【JAPAN OPEN INNOVATION FESイベントレポート(3)】 IBM BlueHub・浜宮氏×THE BRIDGE・平野氏×eiicon・中村によるトークセッションの模様をレポート!
国内最大級のオープンイノベーションの祭典、eiicon主催の「JAPAN OPEN INNOVATION FES」(JOIF)が10月13日に開催された。日本リージャスが運営するコワーキングスペース「SPACES」(東京都大手町)を舞台に、訪れた新規事業の担当者やスタートアップのスタッフたちがおよそ300名来場。オープンイノベーションの手法や事例、可能性に理解を深めた。
JOIFイベントレポートの第一弾では、グロービス・キャピタル・パートナーズ COO 今野穣氏によるオープニングスピーチ「日本のオープンイノベーション最前線」の模様を紹介。そして第二弾では、リクルートホールディングス 麻生要一氏による基調講演にフォーカスし、リクルートが実践してきたオープンイノベーション事例や取り組み方などを紹介した。
そして本日掲載するJOIFイベントレポートの第三弾では、IBM BlueHub・浜宮氏×THE BRIDGE・平野氏×eiicon founder・中村による、【日本流オープンイノベーション「社外連携を加速するには」】をテーマにしたトークセッションの模様をレポートする。
▲登壇者/日本アイ・ビー・エム株式会社 BlueHub担当 浜宮真輔氏
▲登壇者/株式会社THE BRIDGE 代表取締役 平野武士氏
▲モデレーター/eiicon founder 中村亜由子
なぜオープンイノベーションがうまくいかないのか。
中村 : ここにいるお二人は非常に初期の段階からオープンイノベーションに関わってきた実績をお持ちです。早速ですが、自己紹介をお願いします。
浜宮 : 学生の時に起業をして、その後、IBMに入社しました。今は「IBM BlueHub」というプログラムを通してオープンイノベーションを支援する活動を手がけています。
平野 : 私は主にオープンイノベーションを取材する側の立場で、たくさんのスタートアップを見てきました。
中村 : それでは「社外連携を加速するには」というテーマですが、少し視点を変えて、なぜオープンイノベーションがうまくいかないのかを考えてみたいと思います。日本は国を挙げてオープンイノベーションを推奨していますが、KDDIや東急電鉄など一部の成功例を除けば、うまくいっていないことがほとんどです。それはなぜだと考えられますか。
平野 : そうですね。少し話がずれるところもあるのですが、ここ1年でアクセレータプログラムを取材する機会が増えています。しかし、正直なところ、良いプログラムだなと感じることは多くないんですね。理由として、大手企業が行うプログラムに力のあるスタートアップが参加していないことが挙げられます。大手企業はもともと大きなリソースを持っていますので、それを活かすには、上場間際の企業など力のあるところと組むべきです。
浜宮 : イノベーションは課題を解決するためにあるはずですが、その課題を明らかにできていないという点が挙げられると思います。つまり、言語化ができていないのですね。そのため、何を目指してオープンイノベーションをやっているのかが分からなくなっています。
イノベーションに対する深い理解と情報収集が欠かせない。
中村 : 課題が定義できないのは大きな問題ですね。それと以前にオープンイノベーションでは「勘が働かないのではないか」とお二人からお聞きしたことがあります。なぜ「勘が働かない」のか教えていただけますか。
平野 : 情報を取りにいかないからではないでしょうか。通常の業務を行う時は、対象となる事柄について一つでも多くのことを知ろうとするでしょう。しかし、オープンイノベーションの場合、なぜか協業するスタートアップのことすら詳しく知ろうとしないのです。
加えて、イノベーションを取り巻く情報は本当に流れが速く、昨日までと状況が一変したということは頻繁に起こり得ます。そうした流れの速さに理解がない場合も多く、勘が働かない事態に陥ってしまうのだと考えられます。
中村 : 言葉を選ばずに言えば、勉強不足が要因となるのでしょうか。
平野 : そうですね。情報を集めようとしないので、「良い/悪い」の判断が鈍ってしまうのです。他社と協業し、オープンイノベーションという手法に乗っかっていれば、それだけで何もかもがうまくいと考えがちになるところがあるようです。オープンイノベーションでも、当然のことながら、通常の事業を行うように、綿密に業務を進める必要があります。
浜宮 : オープンイノベーションは、「それをやりさえすれば必ず何かが生まれる」という類のものではありませんね。試行錯誤を繰り返しながら進めないと、何も生み出せないのです。
中村 : では、どのようにすればオープンイノベーションがうまくいくのか。特に大企業側に向けた提案をお願いします。
平野 : イノベーションで扱う課題は、食糧や子育て、環境など、本来は国が扱うべき課題ということが多々あります。それについて1社で取り組むというのは限界があり、複数の会社が同時に取り組むべきなのではないでしょうか。そうした形のオープンイノベーションがもっと活発に行われていいと考えています。
現状、行われている具体的な例を挙げるなら、ビットコインがこれに当たります。複数の会社が集まり、ビジネスを行う上でのルールもきちんと作っています。
浜宮 : 近年は、尖ったテクノロジーが出てくることが少なくありません。「そのテクノロジーで何ができるか」という視点で、複数の会社がイノベーションやビジネスかを考えてみるのもいいかもしれません。
中村 : オープンイノベーションは大手企業とスタートアップという組み合わせとは限りません。大手企業と大手企業、あるいは複数の企業が集まって一つの課題に取り組むのもオープンイノベーションです。オープンイノベーションを担当する方は、このこともぜひ覚えておいてほしいと思います。