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【イノベーター対談】 ロボットコミュニケーター吉藤氏×eiicon・中村 ~物理的制約を超え「働く」を実現し、さらにその先へ~

【イノベーター対談】 ロボットコミュニケーター吉藤氏×eiicon・中村 ~物理的制約を超え「働く」を実現し、さらにその先へ~

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eiicon company 代表/founderの中村 亜由子は、2018年6月中旬より、産前のリモート勤務に入った。産後も育休は取得しないもののリモート勤務で復帰予定だ。そこで遠隔操作型分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を導入。今回はこうした背景もあり、OriHime開発者であるロボットコミュニケーター・吉藤健太朗氏との対談が実現した。

▲「OriHime」Webサイトより http://orihime.orylab.com/

OriHimeは人工知能ではない。カメラ・マイク・スピーカーが搭載されており、家や会社など行きたいところに置き、インターネットを通して操作できる。そのため、物理的に離れた場所にいながら、あたかもそこにいるかのような臨場感を醸し出すことができるのだ。――まさに「分身」であり、自身のもう一つの「身体」となって、コミュニケーションを取ることができる。

例えば、神経難病により身体を動かすことができなくても、OriHimeを導入すれば自由に視界を操ったり、文章をロボットに読み上げさせることで会話をすることが可能。さらには、身体的、精神的な理由で学校に足を運べなくても、OriHimeを用いることで友達を作ったり、遊んだり、思い出を残すこともできる。近年では在宅・遠隔勤務での導入例も増えてきているという。

OriHimeというイノベーティブなプロダクトが、今後社会にどんな価値をもたらすか、また、その活用はどのように広がっていくだろうか。――eiicon・中村が、吉藤氏に話を伺った。

▲吉藤健太朗(よしふじ・けんたろう) 株式会社オリィ研究所代表取締役所長 ロボットコミュニケーター

小学生、中学生で引きこもりを経験。高校では電動車椅子の新機構の開発を行い、科学技術フェアJSECで文部科学大臣賞を受賞。世界最大の科学大会Intel ISEFではGrand Award 3rdを受賞した。2009年から孤独の解消を目的とした分身ロボットの研究開発に専念。2011年、分身ロボットOriHime完成。2012年、株式会社オリィ研究所を設立。青年版国民栄誉賞「人間力大賞」、スタンフォード大学E-bootCamp日本代表。AERA「日本を突破する100人」、米国フォーブス誌「30Under 30 2016 ASIA」などに選ばれる。

大手企業も、テレワークでOriHimeを活用

eiicon・中村 : OriHimeは現在、私のオフィスに置いています。eiiconのチームメンバーからは、「中村がいるようだ」と好評です(笑)。

オリィ研究所・吉藤氏 : それは嬉しいですね。使ってみた感想はいかがですか。

eiicon・中村 : オフィスの様子が伝わってくるので、みんなと一緒にいるような感覚になります。つながっているという気がしますね。やはりOriHimeはテレワークで使われることが多いのでしょうか。

オリィ研究所・吉藤氏 : そうですね。昨年はテレワークに対する国の後押しもあり、この分野が大きく伸びました。当社としてもテレワークについて学びを深め、「できる仕事が少ない」、「労務管理がしづらい」、「コミュニケーションが不足しがち」、という3つの課題を見つけました。これらの課題のうち、特にコミュニケーションについては、もともとOriHimeが解決しようとしていたことです。その意味で、相性が良いと言いますか、親和性は高いと捉えています。大きな実績としては、通信大手企業様に約70台、導入いただきました。主に、産休・育休中の方が使っているようです。

eiicon・中村 : 私と同じですね。

オリィ研究所・吉藤氏 : そうなんです。OriHimeは使用者の姿を映さないので、ラフな格好で仕事ができます。それでいて、話を聞いていることや理解していることなどをOriHimeの仕草で示すことができ、臨場感を醸し出せます。この点も評価いただいています。

障がい者の働き方を支援し、可能性を広げたい

eiicon・中村 : テレワーク以外ではどのような使われ方をされていますか。

オリィ研究所・吉藤氏 : 最近では、障がい者雇用の分野において活用が広がっています。障がい者の中でも、目の見えない方や耳が聞こえない方、また、車いすで移動できる方は採用されているケースが多くあります。つまり、体を運べる人は採用されることが多いんです。一方で、体を動かせない、いわゆる重度肢体不自由者の方は採用されにくいケースが多々あります。

というのも、企業側も採用しようとしても、社内設備を作り変えなくてはいけない、任せられる仕事がないなどの課題が出てきますし、仮に採用されたとしても、戦力化は難しいのが現状です。でも、例えば、重度肢体不自由でも知的能力の高い方は少なくありません。そうした方々の支援、働き方を広げる支援をOriHimeでできるのではないかと考えています。

eiicon・中村 : 単純労働ではなく、知的労働を任せるということでしょうか。

オリィ研究所・吉藤氏 : その通りです。例えば、チャットでコミュニケーションを取っている限りでは、重度肢体不自由の方だと気付かないことも少なくありません。そうした方が能力を活かせる場面は多くあると考えられますので、支援したいと思っています。

eiicon・中村 : 重度肢体不自由者の方が働くに当たり、OriHimeに新たな機能をつけるなど、進化させていることはありますか。

オリィ研究所・吉藤氏 : 先ほど、チャットと言いましたが、中には指の動きも不自由な方もいます。そうした方でも最大限に能力を発揮できるよう、目の動きで文章を打てるツールを開発しました。我々はOriHime eye( http://orihime.orylab.com/eye/ )と呼んでいます。

▲視線入力装置を使った意思伝達が可能となる「OriHime eye」。

eiicon・中村 : キーボードを操作する必要もないんですか?

オリィ研究所・吉藤氏 : ありません。目の動きだけで絵を描くこともできます。

eiicon・中村 : 本当ですか!驚きです…。

オリィ研究所・吉藤氏 : 目で動かせる大型のOriHimeも開発しました。大学や企業と共同開発したのですが、遠隔で動かすこともできますので、このOriHimeを利用してカフェなどを運用しようという動きがあります。

eiicon・中村 : 遠く離れた場所から、自分自身の代わりとして、OriHimeを動かすんですね。

オリィ研究所・吉藤氏 : そうですね。まさに自分の分身として、肉体労働すらできてしまうのです。業務を通じ習得したスキルは、後輩に教えることもできますので、指導者としてステップアップする道も開けるでしょう。もちろん、肢体不自由者に限らず、距離や場所の課題を抱えている誰が使ってもいいのです。また、対人恐怖症の方の代わりとなることも考えられます。

eiicon・中村 : OriHimeがまず肉体労働を習得していき、多様化する社会構造に則って活用されていく。OriHimeというイノベーティブなプロダクトによって、新しい生き方・働き方が生まれていきますね。さらに、OriHimeを進化させていくために、協力を得たい企業・欲しい技術などはありますか?

オリィ研究所・吉藤氏 : そうですね。例えばですが、小型のディスプレイやモーターの技術などは得たいと思っています。しかしながら、そういった多くの企業さんとお会いするような時間があまりなくて……。ですので、私の得たい技術などをヒアリングしてもらって、それに該当する企業さんを紹介しているような仲介事業者と出会いたいですね(笑)。

企業や社会はもっと多様性を受け入れるべき

オリィ研究所・吉藤氏 : 肢体不自由者の方が採用されやすいように、私たちのほうで、新たに履歴書を作ろうかという話も出ています。

eiicon・中村 : と言いますと?

オリィ研究所・吉藤氏 : 普通、履歴書というのは、良いことしか書きませんよね。でも、肢体不自由者の方は出来る/出来ないがあるので、互いに補完し合うためにも、「これは出来るがこれは出来ない」ということを明記する必要があると思っています。何ができて何ができないかを予め知っておけば、企業側も安心して採用できるでしょう。

eiicon・中村 : なるほど!

オリィ研究所・吉藤氏 : 新しい履歴書は、肢体不自由者に限った話ではなく、障がいのない方にもあったほうがいいと考えています。どんな人も得意不得意はありますし、私を含め取り扱いがややこしい人間もいます。また、子育てや介護など、一定の制約のある人もいます。そうしたことを隠すのではなく、明かすのです。今はダイバーシティの時代です。従来の履歴書のあり方は、時代にそぐわないと感じています。

eiicon・中村 : 確かに、その必要はあるように思えます。

オリィ研究所・吉藤氏 : もはや均質化された価値を求める時代は終わっているでしょう。

eiicon・中村 : 吉藤さんは次々と技術を生み出し、新たな価値を社会に提供しています。大企業と協業することも多いそうですが、イノベーションをおこす上でアドバイスなどはありますか。

オリィ研究所・吉藤氏 : スピード感は大事にしてほしいと思います。「これだ」と感じるものがあったら、取りあえず始めてみるのがいいのではないでしょうか。良いアイデアが浮かんだのに、物事を進めるのには準備や計画が必要だ、この時はどうする、こうなった時の対処は、などとやっていると、時機を逃してしまいますし、何より気持ちが萎えてしまいます。モチベーションはお金で買えない価値があります。私は人間の「意志」が何より大事だと考えていますので、意志に水差すようなことはないほうがいいと思います。

eiicon・中村 : 計画を立てているうちに、計画がとん挫するのは、よくある話ですね。

オリィ研究所・吉藤氏 : 新しいことを始めるのに、事前に何か予想しようというのは、ムリがあります。評価のしようもありません。評判や評価は世の中に出してみて、初めてわかることです。もちろん、取りあえずやってみるという姿勢だけがいいとは言いません。ただ、今は取りあえずやってみるという姿勢は少ないので、このやり方を試してみるのもいいではないかという提案です。

eiicon・中村 : よく理解できることです。

オリィ研究所・吉藤氏 : それと、変人枠と言いますか、曲者と呼ばれる人を一定数採用するのがいいと思います。何だかよくわからない人材は、企業にとって必要な人材なのはずです。組織が均質だと発展がありませんし、いずれ滅びるとすら考えられます。自然界でも、多様性がないものは、淘汰されてしまいますよね。企業も同様のことが言えるのではないでしょうか。

取材後記

自分の手となり足となり動くロボットは、道具として最終形態とでも言うか、究極の形のように感じた。この場にいながらにして、あらゆる場所で、さまざまな「活動」ができる。そんなSFのような世の中が実現されつつあるのかもしれない。吉藤氏は「何らかの障害を取り除くのがテクノロジーの役割」と話す。OriHimeをはじめ、開発されるテクノロジーが世の中にどんな価値をもたらすか。注目したい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:古林洋平)

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