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【特集インタビュー】モノづくりの新たな拠点「DMM.make AKIBA」での出会いがきっかけ。シャープとスタートアップ「tsumug」の共創が生まれた背景とは。

【特集インタビュー】モノづくりの新たな拠点「DMM.make AKIBA」での出会いがきっかけ。シャープとスタートアップ「tsumug」の共創が生まれた背景とは。

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秋葉原駅のすぐ近く富士ソフト秋葉原ビルにモノづくりの新たな拠点「DMM.make AKIBA」(https://akiba.dmm-make.com/)がある。同施設はモノづくり系スタートアップ企業を対象にした、コワーキングスペースである。シェアオフィスやイベントスペースが整えられているのはもちろん、3Dプリンターや汎用機、UVプリンターなどが常設されており、アイデアを形にするには最適な場所になっている。加えて、モノづくり系大手企業がスポンサーに名を連ねるなど、共創が生まれやすいのも特徴だ。今回は、同施設での出会いをきっかけに、オープンイノベーションを進めることになったシャープとtsumugに取材した。

▲シャープ株式会社 研究開発事業本部 オープンイノベーションセンター 所長 村上善照氏

▲株式会社tsumug CEO & President 牧田恵里氏

――まずは、シャープさんが、スタートアップとオープンイノベーションを始めたきっかけを教えてください。

村上:2016年の春くらいから、当社のオープンインキュベーションの取組みを模索する為にDMM.make AKIBAを何度か訪問させていただいていました。そうする中で、スタートアップ企業の支援ができないか、という話が出てきたのですね。ご存知のように、シャープの経営は重要な局面を迎えており、あらためて創業の精神である「誠意と創意」を継承しなければ、との思いを強く持っています。スタートアップ企業と協業を図ることで、社内にあらためてベンチャー企業を輩出するような企業風土の醸成できるのではないか。そういった期待を込めたのです。

ただ、実はシャープは2006年から、オープンイノベーションの走りとなる産学連携を始めていました。初めのうちは個別の部署がそれぞれに連携を図っていたのですが、「産学協同開発センター」という窓口を作り、包括的な管理を行うようになったのです。その後、オープンイノベーションということが徐々に広がりを見せ、2012年になってからは、名称を現在の「オープンイノベーションセンター」と名を変え、最初は大手企業とのオープンイノベーションを模索していました。

――オープンイノベーションには古くから取り組んでいたのですね。牧田さんは、シャープの主催するブートキャンプに参加するなどしながら、新たな製品の開発に取り組まれています。tsumugは2015年の設立ですが、設立の経緯をご紹介いただければと思います。

牧田:前職は孫泰藏氏が代表を務めるMOVIDAにおり、スタートアップの支援をしていました。その関係で、ABBA Labにも携わっていたのです。MOVIDAにいたのは起業を視野に入れてのことです。具体的にこれをやりたいというのはなかったのですが、テクノロジーで既存の産業を便利にすることはできないかという思いはありました。それで以前に不動産会社に勤めていたこともあり、いろいろな不動産会社にヒアリングをさせてもらいながらニーズを探りました。その結果、現在手がけているスマートロックの着想を得て、起業に至ったのです。

会社設立後は、DMM.make AKIBAの設備を利用して、プロトタイピングに挑戦していました。多くの人を巻き込みながら、何とか形にはなりそう、という時にシャープさんに出会ったのです。

――出会いのきっかけは何だったのですか?

牧田:DMM.make AKIBAを歩いていたら、村上さんたちがいたんです(笑)。本当にたまたまですね。

村上:私たちはよくここに出入りしているので、いいタイミングで牧田さんと出会うことができました。

――牧田さんはその後、シャープさんが主催する「モノづくりブートキャンプ」(http://www.sharp.co.jp/iot_make_bootcamp/)に参加します。プログラムではさまざまなことを学べますが、その中で、特に良かった点を教えていただけますか。

牧田:大きく2つあると思っています。一つは量産について。プロトタイピングまでは何とかなったとしても、モノを大量に作り出すというのはまったく経験がないことです。スタートアップは、スケジュールを読み切れなくて、リリースがずれるということがありがちです。でも、私の場合は既に顧客がおり、リリースを遅らすことはできません。その点、ブートキャンプでの学びは非常に大きかったです。キャンプの後もシャープさんには支援をいただいており、工場の方と打ち合わせをする時に同席していただいています。本当に助かっています。

もう一つは、安全基準についてです。初めての量産になるので、シャープさんのように今までの量産の実績から得られるような品質の基準を持っていなんです。リリースした後にお客様の指摘を受けながら改善する、という流れが一般的だと思います。ただ、製品を世に送り出す以上、メーカーとして安全管理とは向き合わなければなりません。そういった意識や実際の安全基準の考え方について学べたのは、とても大きなことだと感じています。

このほか、キャンプについては、全体を通じ、シャープという大企業が「ここまで情報を開示するのか」という思いは強く持ちました。

――ブートキャンプ後も、シャープさんとの協業は続いているのですね。製品リリースに向けて、現在はどのようなフェーズに入っていますか。

牧田:現在は量産アクセラレータプログラムに入っています。お客様に製品をお届けするまでシャープさんに支援いただくのですが、これはとてもありがたいです。というのも、ハードに関することはシャープさんの力を借りることができ、その分、私たちはサービス開発に注力できるからです。IoTプロダクトで重要なのはサービスだと考えます。いいデバイスを作った、というだけでは、お客様の満足は得られません。デバイスにどのような機能を持たせ、どのようなサービスを展開できるかが重要でしょう。私たちは、シャープさんのおかげで、そこに全力投球できるのです。

――スタートアップにとって、モノづくりの上流から下流までを知るシャープさんの力を借りるのは、本当に心強いですね。シャープさん側としては、ブートキャンプの特徴をどのようにとらえていますか。

村上:そうですね。シャープはこれまで社内研修を充実させており、教えるノウハウも溜まっていました。それらのことを土台にして、プログラムを作成しました。さまざまなフェーズの方に、技術や品質/信頼性基準、量産からアフターサービスまで広くモノづくりの全工程を学んでいただくのが、一つの特徴です。シャープの成功例や失敗例を出しながら、具体的な話も紹介しています。

参加者の方に好評だったのは、要求仕様書までを参加者の方と一緒に作成したことです。要求仕様書は工場の方に見せる書類で、スケジュールや品質の交渉・確認するのに使用します。一方で、個々の話が冗長になったり、逆に薄くなったりしたところがあるので、その点は改善すべきだと考えています。次回は、座学を減らし、より実践的なことを増やしていく予定です。なお、キャンプ後もシャープの支援を受けたい方は、tsumugさんのように「量産アクセラレータプログラム」に入ってもらいます。このプログラムからは、一対一の個別の支援となっています。

――本当に充実した内容ですね。シャープさんのオープンイノベーションにかける思いや今後の展開を教えてください。

村上:当社はこれまでどちらかと言えば「BtoC」事業に注力を行ってきました。これからは「BtoB」により目を向けていく必要があると考えています。本研修を有償で提供するのもその一環となります。新しいビジネスをするには、スタートアップ企業と出会いは欠かせない要素です。当社はこれまでモノづくりについて多くの知見を重ねています。そのノウハウは、スタートアップ企業の何かしらのお役に立てるはずで、協業するメリットは大きいはずです。

当社の中には、若手を中心にオープンイノベーションに興味を持っているスタッフは大勢います。ブートキャンプに参加したスタッフもいるほどで、今後は交流の機会をますます多くする予定です。キャンプについて、参加いただいた方から多くのフィードバックをいただいています。より質を高めながら、多くの成功例を生み出していきたいと思っています。

<取材後記>

モノづくり系の企業を興すのは、簡単なことではない。ハードウェアはソフトウェアに比べて、資金も設備も大きなものが必要になる。加えて、プロトタイピングまで進んでも、そこから先の量産にはまた別のノウハウが必要になるのだ。量産のノウハウを必要しているスタートアップはきっと多いだろう。だから、モノづくりの起業を目指す場合は「DMM.make AKIBA」などのコワーキングスペースを利用するのが有効な手段なのではないか。特に「DMM.make AKIBA」は交通の便も良く、シャープをはじめ、大手企業がスポンサーとして名を連ねている。これから先も、今回取材した二社のような共創も生まれてくると思う。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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