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犯罪予測システム開発の「Singular Perturbations」| シードラウンドで総額1億円の資金調達

犯罪予測システム開発の「Singular Perturbations」| シードラウンドで総額1億円の資金調達

  • 10202
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犯罪予測システムを開発・提供する株式会社Singular Perturbationsは、B Dash Ventures株式会社を引受先とする第三者割当増資、ならびに金融機関によるデット・ファイナンスを通して、シードラウンドで総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。今回の資金調達により、セキュリティサービスの最適化アプリ「Patrol Community」への開発投資と人材採用を促進し、さらなるサービスの充実・向上および海外市場向けサービスの立ち上げを早期に実現するという。

資金調達の背景・目的

Singular Perturbationsは「世界の悲しい経験を減らす」というビジョンのもとに、「コンピューターサイエンスがもたらす知能で安全に関わる全ての人の能力を最大化する」をミッションとして、世界の犯罪を減らすためのソリューション開発に取り組んでいる。

これまでNICT委託研究()で開発された高精度・高速な独自手法を含む犯罪予測アルゴリズムをもとに、犯罪予測システム「CRIME NABI」を開発してきた。また、その予測結果を元に犯罪減少を意図した警備・パトロール業務の最適化支援アプリ「Patrol Community」をリリースし、リアルタイムな犯罪予測に基づく効果的・効率的な警備・パトロール経路の自動策定・リスク可視化・警備状況のリアルタイム管理といったソリューションを自治体や警備会社向けに展開している。

今回調達した資金で、プロダクト・事業開発をさらに加速させるだけでなく、セキュリティテック業界を技術的にリードできる人材・R&Dへの投資も両輪で積極的に行なっていく方針だという。

 

開発するシステム「CRIME NABI」について

犯罪予測システム「CRIME NABI」はいつ・どこで未来の犯罪が起きるかを予測するシステムだ。下記は東京都の軽犯罪情報から過去データを集め、その翌日の予測を行ったデモンストレーション図。黒い矢印は実際に翌日発生した犯罪をリプロットしたもので、予測データとほぼ一致する形で犯罪が起きている点が確認できる。犯罪予測に基づき、犯罪が起こりやすい場所を重点的に警備する方が、警備効果が高いことが期待される。


「CRIME NABI」は、過去の犯罪発生情報や人口統計、土地利用データ、天気などのデータに基づき、2種類の独自アルゴリズムをもとに犯罪予測を行う。さらに、犯罪が発生しやすいと予測された場所を重点的に警備するルートを策定する。


■1. 時間情報による予測

犯罪者は一度犯行に成功すると同じ手口を繰り返す。犯罪の時間的なパターンを記述できるモデルに対して理論物理の定式化を適用することで、データ件数が少ない犯罪についても安定した計算が可能となり、高精度な予測を達成している。

■2. 空間情報による予測

犯罪発生や人口密度などのさまざまな空間パターンの足しあわせで、予測したい犯罪種別を記述できるようモデル化されている。このようなアルゴリズムは、通常大きなサイズのデータをinputに入れ、さらに時空間のメッシュ数分だけunknown parameterを決める必要があるため、非常に計算コストが高いことがネックとなる。Singular Perturbationsではデータを事前圧縮する独自の数理アルゴリズムにより、従来手法と比較し圧倒的な計算時間の高速化を達成した。

 

「Patrol Community」について

「Patrol Community」は、「CRIME NABI」をbackendにして最適な警備経路を策定することのできるモバイル・ウェブアプリケーションだ。さらに電子日報と業務データの管理ツールをクラウドサービスとして提供するためデータドリブンな警備・防犯活動をサポートする。

■1. パトロールルートを作る

パトロールする距離を指定し、必ず通過する必要がある地点を選ぶだけで、最適なパトロール経路が自動で作成される。指定した地点を通りつつ、犯罪の発生が予測される箇所を指定された距離内で、できるだけ通るような経路が作成されるため、より犯罪抑止効果の高いパトロールが可能になる。

 

■2. パトロールをする

作成したルートを参考にパトロールを開始することで、GPSによる位置情報をもとに実際にパトロールした経路が自動で記録され表示される。また、パトロール中に発見した「落書き」や「不法投棄」といった情報はスマートフォンで撮影して簡単に記録可能だ。こうして実施したパトロールはモバイルアプリ上で電子日報としてそのまま保存することができる。

 

■3. 管理

作成された電子日報はグループ内で共有され、管理者はパソコンのブラウザからリアルタイムでパトロール記録の確認をすぐに行える。これらの情報はクラウド上に蓄積されるため、データの分析や検索が容易になる。また、過去の複数のパトロール実績や犯罪予測データを照らし合わせて分析し、改善することでプロアクティブな防犯パトロール業務が可能となる。

本ラウンド参画投資家、および代表のコメント

■B Dash Ventures株式会社 ディレクター 山崎良平氏

『株式会社Singular Perturbationsは、GovTechの安全対策分野・スマートセキュリティ業界という巨大な市場におけるデジタル・トランスフォーメーションを推進するスタートアップであり、梶田代表をはじめとした同社チームの事業にかける熱量の高さを強く感じております。当ファンドの採用・開発・営業等の多面的な支援体制を活用し、チームの一員として全力でサポートさせていただきます。』

■株式会社Singular Perturbations 代表取締役CEO 梶田真実氏

『この度、弊社の実現したい事業に強く共感いただける新規投資家様によるご出資をいただくことができ、大変嬉しく思うとともに身が引き締まる思いです。

私は海外在住時にたびたびスリの被害に遭ったことがあります。犯罪には典型的に発生するパターンがあり、典型的ということはある程度予測をすることが可能です。事前に危険な場所や時間帯がわかっていれば被害を減らせるのではないか、という思いがきっかけとなり、犯罪予測アルゴリズムの開発をはじめました。

当初、弊社は研究者を中心に創業し、自社開発した基礎的な『犯罪予測アルゴリズム』を元に警備経路を最適化するモックアップアプリケーションを開発しました。実際の警備の現場で使っていただく実証実験を通じて、ただ技術を届けるだけでは課題は解決されず、技術を基盤としたプロダクトを使って頂き、人の行動が変わることで初めて世界が変わることを体験し、自社でのサービス開発へとシフトチェンジしてきました。

弊社は計算犯罪学、空間統計、計算科学、犯罪学の専門領域の研究者が日々犯罪予測手法に関する研究開発を進めております。これまで犯罪予測技術は法執行機関等の限られた機関のみが活用することのできる技術でしたが、ようやく、犯罪に関わるデータのオープン化が大きく進展することで、一般のサービスとしてこの技術を展開することが可能になってきました。

近年のスマートセキュリティ業界ではさまざまなサービスが出てくる中で、警備業務は現在でも昔ながらの業務プロセスが根強く残り、業務効率化の余地は大きく残されています。警備の効果を数値評価することや、業務改善に繋げるサービスは世界的にもない状況です。また、警備ニーズに必須となるテクノロジーにも大きな技術課題があります。そのような背景のもと、弊社では新規技術開発と顧客業務フローのあるべき姿と向き合い続け、さまざまな安全を作る仕事に携わる方の業務支援を通じ、世界の悲しい犯罪を減らせるよう尽力して参ります。』


※関連リンク:プレスリリース 

TOMORUBA編集部) 

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  • 稲田 憲昭

    稲田 憲昭

    • NRIセキュアテクノロジーズ株式会社
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