicon meet up!! vol.16」は6月26日、東京ミッドタウン日比谷のビジネス連携拠点「BASE Q」で開催されました。
今回のテーマは、「インバウンドでビジネスはどう変わる? 訪日外国人数1937万人(2015)→6000万人?!(2030)」。株式会社JTBでオープンイノベーションなどを推進する吉永善顕氏が登壇し、インバウンドに関する具体的な取り組みや協業のポイントを伝えました。これに加え、スタートアップの2社、タンブルバー株式会社と株式会社Payke(ペイク)がピッチを実施。会場に訪れたオープンイノベーション/新規事業の担当者たちが、熱弁に耳を傾けました。講演とピッチの内容は以下の通りです。
大手×大手の協業でも、スピード感を出す方法がある。
▲登壇者/株式会社JTB 訪日インバウンドビジネス推進部 訪日インバウンドビジネス推進担当マネージャー 事業戦略・開発統括 吉永善顕氏
1998年、株式会社JTBに入社。 2014年より訪日インバウンドに関するJTBグループの事業戦略立案・推進に従事している。
吉永氏は、JTBが現状、アウトバウンドを中心に事業を展開していますが、もともとはインバウンドの会社だった歴史に触れました。現在も、多様な取り組みを行っているものの、大きなビジネスに育っていない現状があるということです。インバウンドに関しては、来訪者は2018年に3000万人、2020年に4000万人、2030年に6000万人と、オリンピック後も伸び続けるとの予測を紹介。――「訪日消費も30年で30兆円に上る可能性もある」と強調しました。
これまでJTBでは現地に行くまでを主なビジネス機会と見ていますが、「今後は現地(日本)に着いてからの『旅ナカ』に注力したい」と語ります。旅ナカはマネタイズが難しいとの異論もあるそうですが、「チャレンジしたい」と決意を表明しました。現状、旅ナカについて有用なデジタルコンテンツはほぼ皆無で、大きなチャンスが潜んでいると見ます。
同社では、日本マイクロソフトとナビタイムジャパンとの協業で、観光モデルプランや観光スポットの情報などを提供するアプリ「JAPAN Trip Navigator」(https://www.jtbcorp.jp/jp/colors/detail/0148/)を開発、リリースしました。3社はわずか4日間でプロトタイプを作り上げましたが、失敗することを前提に形にし、その上で改良・改善を繰り返したと言います。吉永氏は「このようにすれば、大手でも迅速な動きが可能になるのではないか」と提案しました。今後、同アプリはパートナーを募り、より良いプラットフォームにしたいと、協業を呼び掛けました。
オープンイノベーションを効果的に進めていくために
吉永氏はこれから大手やスタートアップとの協業を進める上で、重要なこととして以下を強調します。
◆パートナーとビジョンを共有する。
◆自社とパートナー双方のメリット・デメリット、リスクを明確にする。
◆双方の立ち位置など「諸事情」を理解する。
これに加え、吉永氏は、「マネタイズが見えにくいプラットフォームづくりは大手と、斬新なアイデアが欲しい場合はスタートアップとの協業が望ましいのではないか」とアドバイス。また、関連会社などがある場合、まずは社内のサービスを使うと考えがちですが、質やスピードを比較し、より優れているほうとの連携を図りたいと強調しました。
【スタートアップピッチ①】 タンブルバー株式会社
▲登壇者/タンブルバー株式会社 代表取締役 茅野智路氏
同社は現地の生の情報を、現地の人から収集できるアプリケーション「Pod pics」を運営しています。アプリの使い方は簡単で、現地の写真をアップロードするだけ。情報の提供者には1件数十円の支払いがあると説明しました。創業から1年ながら、現在までに既に国内ユーザー120万人と連携し、北海道、離島なども含め、現地情報を提供できるようになっているそうです。
茅野氏はこれまでの事例として、「1500か所の現地調査を2週間で済ませた実績がある」と紹介しました。具体的な利用方法として、例えば、駐車場のリアルな使用状況などを調査などがあります。一般的な調査会社に依頼するよりリーズナブルな額で情報を提供できる特徴もあるとのこと。インバウンドでの利用については、Webでも探せないようなローカルな情報を、来訪者に提供することを目指したいと強調。現地情報の収集は既に始まっているそうです。同社では、インバウンドをはじめ、さらなる利用の拡大を図り、協業を呼び掛けました。
【スタートアップピッチ②】 株式会社Payke
▲登壇者/株式会社Payke(ペイク) 代表取締役CEO 古田奎輔氏
同社は、バーコードから商品情報を多言語で引き出せるスマホアプリ「Payke」を提供しています。現在は7カ国語に対応し、バーコードに、動画や画像、口コミなど消費者向けコンテンツを付随させ、「商品がオウンドメディアを持つ」ことが可能とのことです。ペイクは海外ではテレビニュースにも取り上げられるほど注目されており、「日本に来るには必須のアプリ」という地位を確立していると強調しました。
また、ペイクを導入することで、パッケージにはない情報を提供でき、商品の購入率も上がるほか、店舗従業員にとって負担の軽減にもなると説明されました。現在までにペイクの導入は首都圏を中心に1100社を超えているそうです。今後は地方の企業との協業をはじめ、消費者行動をデータ化できるため、データの利用も図りたいと意欲を見せました。
次回のeiicon meet up!!は、「暮らし」に注目!
7月31日(火)19:30~の開催を予定している次回のeiicon meet up!!は、「暮らしのイノベーション。10年後の当たり前を創る」がテーマ。アスクル株式会社のイノベーション秘話を聞き、その後、「10年後の当たりまえの暮らし」に向けて挑戦をしているスタートアップに登壇いただきます。イベントの詳細や参加申し込みは以下URLからお願い致します。
https://techplay.jp/event/680199
取材後記
観光、特にインバウンドは今、日本でもっとも注目されるビジネスの一つであると言えます。国を挙げて注力しているのは周知の通り。一方、観光やインバウンドというと、有名な観光地を想像しがちです。しかし、成否のカギを握っているのは、「旅ナカ」、つまり、日本国内でどう過ごしてもらうか、どのように消費行動を起こしてもらうかなのではないでしょうか。JTBの吉永氏の取り組みや、スタートアップのピッチを聞きながら、展開はさまざまにあると考えられました。これからの新たな取り組み、日本をより楽しめるものの出現に期待が高まります。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:佐々木智雅)