【JAPAN OPEN INNOVATION FESイベントレポート(2)】 リクルート・麻生氏による基調講演の模様をレポート!
国内最大級のオープンイノベーションの祭典、eiicon主催の「JAPAN OPEN INNOVATION FES」(JOIF)が10月13日に開催された。日本リージャスが運営するコワーキングスペース「SPACES」(東京都大手町)を舞台に、訪れた新規事業の担当者やスタートアップのスタッフたちがおよそ300名来場。オープンイノベーションの手法や事例、可能性に理解を深めた。
先週掲載したJOIFイベントレポートの第一弾では、グロービス・キャピタル・パートナーズ COO 今野穣氏によるオープニングスピーチ「日本のオープンイノベーション最前線」の模様を紹介。ベンチャーキャピタリストとして12年の経験を持つ今井氏から、オープンイノベーションを成功させるために必要となる要素や、実際の成功事例などが紹介された。
そして本日掲載するJOIFイベントレポートで紹介するのは、リクルートホールディングス 麻生要一氏による基調講演。リクルートが実践してきたオープンイノベーション事例や取り組み方などが麻生氏によって語られた。
基調講演①:オープンイノベーションを取り入れた新規事業開発事例
▲登壇者/株式会社リクルートホールディングス 麻生要一氏
●リクルートは創業以来、新規事業・イノベーションを実践
麻生氏はリクルートの中で、イントレプレナーとして活躍、自身で会社を経営していた経歴などを持っている。麻生氏は「リクルートは小さな事業の複合体」とし、「新規事業を生み出すことを非常に重視している」と伝えた。リクルートは創業以来、新規事業、イノベーションを実践し、ノウハウを蓄積してきたという。オープンイノベーションについては3年前から戦略化し、本格始動させている。麻生氏は歴史の中で培われたノウハウや事例、連携のコツなどを伝えた。
●多くのメンバーで、たくさんのアイデアを出し、試す
麻生氏はオープンイノベーションの目的を「リクルートがこれまで組み合わさったことないところと共創すること」と述べ、三井不動産と共同でスマートシティを創り上げた例などを紹介した。また、高知県や長野県塩尻市、信州大学との連携の事例が取り上げ、「セクターを超え交わったことのない人たちと積極的に交わっている」と強調した。
同社のオープンイノベーションの特徴として、数名の担当者が現地に赴くのではなく、大勢のスタッフが足を運び、活発にアイデアを出していることを伝えた。麻生氏は「一つ二つアイデアを出して、うまくいくということはない。たくさんの試してみて、そのうち一ついいものができるかどうか」と語った。
●何かを生み出すには「熱量」が必要
このほか、同社では、特殊な人事制度を設けており、リクルートホールディングスの新規事業開発部門はグループの全従業員を同部門に異動させることができる。これに加え、これまで新規事業開発を行った経験から、人材をイントレプレナーとして育成する「おそらくリクルート唯一の」ノウハウも持っている。この結果、多数の新規事業が生まれていると話した。
また、麻生氏は「オープンイノベーションでオープンにするだけでは意味がない」と強調し、「目的は新規事業にある」と述べた。「オープンイノベーションというと、できないことを人に頼るというイメージもあるが、事業を自ら作るという意志は欠かせない」と話し、「イノベーションを起こしたいからオープンになる、という順番が大切」と説明した。
こうした考えのもと生まれた事例として、サイバーエージェントとの合弁会社を紹介した。締めくくりとして、麻生氏は「何もないところから何かを生み出すのは熱量が必須。熱気や高揚感が生まれる場づくりが最後には欠かせないこと」とアドバイスを送った。
「イノベーションを人任せにしない」
今回が初の開催となった「JAPAN OPEN INNOVATION FES」は非常な熱気に包まれながら進められた。有識者たちの「生の声」は参考になるものが多く、登壇者たちが口をそろえて言うのは、オープンイノベーションには目的が必要だということだ。
そして今回印象に残るのが麻生氏の「イノベーションを人任せにしない」という指摘だ。事実、協業先を探す際に「イノベーションを起こしてもらおう」という発想になることも多いのではないか。もちろん、自身ではできないことを補うために協業先を探すのだが、自らがイノベーションを起こす気持ちがなければ、協業に発展は望めない。当たり前のことだが、その重要性を改めて気付かされた講演となった。
なお、来週掲載するJOIFイベントレポートの第三弾では、日本アイ・ビー・エム BlueHub担当 浜宮真輔氏、THE BRIDGE 代表取締役 平野武士氏、eiiconfounder 中村亜由子 3名によるトークセッション【日本流オープンイノベーション「社外連携を加速するには」】の模様をお届けする。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)