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【特集インタビュー】東急に足りなかった”ピース”をベンチャーのテクノロジーで補完する。アクセラレートプログラムを企画し運営する方法とは。<後編>

【特集インタビュー】東急に足りなかった”ピース”をベンチャーのテクノロジーで補完する。アクセラレートプログラムを企画し運営する方法とは。<後編>

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東京急行電鉄は2015年から「東急アクセラレートプログラム」を開催している。アーリーステージのベンチャー企業を対象にし、同年は117社、2016年は95社からの応募があった。そして現在までに複数のベンチャー企業と業務・資本提携を実現している。 大企業の新規事業担当者で、これから「ピッチイベント」や「アクセラレートプログラム」開催を検討している方は少なくないはずだ。そこで、すでに2回開催され、認知度も高い「東急アクセラレートプログラム」を担当する加藤氏に、同プログラムの企画から実施、運営に至るまでをインタビュー。 前編では、大企業ならではの「悩み」について、そして今回の後編ではベンチャーと大企業をつなぐための具体的な方法について語ってもらった。 東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 都市政策担当 課長補佐 加藤 由将 Yoshimasa Kato 2004年入社。経理業務に携わった後、社内新規事業の立ち上げの際にチームにアサインされ、コンセプト作りから実施・運営まで一貫して携わり、イントレプレナーとしてスタートを切る。この間、MBAでイントレプレナーについて学び、理解を深めていく。その後、2015年に「東急アクセラレートプログラム」を始動させ、現在に至る。  

■「自前主義」を打ち破り求めたベンチャーへの理解。

――アクセラレーターを創設するにあたって、大変だったのはどんなことでしょうか。 加藤:東急の歴史を振り返ると、創業者である五島翁はオープンイノベーションで様々な事業を買収しながら現在のコングロマリットを形成してきました。その後、一部ではオープンでありながらも、主に自社で新規事業を立ち上げるクローズドイノベーションで成長してきた時期があります。 そのため、創業当初の社会のニーズに対して自社のリソースに縛られずに、柔軟に、かつ、迅速にサービスを提供していくという感覚が薄れていたかもしれません。 ――そこを切り崩していくのは、簡単ではなかったでしょう。 加藤:もちろんです。でも、人材も資産も限定的であり、他社と共創しないと時代のニーズに合ったサービス提供ができないことを繰り返し説明しました。 今の時代、自社やグループの枠組みだけでお客様を満足させることに限界があります。オープンイノベーションを採用することによって、自社に足りない”ピース”が埋まるんです。今は”ピース”が足らないのに自前でなんとかしようとして、完成しないパズルに挑戦しているような状態と言えます。 オープンイノベーションでババババッと”ピース”を足して出来上がったときのサービスの美しさ、UXを見てもらって、オーッとなってもらえれば、「足りない”ピース”を誰かに埋めてもらおう」という発想も出てくるのではないでしょうか。 ――なぜベンチャーと組むのか、という話は出ませんでしたか。 加藤:当然ありました。大手の方が経営も安定しているし、信頼性も高い、だが、値段も高い。これは事実なのですが、大手の持っているサービスや技術よりも、さらに新しいアイデアや技術が必要なのです。 どこにもないものを探すとなると、やはりベンチャー企業に行き着くんです。とはいえ、当社のようなレガシー企業とベンチャーでは、経営状況やスピード感、商習慣が違いすぎます。この点の理解は必要で、かなり議論を重ねました。 ベンチャーと一口に言っても、業種業態や成長フェーズによってだいぶ異なります。この領域のこのフェーズのベンチャー企業と付き合えば互いの相乗効果が得られると、細かな分析までして少しずつ理解を重ねてもらいました。 ――改めて、大企業の中で動くことの難しさを感じます。 加藤:私の場合、幸運だったのは中間層の理解とアクションがあったことです。当時の東浦という統括部長(現在は副事業部長)が、アクセラレートプログラムを理解してくれて、社長に提案させてくれたんです。 大手企業の中でオープンイノベーションを行うには、若手と決定権者をつなぐ理解のある中間層の役割は欠かせません。リスクを取って、新しいことに挑んでくれる中間管理職の存在は本当に重要なのです。私も東浦部長との出会いがなければ、若手が何かよく分からないことを言っているという認識だけで終わったかもしれません。  

■本当は、アクセラレートプログラムはなくなったほうがいい。

――今後、「東急アクセラレートプログラム」をどのように展開していきたいとお考えですか。 加藤:少し極端ですが、早くなくなればいいと思っています。各事業部でイノベーションが日常的に起こっていればこのプログラムはいらないはずですから。 ――確かにそうなれば理想ですね。 加藤:とは言っても、相当な理解と実行力が無いとなかなか簡単にいかないことは理解しています。だからこそ、今は補助輪的にアクセラレートプログラムが必要なんです。 ――現時点で、「この点は変えていきたい」などはありますか。 加藤:プログラムが1年に1回しかないことはジレンマになっています。これだとベンチャーとの接点が1年に1回しか取れません。ベンチャー企業は成長が早いので、プログラムも常時受け付け・常時検討が出来るようにイノベーションラボ化したいですね。その必要があると考えています。 ――アクセラレータープログラムを含め、オープンイノベーションを行うにあたり大切なことを教えてください。 加藤:一番大事なのは意識の部分です。大手とベンチャーの違いを理解しないと、フラストレーションがたまるだけです。双方まったく異なる言語を使っていると考えればいいのではないでしょうか。その間に入る存在として、技術的な理解のみならず、双方の文化を理解し、通訳を行うようなコミュニケーション技術が必要になると思います。 また、ベンチャーへの敬意も忘れてはいけません。中には、自分は大企業にいるんだ、という意識で、上から目線で話をするような人がいます。あり得ないことでしょう。自分たちでは開発出来ないテクノロジーやノウハウを提供してくれるのですから、フラットな関係が前提になるはずです。  

■取材を通して得られた、オープンイノベーションの2つのノウハウ

(1) 熱量の高い仲間を集う。 自社内にいる誰もがオープンイノベーションに理解があるとは限らない。むしろ、抵抗感を持たれるほうが多いと考えるのが妥当だろう。しかし、一定の割合で共感もされる。共感してくれた人を仲間すると仕事が進めやすい。加藤氏の場合、委員会方式を採用し、熱量の高い人材を巻き込んでいった。また、理解のある上司との出会いもあった。 (2) まずはベンチャーについての理解を得る。 おそらく、大企業内にいる多くの人にとってベンチャー企業とは何だかよくわからない存在だろう。これまで縁がなかったのだから、当然と言えば当然と言える。だからこそ、まずはベンチャー企業がどんなものかを知ってもらうことが重要だ。一口にベンチャーと言っても多種多様。理解が深まれば、協業することの価値を見いだせる可能性が高まる。 (構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:とみたえみ)


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