2019年スタート!2018年オープンイノベーション総集編
平成最後の年となる2019年が始まって早1週間。仕事始めの人も多い今日の記事は、1年の振り返りと2019年のオープンイノベーション予測について。
2018年はやっと名実ともに『オープンイノベーション元年』と言える年だったのではないだろうか。
内閣府による、「日本オープンイノベーション大賞」<Japan Open Innovation Prize(JOIP)>が新たに創設され、第一回の募集が2018年末にあったことも象徴的だ。
昨年10月に募集を開始し、今現在正に審査中だと思われるこの「大賞」は各省の担当分野ごとの大臣表彰、経済団体や学術団体の会長賞の表彰、そして各賞の中で最も優れたものには内閣総理大臣賞が与えられるという、インパクトのある取り組みである。
関連記事はコチラから ⇒ 内閣府・石井芳明氏が語る『日本オープンイノベーション大賞』への想い
https://eiicon.net/articles/583
2018年のオープンイノベーション
「オープンイノベーション」「共創」という言葉が、一般的に使われ始めた2017年。2018年はその言葉が浸透を始めた最初の年だったのではないだろうか。
2〜3年ほど前にはなかった専従組織ができ始め、オープンイノベーションに特化した部署や担当が多く顕れた2018年。
「オープンイノベーション」という言葉が発信された PRTIMESのプレス数は2017年 841件に対し、2018年 1097件。「アクセラレーションプログラム」は、2017年 913件に対し、2018年 1280件。
「共創」というワードは2017年 605件に対し、2018年 1153件と2倍に近い数のリリースが出ている。
国内のアクセラレータープログラム実施企業は2016年 約50社、2017年 約90社に対し、18年は前年比4割増の130社程度になる見通しで2年間で2.6倍増。
スタートアップとの連携が主で語られる日本のアクセラレータープログラムの実施は、起業したての企業が一朝一夕で手に入れることが難しいリソースである「インフラ」事業を展開する企業と相性がよく、IT・通信企業が先駆者となり、鉄道、電力、ガス等、実践企業の業種が明らかに広がった年でもあった。
関連記事はコチラから ⇒ 【eiicon独自調査!】 「アクセラレータープログラム50選」カオスマップ(2017年度版) <前編>
https://eiicon.net/articles/452
「アクセラレータプログラム」、や、「オープンイノベーション」、そして「イノベーション」が混同されていたり、定義や境界にもさまざまな見解が飛び交った年となった2018年。言い換えれば大手企業から中小企業、スタートアップまで、多くの企業が注目し、見事トレンドワードとなった「オープンイノベーション」だが、実際には「取り組んでみたいものの、何から手をつけてよいか分からない」「取り組んだが、途方に暮れた」という声もよく聞くようになった年でもあった。
そうした声に応じるように、オープンイノベーションの支援ビジネスを手がける企業も増加。
eiiconでは昨年オープンイノベーションの実践手法の一つである”アクセラレータープログラム”の実施に強みを持った企業や、技術マッチングに強みを持った企業など、その形態や強みを整理区分した、オープンイノベーション支援企業22社を紹介している。
関連記事はコチラから ⇒ 「オープンイノベーション業者」カオスマップ(2018年度版)
https://eiicon.net/articles/557
2018年オープンイノベーション月次TOPICS
2018年の「オープンイノベーション」実践において、代表的な出来事をピックアップした。
1月
1月10日 我々eiiconにて、1,000以上の国内事例を分析した、『オープンイノベーションCASE MAP』を公開。
1,000以上の国内事例を分析した、『オープンイノベーションCASE MAP』を公開 |
1月31日 KIRINアクセラレーター2017』成果発表会(Demo Day)開催された。
『KIRINアクセラレーター2017』成果発表会(Demo Day)を開催、支援プログラム参加の事業家チームが成果を発表 |
発表した一般公募採択6チームは、下記の6社だ。
株式会社O: (オー) 、株式会社Root、グラアティア株式会社、コネクテッドロボティクス株式会社、株式会社フレンバシー、LOAD&ROAD, INC.
2月
2月1日 日本郵便初のオープンイノベーションプログラムDEMODAY開催
日本郵便初のオープンイノベーションプログラム これからの時代の郵便・物流を創出する「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」Demo Dayを2018年2月1日(木)に決定 |
※その後、日本に郵便は、採択企業との提携を次々に発表。
2月28日 eiiconにて『Open Innovation Award 2017』を発表。富士通株式会社が大賞を受賞した。
「eiicon」で最も輝いたイノベーターに贈られる『Open Innovation Award 2017』を発表~富士通株式会社が大賞を受賞!~ |
3月
3月はまさに2017年度の集大成ともいうべき、様々なプログラムのDEMODAYが開催された。それとともに2018年度に向けたアクセラレータプログラムがオープンし、新体制の発表も相次いだ。 成果発表は三菱地所、TIS、京急電鉄、JTBなど。
三菱地所主催の「Corporate Accelerator Program」成果発表会(Demo Day)を開催、支援プログラム参加の起業チームが成果を発表 |
TIS協賛の「MURCアクセラレータLEAP OVER」審査結果発表 |
KEIKYUアクセラレーター事業審査会実施、7チームのプログラム参加が確定 |
『JTBアクセラレーター2018』 ビジネスプランコンテスト開催、4チームのプログラム参加が確定 |
新たなプログラムでは、京葉ガス、TIS。
京葉ガスとCrewwによるオープンイノベーションプログラム:『KEIYO GAS ACCELERATOR 2018』を2018年3月12日より開始 |
TIS、スポーツ分野のアクセラレータプログラム『SPRING UP! for Sports』の参加企業の募集を開始 |
ショーケース・ティービーが『Open innovation本部』を設立したり、スペースのオープンリリースもいくつもあった月。
AIやIoT分野での起業家育成を目指すイベント&コワーキングスペースが4月中旬・大阪市内にオープン |
外部パートナー様と共に新たな価値を創造する『Open innovation本部』を設立 |
「東京開業ワンストップセンター渋谷サテライトセンター」2018年4月2日よりPlug and Play Shibuyaに開設 |
4月
4月もプログラム開始のリリースが目立ったが、TBSのイノベーションファンド2号設立が大きなニュース。
TBSイノベーション・パートナーズ、2号ファンドの設立を発表 |
相次ぐ、アクセラ開始のリリース。
5月
5月は、東急電鉄のアクセラも開始された。
スタートアップ企業との事業共創プログラム 第4期「東急アクセラレートプログラム」を実施します! |
また、JR東日本・DeNAがレンタカー無人貸出サービスの実証実験をホテル、東京駅などへ拡大するなどの実証実験に関するリリースや共同研究の開始リリースなども目立ち始める。2017年の成果が芽吹きだしている。
サッポロビールの店頭AI販促にZUKKU(ズック)が採用 |
ホロラボ、イトーキと共同でHoloLensを活用した次世代遠隔コミュニケーションシステムを共同研究開発 |
JR東日本・DeNAがレンタカー無人貸出サービスの実証実験をホテル、東京駅などへ拡大 |
6月
6月には、日本郵便初のオープンイノベーションプログラムDEMODAYにて最優秀賞を獲得したオプティマインド社が増資決定。 プログラムの副次的な効果も出始める。
名古屋大学発、物流AIベンチャーのオプティマインド、ティアフォー、寺田倉庫を引受先とする第三者割当増資を実施 |
6月も、アクセラの採択系のニュースが多い月だった。
既に会社の本流アクションに組み込まれている富士通社のアクセラレータもオープンした。
7月
7月には日本郵便二期目のオープン。
日本郵便のオープンイノベーションプログラム 郵便・物流のバリューチェーン全体を変革する「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM 2018」の開始 |
オープンイノベーション事例関連のリリースがいくつも出たのも印象的だった。
8月
8月は産学連携系のニュースが多くあった。
『あいちアクセラレーター2018』の支援として名古屋商科大学がパーソナルEVの自動運転やドローン飛行の実証試験フィールドを提供 |
大阪工業大学「シュナイダーARアドバイザー」を研究室ゼミで活用 |
9月
Tech in Asia Tokyo 2018や、Plug and Play Japan EXPOなど大型カンファレンスが開催された。
【9月20-21日開催】「Tech in Asia Tokyo 2018」投資家面談セッションに投資家35社の参加が決定! |
2日間合計1,251人が来場!Plug and Play Japan EXPO 開催レポート用 |
10月
10月は『日本オープンイノベーション大賞』募集開始。また行政のリリースも複数あった月だ。
『日本オープンイノベーション大賞』募集開始 |
経済産業省 関東産業経済局と山九は、高所作業安全化に関しての技術提案募集をスタート。命綱を張るドローン、ロボット開発パートナーに向け |
渋谷発、オープンに多様な人々が繋がる場所をつくる「Project SCRAMBLE」が、公式コミュニケーションプラットフォームとしてEventHubを起用 |
11月
11月はグローバルな取り組みが多くオープン。eiiconもインドと共にオープンイノベーションコンテストの実施を発表しました。
12月
eiicon、4000社を突破。
オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」、登録企業が4,000社を突破! |
2019年に向けた取り組みが多数発表された月だった。
『神谷町God Valley協議会』発足式を開催 |
RIZAPグループ、武田薬品など8社が参画するコンソーシアムでの活動を開始~未病産業における新たなビジネスモデル開発に向け各社との連携を推進~ |
事例も複数発表があった、
富士ソフトとの連携によるPhilips Co-Creation CenterでのARを活用したヘルステック・ソリューションの展開について |
eiicon 共創事例掲載 「サントリー本気野菜」×食育スタートアップHacksii「ハクシノレシピ」 実証実験を開始 |
2019年のオープンイノベーション
内閣府が2018年11月14日に発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、前期比0.3%減。年率換算では1.2%減。1~3月期以来、2四半期ぶりのマイナスとなっている。
全国で相次いだ自然災害の影響で個人消費が伸びず、輸出も大幅なマイナス。小国日本の経済が貿易に頼る部分が大きいのは宿命であり、今後もグローバルの景気と連動する部分が大きいことは避けられない。
GDP成長率は市場予想の中心値(年率1.0%減)を超える減少幅で、3年前、2015年の10~12月期以来の大きさとなっている。1%程度とされる経済の実力(潜在成長率)も大きく下回っているのが実情だ。
景気に関して各シンクタンクが2019年はまだ堅調に推移するであろうことを推測しているが、リセッションのタイミングはここから数年の間にまた必ず来るだろう。
その時こそ、企業の真価が問われ、事業の再構築、事業構造の変革が確実に遂行される。
2019年は、企業環境の大きな変化が推測される来るべき未来に備え、企業の構造そのものを変えていくような、「本気のオープンイノベーション」に向けた基盤づくり・基盤強化の年になると推測する。
改めて明記しておくが、オープンイノベーションは、単なる方法論であり、「イノベーション」と同義ではない。
「オープンイノベーションを実践しているが、会社にとって大きなイノベーションになっていないのではないか」というお門違いな考えは今すぐ捨ててほしい。
ただ、そのオープンイノベーションたる方法論をどこでどのように用いるか、が、より大きな文脈で使われるようになってくるのが2019年であろう。
事業構造を組み替えることにより、積極的に経営のあり方を変革させていく、その文脈でも「オープンイノベーション」という方法論が有効になってくる。不採算部門の縮小や撤退、事業所の閉鎖・統合といったリストラクチャリングとともに、企業連携・M&Aの加速が不可欠であり、「企業連携・M&A」の文脈で「オープンイノベーション」という方法論が多数語られるようになるだろう。
いかに早く企業トップがその重要性・有用性を理解し、会社に取り入れ仕組化をするかが今後の明暗を分けていく。
2019年、アクセラレーションプログラムは、実施を取りやめる企業も数社出てくるであろうが、まだ増加し、200を超えるだろう。
また、CVCの新たな設立も増える見込みだ。
「オープンイノベーション」という言葉が日本にも広がってきた。一時の流行、ブームとしてオープンイノベーションを捉えるのではなく、「真のオープンイノベーションは何か?」を考えるタイミングに来ている。
(文・中村亜由子)