葬儀ITベンチャー「よりそう」、35億円超の資金調達
葬儀ITベンチャーのよりそうは、投資家7社を引受先とした第三者割当増資および金融機関4社からの融資により、総額約35.1億円の資金調達を実施した。内訳は、第三者割当増資が約30.9億円、融資が4.3億円となる。シリーズEとなる今回の調達により、第三者割当増資での累計調達額は約63億円となった。
よりそうは、同調達を通じて得た資金をもとに終活・葬式・供養・相続まで包括的に提供する「ライフエンディング・プラットフォーム」構想を強化するとともに、新規事業創出及び認知拡大に努める。
直近の事業状況
よりそうは、これまで価格の不透明性や情報格差が課題だった葬儀・供養業界において、パッケージ型プランおよびIT活用を特長とした「よりそうお葬式」「よりそうお坊さん便」などを提供することで、喪主や遺族の不安解消に取り組んできた。
2020年11月には「よりそうお葬式」を家族葬メインのプラン構成にリニューアルしたことに加え、首都圏を中心にCM放映を開始したことが支持され、2021年上半期の問合せ総数は昨年同期に比べ大幅な伸長を果たした。「よりそうお葬式」提携斎場数4,000か所以上、「よりそうお坊さん便」提携僧侶数1,300名以上と、よりそうの取り組みに賛同するパートナーも年々増加している。
第三者割当増資 参加投資家(順不同)
同調達では、国内外の企業への投資実績を有するクロスオーバー投資家であるフィデリティ・インターナショナルおよび農林中金キャピタル、そして「ライフエンディング・プラットフォーム(以下「LEPF」)」構築に向けて共創が期待できるCVC(企業内ベンチャーキャピタル)および事業会社が参画した。
フィデリティ・インターナショナル
農林中金キャピタル
Sumisei Innovation Fund
博報堂DYベンチャーズ
Sony Innovation Fund by IGV
HT Asia Technology Fund
株式会社ヤマシタ
調達背景および今後の展開
日本は世界でも類を見ないスピードで少子・高齢・多死が進む「課題先進国」。年間死亡者数は増加傾向にあり、2040年には約168万人に達する見込みだが、亡くなる人の背景には支える家族が何倍も存在する。1人の人が亡くなる前後、家族は介護や葬式、供養、相続といったさまざまなライフイベントを経験するが、そのたびにサービスの比較検討や申し込みを繰り返すことが大きな負担となっている。
よりそうは、家族が各ライフイベントで感じる負担や不安を「一元化」「テクノロジー」「安心感」によって解消するため、葬式を起点として前後のタイミングまで一元的にサポートするLEPF構想を強化する。
また、家族に真によりそったLEPF構想を実現するためには、起点となる葬式の施行を担うパートナー葬儀社のDX支援も重要。葬儀業界は業界構造的な背景から、数年前までIT化やDXの重要性があまり強く認識されていなかった。業務効率化まで手が回らず、本来遺族のケアに割くべき時間をアナログな事務作業や業務管理に充てざるをえない葬儀社も多く、日ごろから相談が寄せられている。
よりそうはパートナー葬儀社のDX支援によって葬儀社スタッフが遺族に向き合える時間を少しでも増やし、遺族がお別れに集中できる時間を提供したいと考えている。同調達を通じ、遺族の不安によりそうことはもとより、事業者課題も解決することで葬儀業界の負を解消するサービスを構築し、両面から業界構造の変革を促すプラットフォーマーとなることを目指す。
重点投資領域
①LEPF構想の推進
同資金調達ではLEPF拡張にともなう事業シナジーを見越し、保険や介護といった葬儀周辺領域に強みを持つCVCからの出資。また、さらなる領域拡大および強化のため、他業種との業務提携を本格的に検討していく予定。
②葬儀社向け事業の立ち上げ
よりそうでは「よりそうお葬式」を通じ、インターネット経由の利用者をパートナー葬儀社に紹介しているが、今後はDXによる経営向上支援を目的とした葬儀社向け新規事業を本格化する予定。2022年度中に事業部を立ち上げ、2023年度中に主要事業とすることを目指す。
③採用強化
LEPF構想の推進および新規事業立ち上げに際し、よりそうの事業成長を支える人材の採用強化を決定した。よりそうの理念「よりそう力で世界を変える」に賛同する仲間の募集を通じ、安定した事業成長を目指す。
④マスプロモーションへの投資
主力サービス「よりそうお葬式」は、一般には比較的新しく、認知が低いカテゴリーに含まれるサービス。顧客満足度97%を記録しているが、より多くの人に利用してもらうためには認知を広めていく必要があると考えている。葬式運営経験が少なくても絶対に失敗したくない人が、事前に「よりそうお葬式」を知ることで安心して利用できるよう、マスプロモーションを強化していく。
出資者からのコメント
■フィデリティ・インターナショナル - ポートフォリオ・マネージャー ニコラス・プライス氏
当社は綿密な調査を基にした投資先企業の選別を強みとしています。近年日本でも勢いが増している新しいビジネスモデルを追求する企業によって創出される新たな市場やサービスに注目しています。葬儀・供養事業のオンライン・プラットフォーム化の実現で、より柔軟なサービスや、より透明な価格設定が可能となり、ライフエンディング市場の新たな可能性に着目しています。
■農林中金キャピタル - マネージングディレクター 杉田 泰視氏
高齢化が進む我が国において顕在化しているライフエンディングに関する様々な社会課題を幅広い領域から解決せんとする中で、よりそうが更に成長するものと確信しております。葬祭事業や商社機能を有するJAグループの一員たる弊社の多様なネットワークを活用しながら、よりそうの更なるビジネススケールを支援させて頂きます。
■Sumisei Innovation Fund - 事業共創責任者 藤本 宏樹氏
WaaS(Well-being as a service)構想を掲げる住友生命にとって、ライフエンディングサービスにDXで革新をもたらすよりそう社は、事業共創を進める上で最高のパートナーになると確信しています。一緒に力を合わせて「齢を重ねても幸せに生きる」社会の実現を目指していきます。
■博報堂DYベンチャーズ - マネージングパートナー/取締役COO 武田 紘典氏
高齢者の人口増加や核家族化が進み、葬儀・供養における生活者の価値観やライフスタイルは多様化しています。よりそうは、葬儀・法要・供養等のライフエンディング領域をワンストップでサポートするプラットフォームを運営しており、葬儀業界に対する顧客ニーズの変化を捉え、サービスEC化に成功し、業界のDXに率先して取り組む企業です。今後は、博報堂DYグループの生活者発想及びクリエイティビティとよりそうのライフエンディング領域の知見を掛け合わせることで、よりそうが掲げるライフエンディング・プラットフォーム構想に、共にチャレンジしていきたいと思います。
■Sony Innovation Fund by IGV - Innovation Growth Ventures株式会社 CEO・CIO 土川 元氏
よりそうは、そのワンストップ・ライフエンディングプラットフォームを通じ、人々の多様な生き方・人生の旅立ち方にかかる多面的ニーズに応えられる企業だと考えており、その誠実な取り組み、パートナーや顧客からの厚い信頼を武器に、一層の成長が期待できる会社です。当ファンドとしては、ソニーグループが持つ介護事業や金融事業との連携の可能性を含め、よりそうを支援をしていきたいと考えています。
■HT Asia Technology Fund - マネージングパートナー Dongao Yan氏
日本の葬式業界は今後も安定的に成長するとみられ、海外投資家にとって魅力的に映ります。ただ、今まで葬式業界はテクノロジーの取り込みに遅れを取り、変わりつつある消費者のニーズに十分に応えきれていません。そんな中で、よりそう社が展開したサービスが斬新で、業界を一変するポテンシャルを持つと共感し、出資に至りました。今後の展開に応じアジア進出時のサポートや、IPO時海外機関投資家とのお引き合わせでお手伝いできればと考えています。
■株式会社ヤマシタ - 代表取締役社長 山下 和洋氏
父であり前社長の山下一平がよく言っていた「終わりよければすべて良し」という言葉を私も大切にしており、何事も最後が重要だと考えています。それは、お客様に対しても最後まで良い人生だったと思ってもらえるようなサービスを提供したいという想いであり、その想いを胸に我々は福祉用具レンタル事業を行っています。私たちのお客様の中にも、天寿を全うし、お亡くなりになる方もいらっしゃいます。その事実に向き合うたびに、残されたご家族に対しても私たちはもっと良い体験を提供し、皆様の心配を軽減することができるのではないかと常々思っていました。ライフエンディングサービスも福祉用具と同じく、広く一般に情報や判断基準が十分理解されていない状況かもしれませんが、そこにある情報格差を埋め選択肢を幅広く提供するもの同士、パートナーとして中長期的な関係を築くことができると考え、出資にいたりました。
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