サントリー本気野菜×食育スタートアップHacksiiが、出会いから2ヶ月で実証実験を進められる理由とは？

　「2030年のたんぱく質の取り方とは…？」――“未来の食と健康の課題解決”に挑む、味の素株式会社のオープンイノベーション

日本エコリーン株式会社

世界各国での採用例

箕浦智昭

1996年にスウェーデンで創業、現在世界37カ国で事業展開中の軽量スタンディングパウチのトータルサプライヤーです。

アイキャッチーな視認性で貴社ブランドを差別化するとともに、軽量なことでプラスチック使用量削減に貢献します。

牛乳・発酵乳などの乳製品、果汁・紅茶などの清涼飲料水、スープ・ソースなどの液状食品でのアプリケーションでコカ・コーラ社、ダノン社、ユニリーバ社などのグローバルカンパニーや地域のリーディングメーカーで採用されております。

飲料・液体食品向けアセプティック充填・包材のトータルサプライヤーです。北欧生まれのアイキャッチーなスタンディングパウチで貴社ブランドを差別化すると共に、環境への負荷軽減を目に見える形で実現します。

<p>2018年1月、サントリーグループは新規ビジネス創出を目的に、<a href="https://eiicon.net/about/suntory-co-creation/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">ベンチャー企業との共創プロジェクト</a>をスタートさせた。サントリーの既存事業である酒類や飲料、健康食品などに留まらない新たな消費者へのアプローチをベンチャー企業と模索していくことを狙いとし、専門部署である「ベンチャーコネクティングチーム」を立ち上げている。</p><p>そして2018年秋、ベンチャーコネクティングチームと出会ったのが株式会社Hacksii（ハックシー）だ。同社は、アクティブラーニング×食事づくりの新しい教育概念“キッチン学“を自宅で学べる家庭教育サービス「ハクシノレシピ」を提供するスタートアップ。キッチン学のプロである「エプロン先生」を自宅に派遣し、メニュー決めから調理、盛り付けまでを子ども主体で行うことで、“自分で考えて主体的に行動できる子”を育てる食育事業を展開している。</p><p>eiiconのプラットフォームを通じて出会い、コミュニケーションを取り始めた両社はスピーディーに情報交換。ベンチャーコネクティングチームが、「サントリー本気野菜」（※）というブランドで野菜青果の生産・販売も手がけるサントリーフラワーズとHacksiiを引き合わせることにより、共創プロジェクトが本格的にスタートした。</p><p><span style="color: rgb(124, 112, 107); font-size: 12px;">※「サントリー本気野菜」……野菜本来の“味の濃さ”を追求し、家庭菜園向け野菜苗と青果商品でシリーズ展開する野菜ブランド。</span></p><p><br></p><h4><span style="display:block;color:#33a09b;background-color:#e9f0f0;border-left:5px solid #33a09b;padding: 11px 15px 7px 18px;"><strong>実証実験に備え、「エプロン先生」向けの勉強会を開催</strong></span></h4><p>まず両社が取り組もうとしているのが、実証実験だ。「ハクシノレシピ」にて、サントリー本気野菜とのコラボした「本気野菜プラン」を2019年1月から始動させる。これは、「サントリー本気野菜」の特徴ある味わいや食感を活かし、食事づくりを子ども自身がレシピを考え調理することで、野菜の種類や性質、味わいなどさまざまなことを学べるサービスとなっている。――この実証実験を通して、「サントリー本気野菜」・「ハクシノレシピ」双方のサービス認知やユーザー層拡大、ブランディング向上を目指していきたい考えだ。</p><p>実証実験に備え、本気野菜の勉強会が12月に都内で開催された。サントリーフラワーズ　ベジタブル事業部・阿部氏が講師となり、「サントリー本気野菜」の魅力についてエプロン先生に説明した。</p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/72dfad95-14af-42d2-9a98-db6bb33613df.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p>今回の勉強会において阿部氏は、出汁のような濃厚なうまみが特徴のトマト「ボンリッシュ」、果実のように甘いミニトマト「純あま」、味の濃いナス「とろとろ炒めナス」という3品目の本気野菜を持参。開発の歴史から食味の特徴などを交えながら、品種の多様性について説明を行い、「正解にとらわれずに、みなさんの自由なイメージでメニューを作ってほしい」と話した。</p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/3710df02-aa99-4600-a182-93e85d035427.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p><span style="font-size: 12px; color: rgb(71, 85, 119);">▲とろとろ炒めナス</span></p><p>その後、エプロン先生たちがどんなメニューを作るのか作戦会議を行い、わずか2時間程度で10品目以上のメニューを即席で作り上げた。エプロン先生たちがこの勉強会を通して得た知識を、「本気野菜プラン」に役立てていく予定だ。</p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/e8b8b310-117e-4dc4-bae8-85a11215ab78.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p><span style="color: rgb(71, 85, 119); font-size: 12px;">▲阿部氏の話を聞き、手元の素材でどのような料理ができるかを相談するエプロン先生たち。</span></p><p><span style="color: rgb(71, 85, 119); font-size: 12px;"><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/8353e06b-3b2e-4b7a-a04a-1d54545cc75a.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></span></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);">▲わずか2時間ほどの間に、手際よく調理を進めていく。</span></span></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);"><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/643055af-c060-44af-8c7d-b38bb44d381c.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></span></span><br></p><p><span style="color: rgb(71, 85, 119); font-size: 12px;">▲勉強会では本気野菜を使い、10品目以上のメニューが完成した。</span></p><p><br></p><h4><span style="display:block;color:#33a09b;background-color:#e9f0f0;border-left:5px solid #33a09b;padding: 11px 15px 7px 18px;"><strong>出会いからわずか2ヶ月で実証実験を開始できる理由とは？</strong></span></h4><p>サントリーフラワーズとHacksiiによる共創プロジェクトは、サントリーのベンチャーコネクティングチームがサポート役となり、推進してきた。最初の出会いが2018年11月で、わずか2ヶ月という短期間で実証実験をスタートできたのはなぜか？共創する上で重要となることとは？――ベンチャーコネクティングチームの鈴木氏、サントリーフラワーズの阿部氏、Hacksiiの代表・髙橋氏の3名に話を聞いた。</p><p><br></p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/974e1cff-d05e-453c-9362-e6e66d35aea5.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p><strong><span style="color: rgb(71, 85, 119); font-size: 12px;">▲サントリーホールディングス株式会社　経営企画・財経本部　事業開発部　ベンチャーコネクティングチーム　課長　鈴木雄一氏</span></strong></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);">設備エンジニアとしてビール工場での設備導入等のプロジェクトを担当した後、生産部門の企画部署を経て、研究所で研究戦略の立案・推進を担う。その後、サントリーホールディングス（株）にて、事業開発部と研究企画部を兼務し、新事業開発の戦略立案・推進と研究開発プロジェクトのリーダーを担う。</span></span></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);"><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/3111d876-398f-4da5-a0fa-41023f9935a7.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></span></span><br></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);"><strong>▲サントリーフラワーズ株式会社　ベジタブル事業部　部長　阿部寛氏</strong></span></span></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);">2002年に設立され、花苗・花鉢、野菜苗・野菜青果の開発・生産・販売を手がけるサントリーフラワーズのベジタブル事業部のブランドマネジャーとして事業を牽引。野菜の美味しさ、家庭菜園の魅力を伝えるため、全国各所で勉強会やワークショップなどを開催し、講師役もつとめている。</span></span></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);"><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/cdd7aee7-8718-4aeb-905e-c3a182322f9b.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></span></span><br></p><p><span style="font-size: 12px;"><span style="color: rgb(71, 85, 119);"><strong>▲株式会社Hacksii 代表取締役CEO　髙橋未来氏</strong></span></span></p><p><span style="color: rgb(71, 85, 119); font-size: 12px;">右脳発達型の幼児教室で講師として勤務をした経験から、子どもの脳の発達と心の成長に着目。保護者の方から多くの食に関する相談を受ける中で、自身も食に興味を持ち、食育インストラクターの資格を取得。幼児教育と食という二つの切り口で子どもの成長に寄り添いたいと考えるようになる。自身が料理教室通ったことをきっかけに料理のプロセスには教育要素がとても多いと気づき、料理を通じた新しい教育を提供することを目指して、株式会社Hacksiiを設立する。</span></p><p><br></p><h4><span style="display:block;color:#33a09b;background-color:#e9f0f0;border-left:5px solid #33a09b;padding: 11px 15px 7px 18px;"><strong>eiicon内でのコミュニケーションが、出会いのキッカケに</strong></span></h4><p><strong><span style="color: rgb(243, 121, 52);">――サントリーさんのベンチャーコネクティングチームとHacksiiさんとの出会いはeiiconがキッカケになったと伺いました。</span></strong></p><p><strong>Hacksii</strong><strong>・髙橋氏　：　</strong>そうなんです。eiiconを見ていたら”食”領域の特集があったので、私たちの事業とマッチできると思い、チェックしたんです。すると、サントリーさんの企業名を見つけて、私たちが実現したいことと非常に近く、すぐにメッセージを送ってアプローチしました。</p><p><strong>サントリー・鈴木氏　：　</strong>最初は”食”の中でも当社の強みである「酒類・飲料」の周辺領域を想定していたので、Hacksiiさんから連絡をいただいたものの、当初は共創できるイメージが持てていませんでした。</p><p><strong>Hacksii</strong><strong>・髙橋氏　：　</strong>ただ、サントリーさんとは一緒に何かできるはずと思い、何度か鈴木さんとeiiconでメッセージのやり取りをしたんです。</p><p><strong>サントリー・鈴木氏　：　</strong>Hacksiiさんから連絡をいただくうちに、「うちにはサントリーフラワーズの本気野菜という”食”のブランドがある」ということに気づきました。これは何かできるかもしれないと思い、サントリーフラワーズに話を持っていきました。</p><p><strong>サントリーフラワーズ・阿部氏　：　</strong>当社は家庭園芸向けのビジネスがメインですが、およそ2年前から生鮮食品のビジネスに進出しました。それというのも、「食材の多様性をお届けしたい」と考えたからです。例えば、ドイツではジャガイモ一つとってみても、「煮る用」、「焼く用」、「蒸す用」などさまざまな種類があります。まさに多様性があるのです。その点で、「ハクシノレシピ」を通して食材の多様性を伝えるHacksiiさんとは思想やビジョンがピッタリだと感じ、今回の共創プロジェクトが走り出しました。</p><p><strong>Hacksii・髙橋氏　：　</strong>実は、11月の最初の打ち合わせからわずか1ヶ月で今回の勉強会〜実証実験が決まったんです。</p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/3e333250-736b-4fd7-8c2f-cb07638875f7.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p><strong><span style="color: rgb(243, 121, 52);">――とても迅速な意思決定ですね。</span></strong></p><p><strong>サントリー・鈴木氏　：　</strong>私たちとしても、スピード感はとても意識しているところです。じっくり考え時間をかけることは否定しませんが、新しいことに挑戦するにあたっては、スピーディーに意思決定をし、まずやってみることを繰り返す方がうまくいくと考えています。</p><p><strong>Hacksii</strong><strong>・髙橋氏　：　</strong>これだけはやい意思決定ができたのは、同じ未来を目指すことができるというビジョンの共感にあったと感じています。先ほど阿部さんも仰っていましたが、野菜には多様性があります。そして、私たちの「ハクシノレシピ」も、”個性を尊重する”・“正解を定義しない”という教育方針を取っており、それはまさに多様性を認めるということです。</p><p>今回の勉強会でご用意いただいた「とろとろ炒めナス」は、普通のナスと違って、とても丸い形をしています。この個性がある野菜を「ハクシノレシピ」を通じて子どもたちに伝えていく。このようなストーリーを、サントリーフラワーズさんと一緒に追いかけていくことができる強く感じたんです。――それが、プロジェクトを加速させることができた要因になっています。</p><p><strong>サントリーフラワーズ・阿部氏　：</strong>　私自身、これまでに外部の企業さんと一緒にさまざまなプロジェクトを進めたことがありますが、普通は、スケジュールを引いて、ゴールやKPIを決めて、と打ち合わせするにも準備も時間もかかります。しかし、今回のHacksiiさんとのプロジェクトは圧倒的にスピードがはやいです。それはやはり髙橋さんがお話ししてくれた通り、私たちもHacksiiさんも見ている未来が同じだからだと思っています。</p><p><strong><span style="color: rgb(243, 121, 52);">――2019年1月から、ハクシノレシピと本気野菜がコラボレーションした実証実験がスタートします。これからの展望についてお聞かせください。</span></strong></p><p><strong>サントリーフラワーズ・阿部氏　：　</strong>実証実験に備えて開催した勉強会では、甘さのあるミニトマト「純あま」を使った”トマト飴”というメニューをエプロン先生たちが作ってくれました。他にも予想もできなかったようなメニューを作ってくれましたが、「食材の多様性をもっと広めたい」という私たちの想いをさらに高めてくれるような新しい価値が生まれてくる感触があります。これからもHacksiiさんとの共創を、どんどん進めていきたいですね。</p><p><img src="https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/eiicon.prd.contents/image/articles/029a6e1d-92f1-4f34-ae8f-ac4cb06bb9e2.jpg" style="width: 100%;" class="fr-fic fr-dib"></p><p><strong><span style="color: rgb(243, 121, 52);">――今回、サントリーさんとHacksiiさんはeiiconを介して出会い、共創を進めてきました。最後に、eiiconを使う効果・メリットなどをお話いただけると嬉しいです。</span></strong></p><p><strong>Hacksii</strong><strong>・髙橋氏　：　</strong>自分たちの実現したいことを加速するために、大企業さんとコラボレーションしたいと考えることはありますが、部門や担当者も多くどのようにアポイントを取るのがベストか、実はこれまで分からずにアプローチできていないこともありました。eiiconは各社の考えている内容が明確に分かり、担当者の顔も見えます。また今回の“食”特集のように、いろいろな特集コンテンツがあるので、声をかける一押しをしてくれるなと感じています。</p><p><strong>サントリー・鈴木氏　：　</strong>いろいろなマッチング支援企業を利用させていただいていますが、eiiconは他と比べてもしっかり考えてコンタクトをとってくれる企業が多いと感じています。そのため、共創に至る確度が非常に高いです。eiicon上で、ビジョンやリソースをオープンにしているからこそ、目的をもった企業が多く集まってくれるのだなと思います。</p><p><br></p><h4><span style="display:block;color:#33a09b;background-color:#e9f0f0;border-left:5px solid #33a09b;padding: 11px 15px 7px 18px;"><strong>取材後記</strong></span></h4><p>インタビュー中に、Hacksii・髙橋氏、サントリーフラワーズ・阿部氏に共通していたのは、「同じ未来を見ているからこそ、プロジェクトを迅速に進めていくことができる」という点だ。確かにオープンイノベーションを進めていく上では、KPIなどを決めた上でのゴール設定も重要だろう。しかしながら、それではスピード感が失われてしまう。目指すべき方向性が合致したのであれば、とりあえず前進してみる。挑戦してみる。それが共創プロジェクトを推進させる、一つの要因になるだろう。</p><p><span style="font-size: 12px;"><strong>※サントリーが取り組む「ベンチャー共創プロジェクト」の詳細については<a href="https://eiicon.net/about/suntory-co-creation/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">コチラ</a>をご覧ください。</strong></span></p><p>（構成・取材・文：眞田幸剛、撮影：加藤武俊）</p><p><br></p><p><a href="https://auba.eiicon.net/register?utm_source=tomoruba&amp;utm_medium=banner&amp;utm_campaign=register_tmrb_articles_615" target="_blank"><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/615/upload/iW-3rDAesCB01NlkqqLo2A.png" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"></a><br></p>

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斉藤佑実

松井颯人 合同会社ファストチェンジ

新田裕亮

須原靖明

須原　靖明

2018年1月、サントリーグループは新規ビジネス創出を目的に、ベンチャー企業との共創プロジェクトをスタートさせた。サントリーの既存事業である酒類や飲料、健康食品などに留まらない新たな消費者へのアプローチをベンチャー企業と模索していくことを狙いとし、専門部署である「ベンチャーコネクティングチーム」を立ち上げている。そして2018年秋、ベンチャーコネクティングチームと出会ったのが株式会社Hacksii（ハックシー）だ。同社は、アクティブラーニング×食事づくりの新しい教育概念“キッチン学“を自宅で学べる家庭教育サービス「ハクシノレシピ」を提供するスタートアップ。キッチン学のプロである「エプロン先生」

栗山 彩香

AUBAを活用し、事業共創へ至っている企業へインタビュー。オープンイノベーションで重要なポイントなどをヒアリングいたしました。

オープンイノベーション共創事例

<p>おいしさ設計技術、先端バイオ・ファイン技術を軸に、日本や世界の「食」を100年以上にわたり支えてきた味の素グループ。2030年に「食と健康の課題解決企業」に生まれ変わるとビジョンを掲げ、様々な改革に取り組んでいる。</p><p>2020年7月には、未来の新事業開発をミッションとするリサーチ＆ビジネス企画部を新設した。経営主導のもと組織横断的な体制を築き、新たな領域での価値創造に向けて、外部企業とのオープンイノベーションを強力に推進していくという。</p><p>その味の素株式会社が、10年後、20年後の暮らしと社会を想定し、次世代の価値を創造する共創プロジェクトを始動。5つのテーマを掲げ、<a href="https://eiicon.net/about/ajinomoto-oi2020/" target="_blank">7月16日（木）より共創パートナーの募集を開始した。</a></p><p>今回は、日本国内だけでなく、フランス、ロシアでも研究者としてのキャリアを積み、現在はリサーチ＆ビジネス企画部を管掌する、専務執行役員　児島宏之氏にインタビューを実施。味の素が目指す姿や新設組織にかける意気込み、そして今回の共創プロジェクトについて話を聞いた。</p><p><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/EsMzX1RPSlJq4xn6Y-ASFg.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></p><div><div><b><font color="#003163">■味の素株式会社　専務執行役員　リサーチ＆ビジネス企画部長　農学博士　児島宏之氏</font></b></div><div><br></div><div>1985年入社。研究所にてアミノ酸生産菌の育種に携わる。1997年、フランスの味の素ユーロリジン社アミアン工場に赴任、飼料用アミノ酸生産技術の導入を行う。2000年に帰国、新規技術開発に携わった後、2005年にモスクワの研究所に赴任。2009年に帰任し、発酵研究所長に就任。プロセス開発研究所長、バイオ・ファイン研究所を歴任。2019年に研究開発統括へ。研究開発企画部にて策定した中期計画のなかの未来創造プロジェクトが、味の素グループ全体の事業モデル変換タスクフォースの中核に据えられている。</div></div><div><br></div><div><br></div><h2><b>未来の価値を創る、共創プロジェクトに設定された5つの募集テーマ</b></h2><div><br></div><div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/atEvftzBiZ8_aOuiz4S_ng.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><b><font color="#ff9c00"><br></font></b></div><div><b><font color="#ff9c00"><br></font></b></div><div><b><font color="#ff9c00">――7月16日始動の『“未来の食と健康の課題解決”を使命に挑む共創プロジェクト』では、テーマを5つ設定していらっしゃいます。それぞれどのようなことを期待していらっしゃいますか。</font></b></div><div><br></div><div><b><font color="#003163">児島氏　：　</font></b>今回の5つのテーマはいずれも、当社1社だけでは到底成し遂げることはできません。しかし、どういう課題があるのか、糸口はある程度見えているような状況です。ぜひ、「我こそは」という方々と共創して、価値を生み出していきたいと思っています。</div><div><br></div><div>まず、<b>「①次世代の調理/食事準備による生活の向上」</b>については、調理器具や住宅設備関連の方々と協業する方が、より良いものを早く生み出すことができるでしょう。<b>「②環境に配慮した「たんぱく質」」</b>では、たんぱく質の素材はどこにあり、どのような形で提供するのか、考えていく必要があります。</div><div><br></div><div>そして、<b>「③パーソナライズされた“食”で健康を実現」</b>については、健康情報の収集・分析といったテクノロジーの力が不可欠です。<b>「④フードロス問題を未利用原料の活用で解決」</b>では、何をどう活用していくのか、そうしたアイデアから検討していくテーマです。</div><div><br></div><div>最後の<b>「⑤環境にやさしい食品包材の開発」</b>においても、当社だけでは新たな食品包材の開発はできません。しかし、包材に要求される性能についての知識を提供する事ができます。</div></div><div><br></div><div><div><b><font color="#ff9c00">――研究開発畑を歩まれてきた児島さんは、他社と共創する上での味の素グループならではの強みをどう捉えていらっしゃいますか。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>やはり、アミノ酸の研究で培った、研究開発力とグローバルに広がる顧客基盤です。たんぱく質は20種類のアミノ酸で構成されていますが、アミノ酸の研究は実に奥が深いのです。アミノ酸には様々な働きがあり、機能があり、アプリケーションがあります。また、それぞれを組み合わせたアミノ酸配合設計の研究も進んでおり、「食と健康」をテーマに多くのソリューションを開発してきました。これらは世界に誇れる当社ならではの強みです。</div><div><br></div><div>また、おいしさの設計技術、栄養に関する知識も豊富ですし、顧客への提供方法にも工夫を凝らしてきました。このような当社が持つ強み・ノウハウと、当社にない技術やアイデアを掛け合わせることで、事業の可能性は広がっていくと考えています。</div><div><br></div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/ATO5c-RlmEZ-WfeOqOoeIw.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></div></div><div><br></div><div><br></div><div><h2><b>未来からバックキャストして事業開発を行う</b></h2><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――味の素グループでは2030年に目指す姿として、「食と健康の課題解決企業」を掲げていらっしゃいます。その背景を聞かせていただけますでしょうか。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>これまで当社にとって、「新しい事業＝新しい製品を作ること」でした。スーパーマーケットに行くと、味の素グループの商品が棚にたくさん並べてある、そんな姿を目指していたのです。</div><div><br></div><div>しかし急速に変化する世の中において、そうした自社起点の発想のままでは、持続的な成長は期待できません。本当に必要なのは、社会の未来像からバックキャストして事業開発を進め、顧客への提供価値を最大化させていくことです。</div><div><br></div><div>たとえば、一人ひとりの健康状態やライフスタイルが変化・多様化する中で、いかに製品とソリューションを組み合わせ、パーソナライズされたサービスを提供するか。それを実現できてこそ、「食と健康の課題解決企業」なのです。</div></div><div><br></div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/6tAPpDnlMD8L7o9DKZsohg.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></div><div><br></div><div><div>▲味の素グループの<a href="https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/strategy/managementplan.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「中期経営計画」</a>より、2030年に目指す姿の実現に向けた基本方針。大上段に「食と健康の課題解決」が掲げられている。</div><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――自社起点の発想から脱却し、顧客価値に力点を置いた事業の創出にシフトチェンジしていくということですね。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>その通りです。しかしながら顧客への提供価値というものは、必ずしも誰かが答えを持っているというわけでもありません。現在、顧客が認識していない、顕在化していないニーズや価値もあります。iPhoneのように、顧客が気付いていない価値を見つけ、誰にも真似できない価値を創造する。そういったことを、私たちも食と健康をテーマに推進していきたいと考えています。</div><div><br></div><div>もちろん、遠回りもするでしょうし、失敗もたくさんするでしょう。私も過去、新規事業を手掛けた際に、失敗を経験しました。iPhone を生み出したApple社だって、すべての製品がヒットしたわけではありません。失敗を繰り返して試行錯誤していかなければ、当社の未来はないと考えています。</div><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――児島さんご自身の失敗経験とは？</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>印象的なのは、ある化学会社との共同研究で、バイオプラスチックを開発した時の経験です。「地球にやさしいから売れるはずだ」という理由で、顧客ニーズを十分に検証しないままで走り出してしまいました。その結果、製造コストが高い上、実際の利用シーンで求められる性能を満たすことができなかったため、世に出すことはできなかったのです。</div><div><br></div><div>結局それも、顧客への提供価値を考えず、「両社の今の技術なら、これができるだろう」と、自社の技術起点での発想だったことが、失敗の原因だったのだと思います。世の中にない新しいものを作ろうとすると、どうしても今の自社の姿を起点に考えてしまいがちです。</div><div><br></div><div>しかし、起点にすべきなのは現在ではなく、未来です。10年後、20年後、世の中がどのように変化し、そこでは何が求められているのかを考え、そこに到達するには今から何を着手すべきなのかを考える。それが2030年に向けて取り組みを開始する上での、一番のポイントですね。</div><div><br></div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/VrVzl5JJGhDQMaJ_XqDvxw.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></div></div><div><br></div><div><br></div><div><h2><b>研究開発と事業をシームレスにつなぐ新設部門</b></h2><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――2020年7月、リサーチ＆ビジネス企画部を設立したと伺いました。この組織を立ち上げた背景について聞かせてください。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>新たな領域での事業創造をより強力に推進することが目的です。リサーチ＆ビジネス企画部は、元々は研究開発企画部という名称の組織でした。</div><div><br></div><div>しかし、「未来の顧客価値を起点に、バックキャストで今やるべきことを考える」ためには、研究開発で終わるのではなく、事業までを見据えて仕事をすることが不可欠です。そういったミッションを担うべく、この組織を発足させました。</div><div><br></div><div><font color="#ff9c00">――研究開発から事業までをシームレスにつなぎ、未来に向けてより素早く柔軟に動ける組織となったのですね。</font></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>実は、「社会の未来像を起点に、バックキャストして事業開発を行う」という味の素グループの全体方針は、研究開発企画部の中期計画から生まれたのです。企業の研究開発部は、比較的中長期のテーマに取り組んでいます。</div><div><br></div><div>しかし、すぐに芽の出ない研究テーマは、「いつマネタイズできるのか」「本当に必要があるのか」という声と常に戦わなくてはなりません。真剣に取り組んでいる研究が、途中で「やめろ」と言われるのは悔しいものです。</div><div><br></div><div>では、どうすれば止めなくてよくなるのか。それこそが、バックキャストという考え方です。「未来を見据え、そこからバックキャストして、今やらなければならない緊急度の高いテーマに取り組んでいる」と言うことができれば、途中でやめろと言われることはなく、むしろ事業に大きなインパクトを与える重要なテーマだと理解してもらえると考えます。</div><div><br></div></div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/xvqm78yjBmQ_xDC-c81WAA.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></div><div><br></div><div><div>▲味の素グループのASV経営<a href="https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/top/pdf/2020_02_19.pdf" target="_blank" rel="noopener noreferrer">「2030年の⽬指す姿と2020–2025中期経営計画」</a>より</div><div><br></div><div><font color="#ff9c00"><b>――新たな組織になることで、研究開発部の頃よりも体制は強化されているのでしょうか。</b></font></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>人数は大幅に増えたというわけではありませんが、組織構造と役割を変えました。インキュベーショングループ、アクセラレーショングループ、そしてアドミニストレーショングループという3グループで、事業に紐づくように編成しています。</div><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――未来の事業を見据えた組織ということで、メンバーの方々のモチベーションも変わってきていますか。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>そうですね。組織のミッションを社員にも浸透させているところで、意識も変わってきています。今はまだ、飛行機で言えば離陸に向けて滑走路を走っているところです。早く大空に飛び立ち、味の素グループの未来のDNA、行動規範になるように育てていきたいですね。</div><div><br></div><div>当社には、幸い様々なバックグラウンドを持つ社員がいます。そうした人財が、さらに外部の多彩な発想を持つ人々と共創することで、新たな価値を創出できると考えています。</div><div><br></div><div><img src="https://auba-production.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/articles/1919/upload/XimOaznSlhDI4bAzbgPn3w.jpg" class="auba-summernote-image" style="width: 100%;"><br></div><div><br></div></div><div><br></div><div><h2><b>「うま味」に匹敵する新しい価値創造へ</b></h2><div><br></div><div><b><font color="#ff9c00">――最後に、プログラムへの期待、そして応募企業に向けたメッセージをお願いします。</font></b></div><div><br></div><div><span style="color: rgb(0, 49, 99); font-weight: bolder; letter-spacing: 0.2px; font-family: Roboto, -apple-system, system-ui, BlinkMacSystemFont, &quot;Segoe UI&quot;, Oxygen, Ubuntu, Cantarell, &quot;Droid Sans&quot;, &quot;Helvetica Neue&quot;, Arial, sans-serif;">児島氏　：　</span>当社の歴史は、1909年に「味の素」を販売したところから始まりました。これは世界初の「うま味調味料」です。当社は、甘味・酸味・塩味・苦味に続く第5の味「うま味」を世に送り出したのです。</div><div><br></div><div>“未来の食と健康の課題解決”を通じて、この「うま味」に匹敵するインパクトを生み出す価値創造に、ぜひチャレンジしたいと考えています。そこには、当社にないアイデアや技術が欠かせません。既存の製品やサービスを改良するのではなく、新しい価値を創るためのコラボレーションができたら幸いです。</div><div><br></div><div><br></div><h2><b>取材後記</b></h2><div><br>自社起点から脱却し顧客価値の創造に力点を置くこと、そのために未来からバックキャストすること。この姿勢を児島氏はインタビューの中で幾度も強調していた。世の中の変化に追随するのではなく、先取りをして、今やるべきことを考える。そして決めたことに固執せず、柔軟にアップデートしていく。味の素グループのこうした柔軟な姿勢は、オープンイノベーションに不可欠であろう。</div><div>その意志を反映したリサーチ＆ビジネス企画部を新設し、新たに挑む<a href="https://eiicon.net/about/ajinomoto-oi2020/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">『未来の食と健康を、アップデートする共創プロジェクト』</a>は、期待も大きい。テーマに関連した取り組みをしている企業は、ぜひ応募を検討して欲しい。</div><div><br></div><div>（編集：眞田幸剛、取材・文：佐藤瑞恵、撮影：加藤武俊）</div></div>