“動く基地局”で渋滞ゼロに向け、実証実験を実施 スズキ×PicoCELA、駐車場DXで来場数111%を実現
PicoCELA株式会社は、2026年4月5日に福岡県直方市で開催された「のおがたチューリップフェア」において、スズキの電動台車を活用した「動く基地局」による広域Wi-Fi網構築の実証実験を実施した。本取り組みでは、従来課題であったイベント時の大規模渋滞を解消するとともに、駐車件数の増加や収益向上といった成果を確認。通信インフラとモビリティを融合させた新たな駐車場DXの可能性を示した。
イベント渋滞と通信インフラの未整備という二重課題
同フェアでは例年、臨時駐車場の入口での支払い処理がボトルネックとなり、周辺道路に長時間の渋滞が発生していた。最大で30分程度の待機が生じるケースもあり、来場者の利便性だけでなく、地域住民の生活や環境負荷にも影響を及ぼしていた。
一方で、河川敷などの広大な屋外スペースでは、固定通信インフラの整備が難しく、リアルタイムな車両管理や効率的な誘導システムの導入が進まないという構造的な課題もあった。こうした「交通」と「通信」の両面における制約が、イベント運営の高度化を阻んでいた。
実証概要 4社1自治体が連携した「動くインフラ」
今回の実証では、スズキの多目的電動台車「MITRA」にPicoCELAの無線メッシュ基地局を搭載。さらに、KiQ Roboticsの電動昇降ポール技術を組み合わせることで、状況に応じて高さや位置を柔軟に変えられる“動く基地局”を構築した。
加えて、エッジAIカメラを用いた車両認識・管理システムを連携。これにより、通信環境が流動的に変化する屋外環境においても、安定したデータ取得とリアルタイムな車両管理を可能にした。直方市が実証フィールドを提供し、地域課題の抽出と検証を担うなど、産官連携による取り組みとして実施された。
成果①:渋滞ゼロと駐車件数111%を実現
今後は、実証結果を踏まえた段階的な展開により、最大8,000回線規模での一元管理と運用最も顕著な成果は、駐車場入口を起点とした渋滞の解消である。実証対象の駐車場では、待機列が発生せずスムーズな入場を実現。一方、同施策を導入していない駐車場では最大30分の渋滞が確認されており、その差は明確に表れた。
また、効率的な誘導によって駐車件数は前年比約111%に増加。混雑緩和に伴い芝生エリアの追加開放も可能となり、結果として自治体の歳入増加にも寄与した。単なる課題解決にとどまらず、経済的価値の創出まで実証した点は特筆に値する。
成果②:インターネット非接続で実現する高セキュリティ運用
本実証のもう一つの特徴は、外部インターネットを介さないローカルネットワークでの運用である。車両データはクラウドに送信せず、現場のエッジ側で処理を完結。これにより、サイバー攻撃や情報流出リスクを構造的に排除した。
個人情報保護が重視される自治体や公共イベントにおいて、安全性と利便性を両立できるモデルを提示した点は、今後の社会実装に向けた重要な示唆となる。
成果③:「動く基地局」による柔軟かつ安定した通信網
「MITRA」に搭載された基地局は、最大4mまで伸縮可能なポールを備え、電波状況に応じて最適な位置へ移動できる。これにより、数百メートル四方の広域エリアにおいても安定した通信を維持。不感地帯を解消し、高精細なカメラデータのリアルタイム伝送を実現した。
固定インフラに依存しない「動く通信基盤」は、屋外イベントのみならず、建設現場や災害現場など多様なシーンへの応用が期待される。
「動くインフラ」が拓くスマートシティの実装
PicoCELAは、今回の実証で得られた知見をもとに、イベント会場や災害対応現場など、迅速な通信環境構築が求められる領域への展開を加速する方針だ。すでに直方市とは防災DXにおける連携も進んでおり、今後は観光・交通分野と合わせた包括的な地域DXの推進が期待される。
無線メッシュ技術とモビリティの融合によって実現した「動く基地局」は、通信インフラの概念そのものを更新する可能性を秘める。渋滞解消という具体的な成果を起点に、その価値はスマートシティ全体へと拡張していくことになりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)