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デジタル技術を求めるオープンイノベーションプログラム ― “ヘルスケア・創薬の未来を変える” | バイエル薬品

デジタル技術を求めるオープンイノベーションプログラム ― “ヘルスケア・創薬の未来を変える” | バイエル薬品

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ドイツに本社を構え、ヘルスケアと農業関連のライフサイエンス領域で世界をリードするバイエル社。日本においては解熱鎮痛剤の代名詞になっている「バイエルアスピリン」を開発したことでも知られるグローバル企業だ。日本では1911年にドイツ・バイエル社の全額出資により初めて法人が設立され、すでに100年以上もの歴史があり、バイエル社の研究成果を日本へと広げていく役割を担っている。

同社は2014年、業界に先駆けてオープンイノベーションを推進する「オープンイノベーションセンター」を立ち上げた。2016年には「Grants4Apps Tokyo」と銘打ったオープンイノベーションプログラムを始動。過去に開催してきたプログラムからは、コラボレーションにつながる事例も生まれているという。

今年も、「G4A Tokyo Dealmaker 2019」というタイトルで、共創パートナーの発掘を目指すプログラムをスタートさせ、応募登録が始まっている(最終締切 7月19日 17:00)。今年で6回目の開催となるバイエル薬品のオープンイノベーションプログラムとはどのような内容なのか?――実施の背景や募集テーマ、提供リソース、応募企業に期待することなどについて、同社のオープンイノベーションセンターでセンター長を務める高橋俊一氏にお伺いした。

▲バイエル薬品株式会社 オープンイノベーションセンター長 高橋俊一氏

三井製薬工業(当時)に研究員として入社。その後、経営統合により日本シエーリング社へ。循環器、内分泌、再生医療などに関する研究に従事。バイエル社と統合後は、開発部門のプロジェクトマネジメントのほか、メディカルアフェアーズ部門のマネジメント職を歴任。2013年より同社初となる「オープンイノベーションセンター」の立ち上げを牽引する。「とにかくやってみよう」というのが部署のカラー。

バイエル薬品が目指す、オープンイノベーションの形

――まずは、バイエル薬品さんがオープンイノベーションに取り組む理由について、お伺いできればと思います。

高橋氏 : 当社のオープンイノベーションセンターは、大きく2つの部署に分かれています。ひとつは“デジタル分野”で新しいソリューションを探していくチーム。もうひとつは“創薬分野”で新薬につながるイノベーションを探していくチームです。

“デジタル分野”については新しい領域です。私たち製薬企業にとって、経験やネットワークの浅い分野なので、外部の潜在的なパートナーの力をお借りしたい。こうした背景から、たとえばIT系スタートアップといったデジタル領域に強いパートナーを探しています。

また、“創薬分野”については当社の専門ではありますが、大学や研究機関といったアカデミアとの連携により、外部の研究アイデアや技術を組み合わせて新しいものを生み出すことを目指しています。

 必ずしも、自社の研究開発能力が下がってきたということではありません。より幅広い新しいものを外部から取り入れ、自社のノウハウと組み合わせることで、今までになかった革新的なものを一緒になって作りたい――これがオープンイノベーションを積極的に推進する最大の理由です。

――なるほど。では、現在公募されている「G4A Tokyo Dealmaker 2019」について、どういった背景や目的で実施されているのでしょうか。

高橋氏 : 今年の「G4A Tokyo Dealmaker 2019」は、“デジタル分野”で新しいソリューションを見つけにいくプログラムになります。先述の通り、当社はデジタルという領域において、ネットワークやノウハウ、経験をあまり保有していません。ですから、デジタルテクノロジーを活用して製品を作り出す、あるいはそういったものを取り込む準備が整っていないとの課題感を強く持っていました。

そこで、2016年より現在のプログラムの前身ともなる「Grants4Apps Tokyo(以下「G4A」)」を開始させたのです。今回で6回目の開催となりますが、最初の4回はデジタル領域でネットワークを広げる、情報収集をするという意味合いが強いプログラムでした。「製薬企業であるバイエルが、デジタル領域で共創パートナーを探している」ということを、対外的に知ってもらおうという狙いです。

さらに、5回目となる昨年2018年からは、「G4A Tokyo Dealmaker 2018(以下「Dealmaker」)」というタイトルで、新しいプログラムを始めました。このプログラムの特徴は、従来と異なり、私たちが実際に抱えている課題やニーズを具体的に提示し、それに対してソリューションを持つ企業に応募していただく。つまり、各部署が実際に抱えている課題に対するソリューションを見つけるためのプログラムです。

そういう意味では、本来、私たちがやりたかったプログラムに近づくことができたと感じています。そして、今年のプログラムは、昨年実施した「Dealmaker」を、テーマを変えた形で開催します。

▲「G4A Tokyo Dealmaker 2018」の様子 https://g4atokyo.jp/history/theme05.php

現存する課題を起点とした、共創パートナー発掘プログラム

――「Dealmaker」は、“実際の課題”を起点としている点が大きな特徴ですね。昨年、初となる「Dealmaker」を実施して、どのような手ごたえがあったのでしょうか。

高橋氏 : 成功裡に終わったとの認識です。課題の内容を絞ったにも関わらず、37件の応募をいただくことができました。ご応募いただいた方々も、これまで当社がコミュニケーションをとったことのない企業ばかりでしたね。ご提案いただいた内容も、当社では発想しえない斬新なアイデアが多く、大きな収穫があったと感じています。

「Dealmaker」ではプログラムの中で、ご応募いただいた方々と、当社の各部署に所属する課題責任者が、同じ場に集まって議論をする場を設けています。そこでは部署が抱えている具体的な課題と、ご応募いただいた方々の保有するアイデア・技術のすり合わせを行います。

こうしたプロセスを経て、昨年は最終的に12社とコラボレーションに向けた合意を得ることができました。合意に至った方々とは、現在進行形で共創に向けたプロジェクトを進めています。

――37件中12件というのは、かなり高い確率で合意されていますね。具体的に、どのような共創事例が生まれていますか。

高橋氏 : 2018年の「Dealmaker」はまだ終了したばかりで、今も進行中のため、具体的な事例は紹介し難いのですが、私たちが求めているアイデアはかなり出てきたという印象です。この中には、たとえば、これまで私たちが手作業で行ってきた業務を、テキストマイニングの技術を活用して自動化していくというプロジェクトが進行しています。このオープンイノベーションプログラムが、当社の実際の業務で活かされ始めたとの手ごたえがありますね。

また、Dealmaker 2018のプログラムを通して、宇宙関連のベンチャー企業など、今まで全く想像もできなかったような異業種の企業とネットワークを築くことができ、新しいコラボレーションができそうな可能性も感じています。

――ちなみに、プログラムの課題設定は、どのようなプロセスで決めているのでしょう。

高橋氏 : プログラムの課題は、私たちの部署で設定するのではなく、各部署から募っています。集まったものをもとに、私たちの部署で選定・具体化するという流れです。繰り返しになりますが、「Dealmaker」の大事なポイントは、社内各部署が抱える実際の課題をもとにプログラムの課題を設定していること、さらに各部署の課題責任者たちがプログラムに直接参加するということです。だからこそ、高い確率で共創につながっていますし、社内からもポジティブな感想をもらっています。

創薬プロセスの未来を変える、デジタルソリューション

――「やって終わり」ではなく、共創につながる可能性が高いプログラム設計になっているということですね。では、今回のプログラムのテーマについて教えてください。

高橋氏 : 今回のテーマは大きく分けて2つ、“研究開発”と“画像診断”です。この分野で、デジタルテクノロジーを活用した新しいソリューションを、外部の方たちと共創したいと考えています。

まず“研究開発”というと実験のイメージを持たれる方も多いと思いますが、今回はその部分ではなく、臨床開発の部分。つまり、研究によって生まれた薬の候補を、実際の医療現場で検証していくプロセスです。臨床開発のプロセスにおいても課題はたくさんあります。課題を解決できる革新的なデジタルツールやソリューションがあると信じています。

具体的には、医薬品の承認申請関連文書を、デジタル技術を活用して正確かつ効率的に作成する技術。あるいは、膨大な成分・製造方法・操作条件の組み合わせから、最適なものを効率的に見つける技術。サンプルの管理を円滑にする技術などを探しています。

また、“画像診断”の分野においては、その名の通り、主に画像解析に長けたパートナーを探しています。

――バイエル薬品さんと共創することで、応募者はどんなことが実現できますか。提供できるリソースはどんなものでしょうか。

高橋氏 : 提供できるものとしては、私たち製薬企業の持つ専門的なノウハウが挙げられます。当社は数多くの臨床開発プログラムを進めていますし、実績もあります。創薬、とりわけ臨床開発という点においては、かなり高い経験値を持っていると言えます。また、さまざまな医療機関や海外とのネットワークも豊富です。共創パートナーには、私たちの保有する知見やネットワークをできる限り開示して、両者で一緒になっていいものを作っていきたいですね。

さらに、バイエルは世界中に拠点を持つグローバル企業ですから、生まれたソリューションをグローバルに展開できる可能性もあると思います。実際、私たちが進めているプロジェクトの9割以上は、グローバルプログラムといって、海外チームと一緒に動かしているもの。日本発のソリューションを、バイエルグループ全体に活用していくことも夢ではないでしょう。もちろん、簡単なことではありませんが、そんな期待も持っています。

パートナーに求めたいのは、“Co-Creation”の姿勢

――応募企業に求めるマインドや姿勢があれば教えてください。

高橋氏 : 私たちが求めているのは、当社の持つ課題に対して、ソリューションを一緒に作ってくれる方々です。当社がお願いをして、それにすべて従っていただきたいわけではありません。前段で申し上げた通り、私たちは製薬において高い専門性を持ちますが、デジタル領域においては経験がありません。ですので、意見やアイデアを積極的に出していただきたい。一緒になって革新的なソリューションを作ってくれるチームと組みたいですね。アイデアを持った方々とともに、アイデアを発展させていくことを望んでいます。

――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。

高橋氏 : これまで製薬企業とはまったくお付き合いのなかったみなさまにも、ぜひエントリーしていただきたいです。エリアも東京・大阪に限らず、全国からの応募をお待ちしています。デジタルテクノロジーに強みを持つスタートアップをはじめ、大小さまざまな企業と新しいものを一緒に生みだしていきたい。

「Co-Creation(コクリエーション)」という言葉がありますが、私たちが目指しているのは、まさに「Co-Creation」です。今回応募いただく企業のアイデアや技術に、バイエルのノウハウを組み合わせることで、新たなソリューションをともに生み出しましょう。そして、最終的に患者さんのもとへ、いち早く新しい治療法や薬を届けていける未来を創っていきたいと考えています。

取材後記

バイエル社は、「世界のバイエル」とも称されるように、グループ全体の売上高は396億ユーロ、従業員数は約11万7,000名(2018年)にも及ぶ、壮大な規模のグローバル企業だ(※1)。そんなバイエル社と、高い確率でコラボレーションできる点が、このプログラムの特徴だと言える。プログラムの課題を見ると、製薬業界とは一見関連の薄そうな、AI系のスタートアップや画像処理系のベンチャー、大小問わずIT系テックカンパニーなどが対象となりえる。求めているのは、あくまでデジタルテクノロジー。もしかしたらあなたの持つテクノロジーやアイデアが、世界をリードする創薬メーカーで活かせるかもしれない。ぜひ詳細を確認のうえエントリーを(※2)。

※1 バイエル要覧 https://www.bayer.jp/ja/about/bayer-in-the-world/profile/ より

※2 G4A Tokyoプログラム募集ページ:https://www.g4atokyo.jp/

※2 エントリー期間:4月15日 ~ 5月31日(1次〆切)/ 6月28日(2次〆切) / 7月19日 17:00(最終〆切)

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(構成:眞田幸剛、取材・文:林綾、撮影:齊木恵太)

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