東京大学医科学研究所×ヒューマンライフコード | 「へその緒」を使った共同研究契約を締結
臍帯(へその緒)の細胞を活用した細胞医薬を研究開発するヒューマンライフコード株式会社は、国立大学法人東京大学医科学研究所と、2020年11月17日に、臍帯から採取した細胞を安定供給し、細胞医薬品としての製品化を確実にするため、共同研究契約を更新した。
共同研究契約を締結する背景
ヒューマンライフコードは、これまで臍帯から作る細胞医薬品の研究と開発を推進するために、東大医科研附属病院 セルプロセッシング・輸血部/臍帯血・臍帯バンク 長村登紀子准教授と共同研究を行ってきた。
その一環として、臍帯由来の細胞医薬品の治験が進行している。具体的には、白血病の治療過程で起こる合併症「急性移植片対宿主病」を対象とした医師主導治験の第一段階で、安全性が確認され、次の段階の治験をヒューマンライフコードが引き継ぐ形で準備を進めている。
また、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に採択された国家プロジェクトとして、新型コロナウイルス感染によって肺炎や敗血症などをきっかけに重症の呼吸不全をきたす、「急性呼吸窮迫症候群」の治験も進んでいる。
一方で、このような病状をはじめとした難病に対して臍帯由来の細胞医薬品を製造し、広く供給するためには、高い技術とともに厳密に管理された環境下で製造される、高品質なマスター細胞を持続的に安定供給することが必須となる。
そこで、これまでの共同研究契約の内容を刷新することにより、ヒューマンライフコードは、治験製品の製造実績がある東大医科研内に、再生医療等製品の製造・品質管理基準であるGCTPに準拠した細胞製造所を新たに建設し、細胞医薬品の製品化に必要不可欠なマスター細胞を安定供給する製造体制の構築を支援することになった。この支援により、同社は臍帯を活用した細胞医薬品の開発・製造を加速していく考えだという。
▲へその緒由来細胞の培養風景
ヒューマンライフコードについて
ヒューマンライフコードは、再生・修復医療に特化し、健康を維持するために存在する細胞を、炎症が過剰に亢進し組織修復が必要となった患者へ“つなげ”(“コード”)、一人でも多くのヒトの心豊かな生活(“ヒューマンライフ”)を実現すべく、臍帯などの廃棄物を臨床使用へ利活用する研究開発を推進している。
国内外のアカデミア・事業会社との戦略的提携を通じ、高品質かつ国産の再生医療等製品を安定供給できる体制を構築し、再生・修復医療の真の産業化に貢献することを目指している。2019年「第1回東京ベンチャー企業選手権大会」最優秀賞&東京都知事賞の受賞実績も持つ。
<代表取締役社長 原田雅充氏の略歴>
旧通産省工業技術院生命工学工業技術研究所を経て、岐阜大学大学院生物資源利用学(遺伝子工学)を修了し、日本化薬(株)創薬研究本部に入社。アムジェン(株)にて臨床開発業務に従事する傍ら、東京大学医科学研究所分子療法研究分野にて急性白血病に対する新規薬物送達システムの開発研究を担当、米国血液学会などでの口頭発表、米国血液学会誌Bloodの筆頭著者として論文掲載。
セルジーン(株)にて血液がん治療薬の自社販売体制を構築し、市場導入の成功に貢献。その後、米国にて小児患者との出会いをきっかけに起業を決意しニューヨークへ、MBA取得。帰国後、シンバイオ製薬(株)執行役員、営業・マーケティング本部長を経て、2017年4月にヒューマンライフコード(株)を創業。
グローバルでの業務経験に加え、バイオテックに必要な3要素(研究開発・マーケティング・経営)をすべて経験。名古屋大学大学院医学系研究科老年科学 招へい教員(非常勤講師)を兼任。一般社団法人日米協会会員。
東京大学医科学研究所 附属病院 臍帯血・臍帯バンクについて
東京大学医科学研究所は、1892年に北里柴三郎先生により設立された伝染病研究所を前身とし、附属病院を持つわが国随一の医学・生命科学のための附置研究所だ。感染症、がん、免疫などの疾患を対象とし、「ベンチからベッドへ」、「ベッドからベンチへ」と基礎・臨床双方向研究の成果を医療に直結させることを使命としている。
「東京大学医科学研究所附属病院 臍帯血・臍帯バンク」は、東京大学医科学研究所の「実学」重視の使命と伝統を継承し、当附属病院臨床研究支援組織と一環として2017年4月より設置された。
臍帯、および臍帯血から得られる細胞による再生/細胞医療や血液疾患及び患者数の少ない難治性疾患に対する基礎的研究と治療法の開発を推進するのと同時に、臨床研究用の細胞の製造や基盤・基礎研究用の細胞を安定的に提供する仕組みを構築し、患者への投与を目指した細胞の製剤化(薬のように比較的均一な性質な細胞を作り出すこと)と資源化(バンキング)を進めている。
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