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【イベントレポート】第15回NEDOピッチ~「宇宙」分野の有望ベンチャー5社が登壇~

【イベントレポート】第15回NEDOピッチ~「宇宙」分野の有望ベンチャー5社が登壇~

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民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション協議会。3月1日よりオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会へ改組)。

3月28日(火)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共催で、イノベーション及び具体的な事業提携事例の創出を目指すイベント「第15回NEDOピッチ」を開催した。

今回のテーマは、NEDOピッチ初となる『宇宙』。近年、民間企業による技術革新と事業開発が進んでいる分野とあって、会場となったNEDO川崎本部には大手企業やベンチャーキャピタルなどから130名を超える参加者が集まった。また、登壇したベンチャー5社は、海外マーケットも注視する有望技術を持った企業ばかりで、各企業の担当者による情熱と創造性にあふれたプレゼンテーションが展開された。

世界のマーケットも視野に入れた宇宙ベンチャー企業5社が、独自性をPR

イベントの冒頭には、内閣府・宇宙開発戦略推進事務局の担当者が登壇。昨年12月に国際的な宇宙ビジネスの拡大を目指す「宇宙活動法」と、商業衛星による画像の利用や管理を規制する「衛星リモートセンシング法」という、通称“宇宙2法”が成立したことを紹介。

こうした産業開発の基盤となる制度面でのインフラ整備に加え、今年夏ごろまでに「宇宙産業ビジョン」の策定を目指すなど、国を挙げて民間宇宙ビジネスの創出・拡大に取り組む姿勢をアピール。「これまで宇宙事業は“官”主導だったが、民間プレイヤーが参入できる下地が着実に整ってきている」と市場環境の変化を説明した。

このオープニングトークに続き、登壇企業5社によるプレゼンテーションと質疑応答がスタート。各社が、それぞれに掲げるビジョンや研究開発の成果、将来の可能性、事業提携ニーズなどについて語った。

株式会社アクセルスペース

https://www.axelspace.com/

▲代表取締役 中村 友哉氏

2008年創業の同社は、“超小型衛星”の開発および利用に特化した国内のパイオニア企業。現在開発中の最新型衛星「GRUS」はわずか重さ100キロ程度で、小型化により短期間・低コストで開発可能な点が大きな強みだという。また、衛星から取得できる画像の解像度も格段に向上しており、「道路を走るクルマを見分けられるレベル」だという。同社では、2022年までに超小型衛星を50機配置し、地球観測インフラ「AxelGlobe」の構築を目指している。

これにより、世界中のあらゆる場所を毎日観測でき、衛星データの蓄積によって、地域や自然環境の変化はもちろん、エリアマーケティングや経済動向のリサーチにも活用できると説明。「今後、衛星がもたらすデータは、あらゆる業界で利用されるはず。“宇宙の活用”に構え過ぎず、新たなニーズやアイデアをいただければ、ぜひ一緒に実験していきたいと思うので、気軽に相談してほしい」と話した。

株式会社スペースシフト

http://www.spcsft.com/

▲代表取締役 金本 成生氏

クラウドファンディングを活用した個人向け超小型衛星キットの企画・販売や、金環日食の観測イベントの実施など、多彩な宇宙事業を展開してきた同社。特に注力している分野が、「衛星から送られるデータの新たな処理手法」の開発だ。同社では、雲の多い日中や夜間も24時間365日観測可能なレーダー衛星に着目。あえて自社での衛星開発は行わず、リソースを人工知能やディープラーニングの技術を活用した画期的なデータ解析ソフトウェアの開発に結集しているという。

代表の金本氏は、「人や動物の動きなど、地表のわずかな変化まで正確に検出・解析していきたい。この技術によって、様々な事象と株価の相関関係をリサーチや、正確な市場予測が可能になるのではないか」と意気込みを語った。今後は、緻密な経済予測を行うシンクタンクや、解析の共同研究に取り組んでくれるAI開発企業など、多様な事業提携を目指しているという。

株式会社スペース・バイオ・ラボラトリーズ

http://www.spacebio-lab.com/

▲代表取締役 河原 裕美氏

広島大学から誕生した同社のキーワードは、「重力」だ。「宇宙環境では、筋や骨の細胞が分化・成熟しない」という事実に着目。再生医療分野の幹細胞の培養実験で大きな課題となっている、安定性の低さを低重力環境が解決できるのではないか、という仮説のもと、宇宙ステーションと同じ1/1000Gの低重力環境や、2~3Gの過重力環境を実現する重力制御装置「Gravite」を開発。この装置を用いて実験を行った結果、幹細胞の増殖率や移植後の生着率においてきわめて高い成果を挙げることに成功したという。同社では、こうした臨床研究や基礎研究の成果を論文として学会で発表しながら、並行して製品開発を進行。

代表の河原氏は「有史以来、あらゆる研究は1Gの環境でしか行うことができなかった。しかしGraviteがあればより強いGをかけることも、下げることも可能になる」と製品力をアピール。今後は、再生医療の分野だけでなく、生物学や創薬の領域でも活用が見込まれると語り、「製品のリースも行っているので、宇宙環境に興味がある方は気軽に相談してほしい」と話した。

株式会社ALE

http://star-ale.com/


▲代表取締役社長 岡島 礼奈氏

「世界初の宇宙エンターテイメント企業」を標榜する同社は、夜空を広大なキャンパスととらえ、人工の流れ星を飛ばす「Sky Canvas」事業を展開。人工流れ星には特殊な素材の粒が詰まっており、それを軌道上の人工衛星から放出すると、大気圏突入時に粒が燃焼することで、上空60~80キロほどで流れ星のような光景が生まれるという。実際の自然現象を模したこの手法は、一見シンプルに見えるが流れ星を成立させるためには、粒の放出精度が極めてシビアで高い精度が問われるという。同社ではこの技術力向上に加えて、青・緑・オレンジなど流れ星の着色技術も研究中だという。

さらに2019年には、広島県で実施予定の世界初の人工流れ星を楽しむプロジェクト「SHOOTING STAR challenge」の実施が予定されており、イベントとコラボレーションした商品や観光プラン、独自コンテンツの開発など提携ニーズは非常に多岐にわたる。開発代表の岡島氏は「宇宙に壁を作ることはできない。それを逆手にとり、音楽イベントやスポーツ大会と一緒に楽しむなど、流れ星を様々な新しいスタイルと文化を作っていきたい」と胸を張った。

株式会社インフォステラ

https://www.infostellar.net/

▲代表 倉原 直美氏

「宇宙最大の通信インフラの構築を通じて人類の生存圏拡大に貢献する。」というミッションの実現に向けて、同社が事業化を進めているのが宇宙通信用アンテナのシェアリングサービス。技術革新によって人工衛星のニーズが拡大するなか、通信機会を増やすためには世界各地にデータを受信するための地上局を設けなければならない。その一方でアンテナの建設には高額な予算が必要なため、設備不足が世界的な問題になりつつある。代表の倉原氏は、「この構造的な欠点に着目し、限られた資源を効率的に配分できるサービス開発を行った」と説明。そのサービスこそが、アンテナの休憩時間の利用権利を他社に販売できる独自のシェアリングプラットフォームだ。

今後は自社でもアンテナを設置しながら、まずは年内に世界各地20カ所以上でのインストールを目指し、

2018年末までには世界400か所へこのプラットフォームを配備していく計画だという。こうした事業展開を踏まえ、衛星アンテナの所有企業に加え、アンテナ設置場所を提供してくれる企業、大規模な衛星データの活用を検討している企業などとの提携を図りたいとアピールした。

取材後記

以前は宇宙産業と言えば、大型ロケットや宇宙ステーションの開発、惑星資源探索など“国家事業”というイメージが強かった。しかし、今回のピッチに登場した5社は、それぞれが異なる観点から宇宙の活用法を模索し、少数精鋭の体制で事業化を進めていた。宇宙産業が民間に開かれ始めた今だからこそ、広大な可能性がそこにはあるのだ。さらに宇宙技術は世界標準であり、グローバル展開が行いやすいメリットもある。小さな種が、共創によるオープンイノベーションで、世界を驚かせる一大スケールの実を生むかもしれない。今回のNEDOピッチは、そんな夢を感じさせてくれるイベントだった。

(構成:眞田幸剛、取材・文:太田将吾)

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