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イノベーション創出のため「何をすべきか」がわかる──「オープンイノベーション白書 第三版」公開

イノベーション創出のため「何をすべきか」がわかる──「オープンイノベーション白書 第三版」公開

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経済産業省所管の独立行政法人である新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)およびオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)は2020年5月29日、日本のイノベーション創出の現状と課題、日本企業のイノベーション実現に向けての方策の提示を目的にオープンイノベーション白書 第三版を策定し、公開しました。第二版が公開されたのが2018年の7月なので、約2年ぶりの更新となります。

同白書はオープンイノベーションをめぐる世界の動向や事例の紹介、その中での日本企業の立ち位置と課題などが詳細にまとめられたものです。本記事では第三版の改定ポイントや、概要を整理して紹介します。 

第二版のまとめ記事はこちら:【日本の大企業におけるオープンイノベーションの実施率は47%】――最新のデータ・取り組み状況をまとめた「オープンイノベーション白書 第二版」公開

「オープンイノベーション白書 第三版」の概要とポイント

そもそも、オープンイノベーション白書とはどのようなものなのでしょうか。同白書の「はじめに」を読むと、下記のように説明されています。

「そもそもイノベーションとは何なのか」、「イノベーションとはどのように創出されるのか」というイノベーションの世界的な知見を改めて整理すると同時に、「日本はイノベーションを創出できているのか、できていないのか」、そして、「できていない」と考えられる部分においては、「なぜできていないのか」を世界的な市況や日本の状況とともに分析をすることにより、その要因の整理を行っている。

要するに、現代の日本企業がイノベーションを起こすために、事例と推論に基づいてオープンイノベーション白書を作成し、「なにをすべきか」を検討する材料として使ってほしい、ということですね。

また、第三版の目次は以下の通りです。

第1章:イノベーションの重要性と変遷
第2章:各国・各業界におけるイノベーション創出の経緯
第3章:日本におけるイノベーション創出の現状
第4章:国内・海外のイノベーション推進事例
第5章:日本のイノベーション創出にむけた課題と方策
第6章:イノベーション創出に向けた活動報告

そして、第三版のポイントとして語られているのは、「オープンイノベーションを考える前に、そもそものイノベーションを正しく理解する」という考えに立ち返ることです。ポイントを大きく3つに分けてみるとこのようになります。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

【ポイント①】オープンイノベーションを含むイノベーションの定義、意義・目的や手段、歴史的な経緯を踏まえた全体像や実情
【ポイント②】イノベーションに関する最新データや業界毎の変遷、イノベーション創出の類型、各国の政策、国内外の事例などから導出される、イノベーションの実現に向けて考えるべきポイントや方策
【ポイント③】イノベーション創出に取り組む企業にとって、「自分たちは何をすべきか」という議論を進めるにあたっての検討材料

それでは、3つのポイントにフォーカスして、第三版の内容をざっくり解説していきます。

【ポイント①】イノベーションの定義、意義・目的や手段、歴史的な経緯を踏まえた全体像や実情

第1章ではイノベーションの重要性と変遷が丁寧に記されています。イノベーションの歴史を紐解くときに必ず語られる「自前主義からの脱却」「イノベーションのジレンマ」「スタートアップによるイノベーション創出」といった基本的な背景がしっかりとインプットできる内容となっています。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

興味深いのは、この章ではイノベーション創出にあたって考えるポイントとして「イノベーションになりきらない例」を羅列していることです。

第三版では「オープンイノベーションに取り組んでいればイノベーションを起こせると考えている企業が少なからずある」ことを課題のひとつとして据えていますから、失敗例をしっかり読み込むことで、事業の成功確度は上がるはずです。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

【ポイント②】データと事例から見るイノベーションの実現に向けて考えるべきポイントや方策

2~4章では、イノベーションをめぐるデータと事例が紹介されています。また、国内と海外それぞれの特徴を客観的に解説しています。特に覚えておきたいのは、日本の産業構造の特徴です。産業がサービス業へシフトしつつあること、大企業にリソースが集中していること、そして大企業が経済に大きな影響を及ぼしていることが特徴として挙げられています。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

それに加えて、日本は世界第3位のGDPであるにも関わらず、生産性・収益性が低い傾向があります。

次に、各国におけるイノベーション政策の特徴を列挙しています。この比較によって、各国がどこに「自国の強み」を持ってイノベーションの軸足を定めているのかがわかります。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

世界が独自の路線でイノベーションに舵を切るなか、日本は世界でのプレゼンスを低下させていることがデータからわかります。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

日本のイノベーションの取り組みを調査した結果、日本は研究開発・知財においては高い水準である一方で、経営、人材、スタートアップといった側面ではまだ発展段階にあることが示されています。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

第4章では、国内と海外のイノベーション創出に向けた主要な取り組みを業界別に紹介しています。また、自治体などが取り組む主要なエコシステムについてもいくつかピックアップされています。

いずれのデータ・事例も、ただファクトを紹介するだけでなく、課題点がどこにあるのか、成功・失敗要因はなにか、までを解説しています。

【ポイント③】イノベーション創出に取り組む企業が「自分たちは何をすべきか」の検討材料

1~4章までで、イノベーションにおける歴史や背景、データや事例が解説されました。5章では、それらの資料をもとにして企業が実際に「何をすべきか」の検討材料を提示しています。

まず、日本における強みや成長の機会となる要素を様々な側面から書き出しています。具体的には、産官学のオープンイノベーションの重要性や、スタートアップエコシステムの構築です。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

そして、強みや成長機会を踏まえて、有効な取り組みの方向性を示しています。大企業・製造業が軸になること、社会課題起点での価値創出を模索すること、保守的な考えやリソースの抱え込みを緩衝する仕組みを作ること、などがポイントになるようです。

出典:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

5章の結びには、「イノベーション創出に向けた日本の目指すべき方向性」としてイノベーション創出のための要点がまとめられています。

自社の強みを踏まえて方向性を決めること、必要に応じてオープンイノベーションを取り入れるべきこと、大企業とスタートアップが強みを活かし連携すること、などが重要とのことです。

【編集後記】オープンイノベーションという概念の認知拡大から、勝ちパターンの創出へシフト

「オープンイノベーション白書 第3版」はイノベーションについて熱心に情報を追いかけている人にとっても、学びの多い資料だったのではないでしょうか。基本的なオープンイノベーションの考え方はおさえつつ、具体的なデータや事例が大量にインプットできますし、とにかく「具体的にどうするべきか」がはっきり見えます。

個人的には、5章の結びのスライドが印象的で、「イノベーションは時代とともに変化」「万能薬は存在しない」「起業の本質に立ち返る」といった、非常にシンプルな言葉でまとめていることに納得感がありました。

今まで、オープンイノベーションは手段として認知は広まっていましたが、今回の改定では「勝ちパターン」を見つけるための資料に昇華していると言えるでしょう。日本のオープンイノベーションが次のステージにシフトしたことを感じる内容でした。

関連リンク:オープンイノベーション白書

関連リンク:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(概要版)

関連リンク:日本におけるイノベーション創出の現状と 未来への提言(全文)

【eiicon lab編集部】
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