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富士通×ハイラブル | 会議や研修のあり方を変革する、共創プロジェクトの裏側に迫る

富士通×ハイラブル | 会議や研修のあり方を変革する、共創プロジェクトの裏側に迫る

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富士通グループのアセット・リソースとスタートアップの技術・製品とを組み合わせ、世の中に新たな価値を提供することを目的とした、「富士通アクセラレータプログラム」。現在は、第7期プログラムの募集がスタートしているが、2018年5月〜実施されている第6期プログラムでは、幾つかの共創プロジェクトで事業化に向けた実証実験が進められている。

今回、eiiconでは、その中の一つであるハイラブル株式会社と富士通グループ2社の共創プロジェクトにフォーカス。会議中に誰がどの程度話をしているかといった会議の定量的な情報を、音声データをもとに分析・可視化することができる「Hylable DAS (Discussion Assessment Service)」という議論評価プロダクトを持つハイラブルは、なぜ富士通アクセラレータプログラムに参画し、どのような支援を受けながら実証実験を続け、将来の事業化を見据えているのか?

富士通アクセラレータプログラムの事務局メンバーとして、共創プロジェクトのバックアップを手がける株式会社富士通総研の池田氏と、ハイラブル株式会社代表取締役の水本氏にお話を伺った。

【写真右】 ハイラブル株式会社 代表取締役 水本武志 氏

2013年、京都大学大学院情報学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。音の研究が専門。同年に株式会社ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンに入社。その後、2016年にハイラブル株式会社を設立し、代表取締役に就任。

 

【写真左】 株式会社富士通総研 コンサルティング本部 ビジネスデザイングループ 池田健介 氏

株式会社富士通総研にて、SAP導入の業務コンサルティングに従事。また、新規事業開発やオープンイノベーション推進のコンサルティング業務なども担当。さらに、富士通アクセラレータプログラムの事務局メンバーも兼務しており、手腕を発揮している。

大規模プロジェクトを通して、プログラムの参加を決める。

――まずはじめに、ハイラブル・水本さんと富士通グループさんがどのように出会われたのかをお聞かせください。

ハイラブル・水本氏 : 2017年頃に参画していた情報処理推進機構(IPA)の「先進的IoTプロジェクト支援事業」のメンター企業さんに、Hylable DASが企業の研修に活用できるというアドバイスをいただいたんです。そこで、協業できる研修会社がないかと探していたところ、富士通ラーニングメディアさんに声をかけてもらいました。それが富士通グループさんとの出会いですね。そこから話が進み、富士通アクセラレータプログラムの事務局メンバーである池田さんとお会いするようになりました。

富士通・池田氏 : 富士通ラーニングメディア(FLM)は、ICT系の教育・社会人教育が事業ドメインで、富士通グループの新人研修も担当していました。そこで、ハイラブルさんのHylable DASを活用して、 “効率的な会議の進め方”という新人向け研修コンテンツで実証実験をしてみようという話になったのです。そして、2018年春の新人研修において、1000人以上のグループディスカッションを測定することになりました。

ハイラブル・水本氏 : 1000人規模で、Hylable DASを導入するのは初めてのことでしたね。

▲Hylable DAS……議論を録音し、サーバ上で自動分析して、ブラウザで結果を閲覧し、振り返ることができるプロダクト。アクティブ・ラーニングなどにも活用されている。

――新人研修において、どのようにHylable DASを使用したのですか。

ハイラブル・水本氏 : Hylable DASを使って研修を行うことで、受講者たちの議論が自動的に可視化されるので、自分たち自身の行動についてデータをもとに振り返ることができます。その結果、たとえば発言していなかった人は頑張って発言するようになりました。1000人分のデータがあると統計もとれますので、研修によって受講生の行動がどう改善したかが明確に見えてきましたね。

富士通・池田氏 : 最初の会議の後に、次の会議ではどのように進行させれば良いのかレクチャーする座学を挟みます。なので、Hylable DASによって、その座学が本当に役立ったのか、また研修を受けた新人の成長も客観的なデータをもとに見ることができました。

――1000人というのはかなり大規模プロジェクトですね。この研修プロジェクトはどのように作り上げていったのですか。

ハイラブル・水本氏 : システムやクラウドの設定など技術的な面は当社が担当し、研修の教育プログラムや教材の開発、運用まわりは富士通さん側に担当していただきました。池田さんと会議で収集した音声データを分析するため、半日くらい会社にこもっていたこともありましたね(笑)。

富士通・池田氏 : 研修内容を理解している人がいないと、音声データから分析しきれない部分がありますので、そういった部分は私もできる限りサポートしました。

――お話を伺っていると、スムーズにプロジェクトは進んでいったように感じます。

ハイラブル・水本氏 : 実はそんなこともなくて(笑)。このプロジェクトの予算は最初から決まっていたんですけど、直前になって大幅に削られかけたんです…。プロジェクトを続行することが危ぶまれましたが、それでも FLM のご担当の方や、FAP事務局の方をはじめとする様々な方に助けていただいて、なんとか実現できたんです。

富士通・池田氏 : このプロジェクトが新人研修に関わって、1000人規模のプロジェクトであることを、もっと外に発信しておけば流れも変わっていたかもしれませんね。そうした社内営業もオープンイノベーションには必要だと実感しました。

――富士通ラーニングメディアさんとの共創プロジェクトを通して関係を深めつつ、第6期の富士通アクセラレータプログラムにエントリーしたんですね。

ハイラブル・水本氏 : 池田さんから「富士通アクセラレータプログラムあるよ」と紹介されたんです。こうしたアクセラレータプログラムへの応募はこれまでほとんどなかったのですが、ぜひ挑戦してみたいと思いました。

 

事業化の本気度は、行動にあらわれる。

――大企業が行うアクセラレータプログラムに参加した感想はいかがですか。

ハイラブル・水本氏 : 事務局の池田さんがすごく頑張ってくれました(笑)。前職が大企業で社内調整の大変さは一応知っていたので、正直に言えば、大企業のスピード感にはあまり期待をしてなかったのですが…、池田さんが介在することで「まずは始めてみましょう」とスピード感を持ってスタートを切ることができたんです。

富士通・池田氏 : プログラムの最初に行う個別面談には事業部側の責任者が出席しますが、流れができた2回目、3回目は一般社員に引き継いでしまう。――共創プロジェクトがなかなか進まない理由として、こうした事例がよく見られます。

――そうですね。

富士通・池田氏 : 第6期のプログラムを通して、ハイラブルさんとIT・システムソリューションを提供する富士通アドバンストエンジニアリング(FAE)との共創を考えていました。協業の具体的なイメージをFAEの担当者と議論する傍らで、実際にFAEサイドの決裁権を持つキーマンと連携しながら、より双方の本気度の高いが協業検討できるように進めました。こういった連携がスムーズにいくよう、事務局もサポートしています。

――FAEさんとの協業に関わる意思決定は、どれくらいの時間がかかりましたか。

ハイラブル・水本氏 : 2〜3カ月くらいですかね。実は、こんなにスムーズに進むとは思っていませんでした(笑)。

富士通・池田氏 : FAEの担当者と会話する前に、私たち事務局とハイラブルさんとの間で、ストーリーをちゃんと作っておいたのもスムーズに進んだ理由の一つですね。「このストーリーをぶつければなんとかなる」、というぐらいまでもっていきました。

――なるほど。池田さん自身が富士通グループの様々なニーズを理解されているので、そこから見えてきたものをストーリーとして作った上でFAEさんに提案したんですね。オープンな話し合いにしても、アイデアがたくさん出てくるだけで収拾がつかない場合がアクセラレータプログラムでは多いと思います。しかし、仮定したストーリーがあるから、そこからの話が早いというわけですね。それでは、FAEと協業が決定してから、具体的にどのように共創プロジェクトを進めていますか?

ハイラブル・水本氏 : FAEさんには、独自の画像処理技術がありますので、当社の音響信号処理技術と組み合わせて、会議においてどんなディスカッションが行われているかを分析しようとしています。

富士通・池田氏 : つまり、FAEの新しいサービスづくりといった方向性の共創プロジェクトですね。例えば、今みなさんと一緒に座って話をしていますが、座っている=意見交換をしている会議であると、画像からAIが分析をします。それを働き方改革の文脈で、コンサルタントと組んで一つのサービスを立ち上げようと検討しています。一方で、画像のみですとファクトとして弱い部分がある。そこで、ハイラブルさんのHylable DASを組み合わせれば、精緻なファクトができる。そのような仮説のもとに、4回ほど実証実験を行っています。

ハイラブル・水本氏 : 画像だけだと参加者全員が話してるように見えても、実はファシリテーターがずっと話している場合もある。それだと、その会議は失敗ですよね。音声があれば双方が会話しているか、そうでないかを判断できるようになります。

富士通・池田氏 : 音声をもとにすると、3方向から話が出ているなども判断できるので、それだと議論が進んでいることがデータで分かります。

――実証実験を複数回行ってみて、事業化に進めそうな前向きな結果は出ていますか。

ハイラブル・水本氏 : 画像と音声の相性が良く、補完関係になっています。Hylable DASの現状のシステムでは、座って会議を行っている音声は分析できますが、立って話されると途端に分析できなくなる。その場合は、FAEさんの画像処理技術で分析ができます。

富士通・池田氏 : でも、実証実験の1回目はなかなか上手くいかなかった(笑)。仮説ベースで進んでいて、欲しいデータが得られなかったんです。また、実証実験は3カ月かかりましたが、1カ月くらいに短縮できたのではと個人的には思っています。失敗も結構あったので、実証実験の企画・設計をもっと緻密にしておけばと感じています。ただし、この3カ月で4回の実証実験を重ねて、勘所が分かってきた。取りに行きたいデータも集まってきて、短期間で実証実験を回せたのは非常に良かったですよね。

ハイラブル・水本氏 : 私たちスタートアップとしては、実はこの時間は無駄ではなかったと思っているんですよ。とりあえずHylable DASを実証実験で使ってくださいと。それからでないと、議論も空中戦で何も進展しないですからね。

――最初の実証実験では欲しいデータが取れなかったというお話でしたが、その辺りはどのように修正を加えていきましたか?

ハイラブル・水本氏 : 立って話すような会議ですと、現状では分析が難しい。なので、座って話すのに違和感がないシチュエーションがあった場合には、そこを狙ってデータを取りにいきましたね。

富士通・池田氏 : シンプルですけど、毎回FAEも交えて話すようにしました。データを見ながら「これはいける」とか2時間のロングミーティングを行うこともありました。まずは、face to faceで話せる時間を持たせることも、私の役割ですから。

あとは事務局として、この実証実験を本気で事業化するためにコミットできるのか、意思があるかですよね。サポートだけでなく、事業化すればこれだけ売上が立つなど、事業戦略まで考えてリーディングしていく。そうやって一緒に考えられているのも、上手くいっている理由だと思っています。

ハイラブル・水本氏 : ホント、池田さんのように当社の事業をこれだけ語れる人って、とても貴重ですから。

富士通・池田氏 : そろそろハイラブルさんの経営会議に出れるかもしれません(笑)。

実証実験を重ね、ビジネスがスケールしていく。

――FAEさんとの実証実験を行い、これから事業化を実現させようという流れはできていますか。

富士通・池田氏 : 2年後までには黒字化ですね!!(笑)

ハイラブル・水本氏 : ……2年後かはわかりませんけども(笑)。まだ、期限を断定することはできませんが、Hylable DASが会議室という場所に入っていければ、日本だけでなく世界中どこでも使えるサービスに成長できると思っています。

さらに、富士通グループという大企業がバックボーンにあるので、営業をするにしても僕一人ではなく、営業部隊があるのでどんどん広がっていきますよね。予算のスケール感も違う。うちだと500万円でも大変な金額ですが、ポンと投資できるのは大企業ならではですよね。

――最後に、今後に向けて意気込みをお願いします。

富士通・池田氏 : ハイラブルさんとの信頼関係は、富士通ラーニングメディアとFAEの2つの共創プロジェクトを通して強固になったと思っています。水本さんが富士通に気を使わなくていい環境もできてきました。

富士通アクセラレータプログラムは協業検討の期間を区切っているプログラムですが、その期間が終了しても事業化に向けた検討を継続していきたいですね。今後は事務局の私がいなくても事業化までどんどん進んでいけるようになっていければと思っています。――とは言うものの、これからも水本さんをサポートしていきたいですね。

ハイラブル・水本氏 : 世界中のあらゆる会話の場で使うことができる広がりのあるサービスだと思っているので、事業化に向けて進んでいきたいですね。夢は大きく持って、これからも取り組んでいきます。

取材後記

オープンイノベーションにおいて、スピードは命。まず、実証実験を回しながら、事業化への道を探ることが成功の道となる。しかし、日本のオープイノベーションにおいては、PoCのフェーズから一歩を踏み出せず、そのまま消えてしまうプロジェクトが少なくない。そこからブレイクスルーするために、大企業とスタートアップの当事者同士だけでなく、池田氏のようなプログラムの事務局やコーディネーターの力が実は大きなカギを握っている。富士通アクセラレータプログラムでは、来年の第7期も開催予定。スタートアップとっては、事業化に本気で取り組めるまたとないチャンスになるはずだ。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)

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