【イベントレポート】日本流オープンイノベーションによるインダストリー4.0の未来とは?
去る10月13日、「日本流オープンイノベーションによるインダストリー4.0の未来」と題したイベントが東京・日本橋のClipニホンバシにて開催された。このイベントは、大企業や官公庁の事業責任者を対象にオープンイノベーションをテーマにしたシリーズ企画。主催したのは、イノベーション創造のための大企業向けコンサルティングやベンチャー企業に対するインキュベーションを手がける株式会社アドライトだ。
▲株式会社アドライト 代表取締役 木村氏「1〜2年前からオープンイノベーションに取り組む大企業が増えており、2016年はまさに”オープンイノベーション元年”とも言える年だ」と語る。同社では数年前より大企業向けのベンチャー連携支援を多数手がけており、また代表の木村氏は数々の上場前後の有名ベンチャー企業の社外役員として関与していることなどから、これまでの実績をもとに更なるオープンイノベーションのハンズオン支援を強化していく方針だ。
■「インダストリー4.0」の未来を考える。
ここ最近、日本でも注目を集めることの多い「インダストリー4.0」というワード。ドイツを発祥とする”第4の産業革命”=インダストリー4.0は、生産工程のデジタル化・自動化・バーチャル化のレベルを大幅に引き上げ、生産コストの極小化を目指すというものだ。工場を軸にIoT化を推進することにより、既存にはない新しい価値・ビジネスモデルの創出が期待されている。そのためにも、オープンイノベーションという手法が有用となる。インダストリー4.0は何を生み出し、どんな未来が待っているのか。そのヒントとなるのがイベントに登壇した以下4名のプレゼンテーションだ。
●経済産業省情報経済課 課長補佐 河野氏
●レイ・フロンティア株式会社(https://www.rei-frontier.jp/) 代表取締役 CEO 田村氏
●株式会社トライディア(http://www.3idea.jp/) 代表取締役 西岡氏
●株式会社ウフル(http://uhuru.co.jp/) 上級執行役員 八子氏
■4名のプレゼンから、日本版「インダストリー4.0」が見えてくる。
さて、上記4名によるプレゼンテーションでは、どのようなことが語られたのか。紹介していきたい。
▲経済産業省情報経済課 課長補佐 河野氏
ドイツの「インダストリー4.0」、アメリカの「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム」に対し、日本での取り組みとして「新産業構造ビジョン」を紹介。革新的な産業モデル構築のための最新の取り組みについて「IoT、ビッグデータ解析、AI技術の発展」という3つのキーワードを挙げた。経済産業省のミッションは、人口減少・高齢化のような問題解決のためのソリューションを提供するとし、今後、アメリカやドイツなど外国との競争の中で国際競争力を高めてゆく必要があるとの背景から、最近の経済産業省の取り組みであるIoT推進ラボなどのコミュニティも紹介した。
▲レイ・フロンティア株式会社 代表取締役 CEO 田村氏
大企業との協業事例として、Silentlog Analyticsという、準リアルタイムで行動情報を可視化できるサービスを紹介。事例としては、疑似的なドライブレコーダーとして利用でき、ドライバーの運転行動の分析等も行え、安全運転の解析などの実績がある。
▲株式会社トライディア 代表取締役 西岡氏
大企業との協業事例として、工場内の各種センサーに関するビッグデータ解析によるソリューションの提供の紹介。データの膨大な絶対数×連動する各種センサーの組み合わせ数×時間差で動く数値の膨大なデータを、並列演算の導入による計算速度の高速化により解析。管理の判断が最適であったかどうかを事後的に検証し、技術継承にも役立てられる仕組みとなっている。
▲株式会社ウフル 上級執行役員 八子氏
同社のIoTソリューションを活用した大企業との協業事例として、風力発電において、IoTを用いたモニタリング(損耗状況などをダッシュボードに表示して、メンテナンス業務等を支援)や、水道の揚水ポンプのモニタリング(町全体で数万にも及ぶセンサーからのデータを管理。ポンプの修理時期をあらかじめ予測し、作業員の方々の最も効率的な配置といったことに活用)などを紹介。
レイ・フロンティア、トライディア、ウフルという、躍進を続けるベンチャー企業3社。プレゼンで紹介された具体的なオープンイノベーション事例によって、日本国内でもすでにインダストリー4.0の胎動が感じられた。少子高齢化が進み、労働人口の縮小が急ピッチで進む日本にとっても、産業全体の生産性向上は急務と言えるだろう。さらに、経済産業省も推進する「IoT、ビッグデータ解析、AI技術の発展」。大企業とベンチャー企業との精度の高いオープンイノベーションによって、これらが加速していくことに今後も注目していきたい。